『世界一受けたい心理学×哲学の授業』(嶋田将也著、ワニブックス)の著者は、やや重たい過去の持ち主です。なにしろ中学生時代にいじめられたことが原因で、うつ病を発症してしまったというのですから。

しかし、それは可能性をも切り開いたようです。具体的にいえば、その経験をきっかけとして「心」の問題に関心を抱くようになり、高校では独学で心理学を学びはじめたというのです。

さらに大学では哲学に出会い、さまざまな見方や考え方を身につけ、最終的には心理学と哲学を掛け合わせた独自の思考法を開発したのだといいます。

そして、「昔の自分のように人間関係で悩む人の手助けがしたい」という思いから、『世界一受けたい心理学×哲学の授業』というブログを開設することに。

読者は約8ヵ月で2,000人を超え、人気ブロガーになったのです。本書は、そのブログを書籍化したもの。

そんな著者いわく、私たち人間は、外部の状況に関係なく自分の心をよい方向に持っていける「三種の神器」を持っているのだとか。それは「言葉」「表情」「態度」であり、魅力は次の2点に集約されるといいます。

(1)才能のあるなし・年齢・男女差を問わず、万人が持っていること

(2)いかなる場所でも使用可能であること

自分の心を操ることができる人は、間違いなくこの三種の神器を持っているそうです。

■1:心の三種の神器〜言葉〜

話をするとき、言葉を選ぶときに大切な事があると著者はいいます。それは、自分の心がよい方向に向かう言葉を、自分で決めるということ。

「大丈夫」「リラックス」「がんばらなくてもいい」など、今後の日常生活でよい気分になれる言葉があれば、それらをピックアップしてみるのもいいといいます。

逆に、「よい気分になる言葉」がひとつもあげられないとしたら、それは普段“言葉を選べていない”証拠なのだそうです。しかし現実的に、自分にとって有意義な言葉を選ぶことはとても重要。

たとえばイチロー選手はインタビューにおいて、言葉を選びながら話しています。それも、「自分の心の状態をいつもよい状態」にするために、どんな言葉を使えばいいか考えているから。

ところで「食べたもので体がつくられる」いわれますが、著者は「発した言葉で心がつくられる」とも考えているのだそうです。だからなんにせよ、「自分の発言によって心はどうなるのか」を考えてほしいのだといいます。

しかしそれは特別なことではなく、自分が発言する言葉を選ぶことは、「ダイエットをする人が肉を食べるか、野菜を食べるか」を選ぶのとなんら変わりはないのだそうです。

■2:心の三種の神器〜表情〜

感情がなんであろうと、その主導権を握っているのは表情。たとえば笑顔のまま怒ることはできないわけです。

車でいえば、「感情」は目的地で、「表情」はハンドル。

目的地があっても、ハンドルをそちらの方向に動かさない限り、いつまで経っても到着することはありません。当然の話です。

でも感情=目的地を「喜び」にしたいのであれば、表情=ハンドルを「笑顔」の方向に回す。そうすることで初めて、実際に心が喜ぶのだといいます。

しかし、ここで誤解されやすいのが、「だったら、嫌なことがあっても笑顔になればいいのか?」ということ。しかし、それは単なる「無理やりポジティブシンキング」でしかありません。

そうではなく、普段から「自分がいい気分になれる表情」を選ぶ習慣をつけるということ。嫌なことがあってから無理に笑顔をつくるのではなく、普段から笑顔を心がけておくことが大切だという考え方です。

■3:心の三種の神器〜態度〜

「態度」も「表情」と同じで、“感情のハンドル”の役割があるといえるそうです。だからこそ「態度」も無意識に出すのではなく、普段から意識して選ぶようにすることが大切だという考え方。

そうすることで、「態度」によってよい気分を引き出せるようになると著者はいいます。

そして、態度に関連してもうひとつ大事にすべきなのが「呼吸」だそうです。悪気分のとき、人は浅く速い呼吸になってしまうというのです。そして、その浅い呼吸のせいで、余計に悪い気分になってしまうというスパイラルに陥るのだとか。

しかし、普段から深呼吸をするように呼吸を整えておくことで、リラックスして自分のパフォーマンスをあげられるようになるということです。

先に触れたとおり、この三種の神器はいつでも、どこでも使える万能な存在。

1日、2日で使いこなせるようになるものではないかもしれませんが、結果を焦らず、毎日少しずつ練習すれば、やがて思いどおりの感情が呼び起こせるようになるといいます。

(文/作家、書評家・印南敦史)

 

【参考】

※嶋田将也(2016)『世界一受けたい心理学×哲学の授業』ワニブックス