日本時間8月14日からリオ五輪のレスリングが始まる。男子は前回のロンドン五輪の9階級から4階級へと出場を減らしたが、それでもメダルを狙える4人の精鋭が集まった。グレコローマン59kg級の太田忍、グレコローマン66kg級の井上智裕、フリースタイル57kg級の樋口黎、フリースタイル74kg級の高谷惣亮。まもなく始まる大舞台を前に4人が意気込みを語った。

―― オリンピックの予選制というのは、1992年のバルセロナ大会から導入されたわけですが、男子が出場4人というのは、史上最少となってしまいました。

高谷:僕はロンドン五輪に出場しました。そのときと比べて少ないのでさみしい気持ちはありますけど、4人だからどうだという気持ちはまったくないですね。個人個人がやるべきことはわかっていますので、それぞれがベストを尽くして戦っていくのが一番だと思います。

井上:少ないより多いほうがいいですけど、個人個人が金メダルに向けて頑張るだけです。

樋口:人数が少ないことで、逆に注目されると思うんです。

高谷:それはどういう意味?

樋口:4人しかいないので、注目が分散しない......僕たちにギュっと集まるというか。

高谷:なるほど。

太田:樋口は目立つのが好きだからね!

樋口:いい結果を出して見返しましょう!

太田:全員が金メダルを獲ったら1964年の東京五輪以来の快挙ですし、全員その実力はあると思うので......。

全員:お〜!!

太田:全員が力を出し切って"快挙"って言われるように頑張ります。

高谷:そやな! 快挙起こそうや! 若手が2人いるっていうのはいいことだし。

樋口:今も、僕たち代表4人のためにトレーニング組んでもらっているので、感謝しています。結果で恩返ししたいですね。

太田:コーチ陣もそうですけど、スパーリングの相手してくれる選手も、自分の練習ではなく僕たちに付き合ってくれる。個人競技だけど、日本レスリング全体の力をもらっている。

井上:それぞれの練習に最適の選手が来てくれて、本当にありがたいです。

高谷:4年前はまだ、自分でいろいろ考えていなくて、コーチのいうことを聞くだけだったんですけど、今は成長して自分がこうしたいと思ったことを、やりたいようにやらせてもらっています。それでパートナーを選ばせてもらって、呼んでいただける環境に感謝しています。

―― 高谷選手は五輪出場は2回目で、予選も経験済みでしたが、今回どういう気持ちで臨んだのでしょう。

高谷:冷静にケガと付き合いながら戦わなきゃいけないという状況で、4年前に負けた選手に勝って五輪をつかんだというのは大きな成長だと思います。

井上:4年前は社会人1年目?

高谷:そうですね、太田選手と同じでした。

太田:おお。

―― みなさんはアジア予選で出場を決めましたが、他国の予選も見ていて、オリンピックへの印象はどう変わりましたか?

太田:世界予選を見ていて、世界チャンピオンでも出られないんだと。五輪は実績があるから出られるわけでない、出るだけでも厳しいんだと思いました。金メダルを獲るにはまた厳しい戦いが待っていると思います。

高谷:太田選手は攻防の激しい相当レベルの高い試合しますよね。

太田:よく言われますね(笑)。

高谷:「わっ、点取られた。けど取り返した!」みたいな(笑)。技のかけ合いがすごく面白い。

樋口:常に4点ビハインドから始まりますよね(笑)。

太田:僕自身は安定した試合がしたいんですけどね(笑)。

樋口:得点能力がすごいです。

井上:4点取られても、そこから取り返す底力は本当にすごい。

―― そんな井上選手は、予選でロンドン五輪王者を破っています。

井上:今までで一番いい試合をしたとは思います。12月に日本王者になって、ずっと合宿して追い込まれて、そこでレベルが上がったのかなと。

高谷:井上選手がすごいなと思ったのが、ディフェンス力。グラウンドで全然返されないし、返されるんじゃないか、という心配さえしなくていいくらい。

井上:グレコの全日本合宿は、皮膚が擦り切れてズタボロになるまでやりましたからね!

