1カ月前、米大統領選の共和党候補者に正式指名されたトランプ氏が早くも逆風にさらされている。「舌禍」が止まらず、米メディアは党内から「撤退」を促す声も出始めたと伝えている。写真はトランプ氏に関する米国の報道。

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2016年8月13日、米大統領選で実業家のドナルド・トランプ氏が共和党の候補者に正式指名されてから1カ月。「舌禍」が止まらないトランプ氏が早くも逆風にさらされている。民主党候補のヒラリー・クリントン前国務長官に水をあけられる一方で、米メディアは党内から「撤退」を促す声も出始めたと報じている。

トランプ氏の最近の発言で大きな物議を醸したのは、7月の民主党大会で登壇した米軍将校の遺族に対する攻撃。04年、イラクで自爆攻撃に遭って戦死したイスラム教徒のカーン陸軍大尉の父親がトランプ氏のイスラム教徒への度重なる差別発言を非難したのに対し、「クリントン氏のスピーチライターが(演説を)書いたのか」と反発した。その上で、母親が登壇しても話をしなかったことについて、イスラム教徒の女性であることを理由に演説できなかったと示唆した。

米国では戦死者や遺族への侮辱はタブーだ。ベトナム戦争で捕虜経験がある共和党の重鎮・マケイン上院議員は「トランプ氏の発言は共和党の価値観を表すものではない」と強い口調で批判。トランプ氏から副大統領候補に指名されたインディアナ州のペンス知事は「トランプ氏もカーン大尉は米国の英雄だと思っている」などと火消しに追われた。

しかし、トランプ氏は謝罪や発言の撤回を拒否。逆にツイッター上で、「カーン夫妻は私に対して悪意に満ちた攻撃を行っている」と主張し、火に油を注ぐ状況を自らつくり出している。

さらに、トランプ氏は武器保有の権利を定める米国憲法修正第2条に言及して、「修正第2条支持者には(クリントン氏を)止める手段があるかもしれない」と語った。クリントン氏の「暗殺」を呼び掛けたとも受け取られかねず、米CNNなどが問題発言として速報した

こうした中、米メディアによると、米共和党の歴代政権を支えた外交・安全保障の元高官50人がトランプ氏について「対外政策の観点から大統領、米軍最高司令官にふさわしくなく、大統領選ではトランプ氏に投票しない」と宣言する共同声明を発表した。声明には国土安全保障省長官を務めたリッジ、チャートフ両氏や、ネグロポンテ元国家情報長官、ヘイデン元中央情報局(CIA)長官ら名を連ねており、「米国にとって死活的に重要な国益や複雑な外交的課題、不可欠な同盟などを全く理解していない」とも酷評している。

米統計専門家の分析によると、7月末の時点でトランプ氏が大統領就任する可能性が僅差ながらクリントン氏を上回ったが、「舌禍」なども手伝い、その後、トランプ氏の支持率は急落。8月7日の時点で大統領に選ばれる可能性はクリントン氏81.9パーセント、トランプ氏18.1パーセントの大差となったという

落ち目のトランプ氏に関して、米紙ニューヨーク・タイムズは共和党の上層部が党に壊滅的なダメージを与える危険があると判断し、自発的に大統領選から撤退を決断させるために動き始めたと報道。ABCニュースは撤退がより現実的な話となる場合、代わりの候補者の擁立や11月までの選挙活動を考えると9月初旬までの交代が求められる、とも伝えている。(編集/日向)