同棲には賛否両論ある。

興味深いのは、同棲の経験者、未経験者に関わらず、賛否の比率はほぼ変わらない所だ。

同棲という言葉に甘いイメージを抱いていた頃は過ぎ、同棲の酸いも甘いも知り尽くした東カレ読者に改めて問いたい。

はたして同棲はアリなのか、ナシなのか。なぜ、そこまで意見が分かれるのか。

これから、同棲中のカップルの現在と数年先の姿を紹介し、今あらためて考えたい。同棲の先には何があるのだろうか?

vol.2:同棲期間が長くなるほど、結婚へのハードルは上がっていく…?!




恋愛初期の舞い上がり状態で同棲に突入しない


「お互い、初めての同棲じゃないんです。」

そう語り出したのは、食品メーカーに勤務する33歳の麻里。東京に長く住んでいれば、数人との同棲経験を持つ者も少なくない。今回紹介する麻里と敬太も、過去に違う相手と同棲していたことがある二人だ。

麻里は1回、敬太は2回の同棲経験があった。過去の同棲は互いに知っているが、麻里は正直に申告し、敬太は1.5回と曖昧にしている。「2度目は半同棲だよ」と言ってごまかしているのだ。

二人は友人の結婚式で出会い、二次会の鍵開けゲームで急接近して付き合うようになった。敬太は麻里の1歳年下で、32歳。繊維専門商社に勤めるだけあり、洋服にはこだわりを持っている。麻里は食品メーカーに勤務し、食べるのが大好きという健康的な女性だ。

麻里は、33歳という年齢と同棲2回目という過去の体験から、敬太との同棲に慎重だった。「ずっとうちに泊まりなよ」と言う敬太に、麻里は過去の同棲の話しをして、結婚が決まるまでは同棲しないと宣言していた。

麻里の初めての同棲は、相手が麻里の部屋に転がり込む形で始まった。期間は約1年半。憧れていた同棲に25歳だった麻里は夢心地だったが、家賃は払わず家事もほとんど手伝わない自分勝手な彼に愛想を尽かして別れた。

彼が置いていった荷物はマンションのゴミ置き場に出して、「火曜日までに取りに来ないとそのまま回収されます」というメールを送って、全てが終わった。

彼と別れて、大事な20代の貴重な1年半を無駄にしたのだと心底後悔した。恋愛初期の盛り上がりに舞い上がって、まだ深く相手のことを知らない内になし崩し的に同棲に流れてしまう危険を、今後は回避しなければと思ったのだ。

そこで、敬太とは結婚が決まるまで同棲しないと決めて、1年半は互いの家を行き来する形で交際を続けた。そんな麻里の考えを敬太は「頑固だ」と言いながらも、「まっすぐな人」としてより好きになったそうだ。


敬太の‘1.5回’の同棲内容とは…?


共通の口座に新婚旅行費用を貯める


一方の敬太は、「好き合っているんだから、一緒に暮らしたいと思えば一緒に住めばいい。その先で結婚につながればベスト」と考えており、同棲へのハードルは低かった。

敬太は学生時代と社会人になってからの2度、同棲の経験がある。一人目は時間のある学生同士特有の、怠惰な同棲だった。一緒に大学へ行き、安い居酒屋へ通って、TSUTAYAで借りたDVDで映画を1日に3本観たりと、お金はないが時間はある、学生感溢れる同棲だった。

彼女も一人暮らしの部屋はあったがほとんど帰っていなかった。彼女の親が家賃を払い続けており、少しの申し訳なさはあったが、あまり深くは考えず、ただ本能に正直だった。

だが、就職してしばらくすると、彼女の物が少しずつ減っていることに気づき、不思議に思い始めた頃、別れを切り出された。彼女も就職し、OJTの担当だった先輩を好きになってしまったそうだ。同じ新社会人の頼りない敬太よりも、仕事ができる(と思えた)その先輩が、大人の男として輝いて見えたのだろう。

2回目の同棲は26歳の頃で、相手が敬太の部屋に転がり込んできたが、束縛が激しく喧嘩が絶えない相手で、すぐに別れた。

麻里と敬太は付き合って1年半になる頃、結婚の約束をして同棲を始めた。互いの両親にもその旨を伝えている。同棲期間は1年として、その後には結婚するのだ。すでに同棲を始めて半年になるため、残りは半年となり結婚式場の見学も進めている。結婚後は2年以内に妊娠または出産予定だと言う麻里は、何事も計画的に進める女性だ。