太田:真っ赤になりましたよね。

井上:そう、2時間やったんですよ、グラウンドのディフェンスだけで2時間。レスリングを始めたばかりの人がなるような感じで、皮膚がボロボロになったんですよ。お風呂に入るとヒリヒリ(笑)。

―― 身体中擦り傷だらけだったんですね。

井上:どんなにきつい中でも前に出る練習していたので......そのおかげで勝てたんだと思います。

―― 高谷選手は3選手の試合をよく見ていたんですね。

高谷:そうなんですよ。太田選手は僕の前の試合だったので、マットのそばで見ていたんです。樋口選手は、タックルとった後のアンクルがすごく上手なんですよ。ポンポンって取っちゃうんですよね。

太田:まるで小学生を相手にしているみたいに決まりましたよね。

高谷:でも、決勝の相手のときは、なんかこう慎重だったね?

井上:(相手を前から)意識していたの?

樋口:はい。アジア予選の20日前に韓国遠征に行ったんですけど、そこにいたんです。彼はアジア大会でハッサン・ラヒミ(イラン/2015年世界選手権2位)に勝ってたんですよ。

3人 へぇ〜!

樋口:そうなんですよ。

―― 樋口選手はその決勝のとき、勝ってカメラにアピールしてくれたんですけど、そのアピールがすごかったですよね。

3人 すごかったって、何ですか(笑)!

井上:どこにカメラがあるか把握してるの!?

太田:ぼくはそんな余裕なかった(笑)。

樋口:カメラの位置、試合前にチェックしてました(笑)。勝ったらこうしようとか考えてましたね!

3人 チャラい!

樋口:でも、ガッツポーズは決めといたほうがいいんですよ!

太田:そういえば水泳の北島(康介)選手は、タッチして、タイム見て、ガッツポーズするところまで考えているらしいですよ。タッチするまでしかイメージしていない場合、その前に力抜けちゃうらしいんですよ。

樋口:そうなんです!

―― 目立ちたがりやの高谷選手はよく試合のあとにマットで踊ったりしますが、理解できるんじゃないですか。

太田:先輩は試合終わって、そこから始まる(笑)。

井上:"2セット目"が......(笑)。

高谷:そうですね、試合の流れじゃなくてエンターテインメントだから、っておい(笑)!レスリングの注目度が上がるためにいろいろ考えているんです!

―― 井上選手もアジア予選はなかなか素晴らしいガッツポーズでしたね。

井上:無意識でした! 普段はガッツポーズしないんですけど、今回はしちゃいましたね。そのくらい嬉しかったですね。

―― では、みなさんから見て高谷選手のすごいところは?

高谷:僕のいいところなんて一個しかないでしょう!

3人:タックル!

樋口:すごいっすよね、あれ。潰されても、足さえ触れていればギュイーンって。

太田:フォークリフトみたいですよね。指一本でも触れていれば、ムンムンって上がってくる!

井上:昔、高谷選手と試合してるんですよ。肩の強さが半端なかったです。

高谷:高校のときは負けているんですけど。

井上:大学になってインカレで、テクニカルフォール(大差)で負けてしまいました。

樋口:高谷さん、あばら(肋骨)が普通より一本多いって噂は本当ですか?

高谷:そうなんだよ。

3人:へぇー!

太田:反則じゃないですか(笑)!

樋口:筋肉は骨の回りにつくので、人より筋肉が多くなると思います。

―― 引きつける力が強くなるんですね。

樋口:珍しいけど、時々いるらしいです。

高谷:えっ、他にもいるの? 特別な存在かと思っていたのに......。

3人:いやいや特別ですよ(笑)!

―― みなさんの金メダルへのモチベーションは?

高谷:ぼくは注目されたいという気持ちがあるからですね。拓大の須藤元気監督も、そういうモチベーションはあったほうが実現しやすいとおっしゃっていますし......。

樋口:ぼくは、いつもこれが最後だという気持ちでやっています。だからこそ負けたくないので、金メダルを獲りに行きます!

太田:そうですね、負けたくないという気持ちです。カッコいい勝ち方したいということはないんですけど、負けたら、自分がやってきたことと、これまでの自分を裏切ることになってしまうじゃないですか。

高谷:太田選手は、僕の弟(大地=拓大)みたいな性格なんで、よくわかります。

太田:特に外国人相手だと、まさに格闘技という感じで、少しの隙も見逃さないです。

井上:僕も負けたくないし、出るからには一番になりたいですよね。

太田:4人全員金メダルを獲るので、楽しみにしていてください!

3人:全員で獲ります!

保高幸子●文 text by Hotaka Sachiko