女性誌『Suits WOMAN』で注目を集めた「貧困女子」。これは普通の毎日を送っていたのに、気がつけば“貧困”と言われる状態になってしまった女性たちのエピソードです。

今回お話を伺ったのは、会社受付の天沼希恵さん(仮名・40歳)。すらりとした脚ときりっとした容姿で、宝塚歌劇団の男役のような雰囲気の女性です。しかし肌が吹き出物だらけでボロボロ。それを塗り潰すようにファンデーションを塗っており、赤紫色のブツブツが浮き上がっているように見え、かえって目立つように感じました。

ヘアスタイルは、女性の政治家を思わせるふんわりしたショートヘア。着ているデニム素材のミニワンピースは、イタリアブランドのもので、スカル、花、ハートなどの刺繍がされてある懐かしいデザインです。パイソン素材の緑色のミニボストンからは黄金色の長財布がのぞいています。“金運アップ系のデザインですね”と会話を切り出すと、「そうなんです。彼がプレゼントしてくれたんです」と語ります。

「金のお財布を持っても、有名な神社のお札を持っても、全然効果ないんですよね。生まれながらの不幸体質だと効果ないのかも。私、今までの40年間の人生で、幸せだった時代の記憶がほとんどないんですよ。母は通訳で、父は外国船の船長で、両親ともに仕事で忙しかったし、大きな家にお手伝いさんと残されて。母とは月に1回、父とは年に数回会うだけでした。でも両親は帰って来るたびに、ニューヨーク土産の高級宝石店の食器とか、フランスの有名馬具ブランドの鞍とかを買ってきましたね。私は子供のころから乗馬とバレエをやっていたんですけど、そういういいものを持っていると、やっぱりいじめられちゃうんですよね。年に1回クリスマスに団らんする以外は、ずっと孤独に1人で生きてきました」

育ちの良さをアピールするために、嘘で塗り固める

筆者は希恵さんと共通の友人がおり、希恵さんとその友人は下町エリアにある庶民的な私立女子高校(偏差値45程度)の同級生。友人の話では、希恵さんの実家は地元で愛される立ち食い蕎麦屋さん。しかし、バブル期にビルを建て替え、1階を店舗に、その上階をマンションにしてから、状況は一転。建物の建て替えのための借金の返済が立ち行かなくなり、不動産を手放し、希恵さんの両親は千葉県の松戸市で生活保護を受けながら生活をしていると聞いています。

「ママは努力の人で、ほぼ独学で英語をモノにして、日本でもトップクラスの商社に採用されたんです。今、68歳という年齢を考えるとすごいことですよね。そこで、さまざまな商談をまとめて、海外にも行なっていたようです。今でいうところのジェットセッターだったんです。そこでパパと出会い結婚して、私が生まれました。客船内でフランス領の海域で生まれたんです」

希恵さんが話しているのは、他人から見られたい自分で、本当の自分とは大きくかけ離れています。今までのキャリアについても、きっとホントのことが聞けないのかな……と思いながら、仕事について伺いました。

「母の影響で英語の専門学校に進学しました。3年制の学校だったのですが、授業がつまんないんですよ。文法とか基本的なことばっかりで、全然会話に進まない。高校2年生くらいからモデル事務所に所属していて、カタログやCMのチョイ役で出まくっていて、そのお金でけっこうなお金を稼いでいました。学校に行くことがバカバカしくなって、結局行かなくなってしまったんですよね。親は私のことを諦めていたみたいで、何も言いませんでした」

これは筆者も知っている希恵さんのプロフィールです。彼女は学歴やキャリアはありのままを話しますが、生まれ育ちや恋愛についてはコンプレックスがあり、別の自分になってしまうと感じました。

「仕事は35歳ごろまでモデルをしながら友達の会社を手伝ったりして、そこそこ食べていけたんです。私はどちらかというと無個性だから、CMのチョイ役とかにキャスティングされていました。主役、準主役、その他大勢のうちのひとりです。早朝から現場に入って、名前も覚えてもらえなくて、出番は1秒にもならなくても5~10万円もらえていましたからね。でも扱いが軽くて……小さい頃からチヤホヤされていたから、“この私がなんでこの程度?”と思って苦しくなったこともありました」

今はどのようにして暮らしているんですか?

「平日12時〜17時まで会社受付をして、夕方から家(中央区勝どきのマンション)に帰ってボーっとしています。飲みに誘われても行くお金がないから断っているうちに誘われなくなりました。あとはゴルフの打ちっぱなしに行くとか? でも運動するとお腹がすくから行きたくないんですけど……」

希恵さんの収入は月に12万円。勝どきのマンションの家賃は相場から判断すると安く見積もっても17万円はくだらない。ゴルフの打ちっぱなしに行くにはクルマが必要だし、お金もかかる。

「1か月前までは私、ボロいシェアハウスに住んでいて、ホントに無職だったんです。お金がなくて、同僚や友人などがコンビニのミニクロワッサンやスナックメロンパンを買うと、必ず1個もらうようにしてその場をしのいでいました。言えないこともいろいろしましたよ。生活保護を受ける一歩手前まで行ったことがありますが、私って運がいいというか、誰かが助けてくれるんですよね。今月から勝どきに住んでいるのは……いわゆる“パパ活”に成功したからです」

希恵さんのゴルフ歴は3年程度。あまり好きではないが、パパ活のために練習場に借金しても通い詰める。(写真はイメージ)

ピカチュウゲットならぬ、パパゲット! その意外な手段とは……?〜その2〜に続きます