『日本懐かし夏休み大全』(辰巳出版)

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 道端で小学生らしき子どもたちを見かけると、夏真っ盛りだなと思う。日差しは照りつけ、セミは飛び回り、はしゃぎ回る子どもたち。うらやましい。私たちにもあんな時代があった。今も鮮明に夏休みの記憶が残っている。大人になった今ではもう、あれほどの解放感と自由な気持ちを満喫できることはないだろう。空高く立ち昇る入道雲、冷たいスイカ、真っ黒に日焼けした友達。そんな懐かしい夏の思い出を振り返えることができる一冊がある。『日本懐かし夏休み大全』(辰巳出版)だ。

 本書は、昭和の夏休みを生きたかつての子どもたちが「なつい! なつかしい!」と思わずこぼす夏休みの品々を紹介している。昭和キッズの回想本というわけだ。ちなみに、私は平成生まれだ。「おいおい、平成生まれで紹介できるのか?」と読者に思われそうだが、平成生まれにとって、昭和は興味ある時代だ。本書を開くと、昭和な世界観が広がっていた。

■昭和キッズの夏休みの思い出 食べ物編

 銀紙で包まれた「ホームランバー」。メロンの容器に入った「フルーツメロン」。友達と食べるアイスは格別だった。このあたりは私でも知っている。アイスを買うお金がないときは、家にあったカルピスやヤクルトを凍らせて、シャリシャリしながら食べていた。日本の氷菓を代表する「赤城しぐれ」は、昭和キッズの心の琴線なのだとか。このアイスのヒットを皮切りに、様々な会社からプラカップ氷が発売されたという。この他にも、素朴で懐かしい味わいの「エルコーン」、シャクっとした食感の「パインアイス」、おうちアイスの伝説「シャービック」など、氷菓子だけでもキリがないほどの「懐かしい」であふれている。

 また、平成キッズとしてうらやましいのが、ビンに入ったジュースだ。今はペットボトルが主流なだけに、ビンに入った「コカ・コーラ」など絶対にウマいに決まっている。信じられないのが、本書によると、当時は空きビンをお店に返せば、1L ビンで30円、500mlビンで10円もらえたようだ。小遣い稼ぎができるではないか! うらやましい。

■昭和キッズの夏休みの思い出 昆虫採集編

 夏といえば昆虫採集。平成キッズの私も子どもの頃は、友達とカブトムシやクワガタムシを捕まえて闘わせていた。網を握りしめてセミを追いかけたこともある。ミンミンゼミを追いかけているとおしっこをかけられ、ついつい泣いてしまったのも懐かしい。かつては昭和の定番アイテムとして「昆虫採集セット」なるものがあったようだ 。写真を見ると、殺虫剤、防腐剤、それらを注入する注射器、ピンセット、昆虫針などがついている。これを使って昆虫標本を家に飾っていた昭和キッズも多いのではないだろうか。これまたうらやましい。

■昭和キッズの夏休みの思い出 プール開放日編

 これに関しては、世代を超えて共感できるはずだ。消毒槽の気持ち悪さは今でも覚えている。当時は先生に言われるがまま、ひどくにごった水に腰まで浸かっていたが、あれは果たしてきれいになっていたのだろうか。逆に汚れていた気がする。

 また、急にプールに入って体がびっくりしないようにシャワーを浴びていたが、どちらかというとシャワーの方が冷たくてびっくりした記憶がある。あれは良くない。プールでのはしゃぎようについては、今も昔もきっと変わらないだろう。プールの底に残っている固形塩素をつかんで投げて先生に怒られたり、ビート板でふざけて先生に怒られたり、飛び込み台から飛び込んで「腹打ち」をキメて痛がって死体となって浮かんで先生を驚かせて怒られたり。本当に楽しかった。プール終わりの洗眼器で目を洗うフリをして帰って、家で目が真っ赤になって騒ぎ立てたのも懐かしい。

 仕事をするようになって毎日を生き抜くことに必死になり、別の楽しいことにも興味を持ち始めて、ついつい昔を忘れがちになる。大人の悪いクセだ。しかしそれでも夏休みがくれた数えきれない思い出は今もしっかり残っている。「最近ちょっと疲れたな…」という方は、ぜひ本書を買って読んでほしい。人生には、思い出にふける時間も必要なはずだ。

文=いのうえゆきひろ