同棲場所は二人で話し合い、恵比寿に決めた。恵比寿駅から徒歩5分、1LDKで家賃16万。家賃、光熱費は敬太が払い、食費、日用品、雑費は麻里が払っている。外食は割り勘が多いが、たまに敬太が全て払う。二人は結婚後も財布は別にして、この分担をキープしたいと考えている。

互いの貯金額は知らないが、「それなりにきちんと貯めてるはず」という認識でいる。麻里の提案で結婚式費用とは別に、共通の口座には新婚旅行代として、毎月5万円ずつ入れている。金銭的なことは、どちらも不満を持っていない。

金銭面以外でも互いへの不満はないのかと聞くと、敬太は笑って「ないですよ」というが、麻里は「二つあります」と敬太をちらりと見て言うのだった。


敬太の人の良さが、麻里にとってはストレスだった…?


計画通りに行くことと、行かないこと


一つは、敬太が家事をほとんど手伝ってくれないこと。互いに仕事をしているのだから、もう少し食器を洗ったり、洗濯物を畳むなど、手伝って欲しいと何度か言っているそうだ。

麻里がお願いすると、敬太は「ごめん、ちゃんとやるよ」と言い、実際に手伝ってくれるが、いつも3日坊主で終わり、また麻里が少し怒るというのを繰り返している。「根気よく言えばいいのかな」という麻里は、困った顔をしながら優しく彼を見つめる。

それよりも麻里が許せないのは、敬太がいきなり友人を家に連れてきて、さらに二人の部屋に泊まらせることだ。友人が多く面倒見の良い彼の性格を、麻里は好きで尊敬もしている。だが、二人の部屋に彼の友人を泊まらせることは、やめて欲しいと何度も言っている。




敬太が友人と飲み、深夜家に連れてくることもあれば、「終電を逃したから泊まらせて欲しい」と恵比寿や渋谷で飲んでいた彼の友人から連絡が入り、突然泊まりに来られたことも何度かある。

部屋が余っているならまだしも、二人が住むのは一般的な1LDKだ。敬太と麻里は寝室で寝て、友人はリビングのソファで寝る。そんな所で寝られたら、寝ぼけてトイレに行くことも、キッチンで水を1杯飲むにもとにかく気を使うのだ。

「麻里は気を使いすぎだよ」と笑う敬太の無神経さが、麻里を余計に苛立たせるようだ。だが敬太は、困っている友人を放っておくことはできないと言って譲らないのだ。


そんな二人の3年後は…


「きっちり計画通り結婚したけど、子供は計画通りにいかなくて」と麻里は変わらない笑顔で言った。

二人は予定通り、残り半年の同棲期間を経て結婚した。結婚3年目、喧嘩をすることも減り夫婦仲は落ち着いている。敬太は風呂掃除や食器の片付けなど、ちょっとした家事は率先して手伝ってくれるようになった。

子供ができるまでは恵比寿に住もうと話し合い、今でも同じ部屋に住んでいるが、敬太が友人たちを急に泊めることはなくなった。

「僕が断っているわけではなく、アイツらがタクシーで帰るようになっただけですが」と敬太は笑う。

「同棲してた当時は、結婚へ向かって一直線!という感じでなんだか勢いがありました。その勢いに乗って子供もすぐにできると思ってたんですけど…。もう36歳なので治療を始めるなら早くしないといけないんですが、相性が悪いのかな。いっそのこと、子供が出来てから結婚すればよかったかも」と、本気とも冗談とも取れる笑顔で麻里は言った。



過去の失敗から教訓を生かし、最初に決めた計画通り結婚した二人。結婚後は円満な家庭を築いているようだ。結婚という共通目標を掲げて、期限付きで同棲をスタートさせた彼らには、同棲期間中の余計な不安や迷いはなかったのだろう。

結婚後には、予定通り行かないことは増えるかもしれないが、同棲していた頃のように、これからも共通の目標へ向かって共に歩んで欲しいと願っている。

【これまでの東京同棲白書】
vol.1:結婚前提で始めた同棲生活だが…。同棲は結婚への弊害だった?!
vol.2:同棲期間が長くなるほど、結婚へのハードルは上がっていく…?!