10年以上「デジタル濡れ衣」被害の家族、IP位置情報企業を提訴へ。今も捜査関係者が訪れる被害続く

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位置情報サービス会社MaxMindが適当に設定したIPアドレスの"デフォルト位置"に自宅と農場を持っていたがために、約10年にわたって犯罪者が残したIPアドレスから位置を割り出した(つもりの)各種捜査関係者がひっきりなしに訪れ「デジタル濡れ衣」を着せられ続けたTaylor Vogelmanさんら家族が、MaxMind社を相手取り損害賠償請求をすることになりました。

IPアドレスは本来、位置情報とはまったく関係のないものですが、位置情報サービスを提供する会社はIPにWi-FiやGPSなど他の情報と組み合わせることで、IPアドレスからおおよその位置を推測できるようにしており、Vogelmanさんの自宅農場はたまたま、IPから何の位置情報も引けなかった時のデフォルト位置に指定されていました。これはつまり、一度も位置情報と組み合わされたことのない(米国内に配布されたと推測される)IPアドレスから位置を引くと、必ずVogelmanさんの自宅農場が返されるということです。しかもそのようなIPアドレスは約6億5000万件もあり、そのなかに犯罪などで使われたIPアドレスがあれば、それを手がかりとした捜査関係者が農場経営者のもとを訪れるというからくりができ上がっていました。

MaxMind社がこの位置をデフォルトとした理由は特になく、いわば地理的に"米国のほぼ中心"ということだけ。しかも最初は正確に中心である地点を指定していたものの、2002年にこの座標の数字の小数点以下を丸めてしまった結果、一つの家族が多大な迷惑を被ったことになります。

この春に米国のメディアFusionが問題を突き止めて公表したことを受けて、MaxMind社はこのサービスには建物の位置まで特定する精度はないとするコメントを発表、問題を把握していなかったとしたうえで、位置情報を持たないIPアドレスのデフォルト位置が(やはりカンザス州の)とある湖の中心となるよう設定を変更しました。

ただ、それだけの処置で10年以上にわたって税金逃れや自動車泥棒、詐欺師、誘拐犯にされてきた怒りは収まるはずもなく、Vogelmanさんらは代理人とともに最高75万ドルの損害賠償を求めてMaxMind社を提訴することにしました。さらに、たとえデフォルト位置の設定を変えたとしても全体にその情報が行き渡るには1年以上の年月がかかるため、現在も捜査関係者が家族のもとにやって来る事態は繰り返され、問題は終わっていないと代理人は語っています。

MaxMind社は警察などの機関にサービスとしてIPとひも付けた位置情報を提供しているわけで、それがどういったことに使われるかを誰よりも知っていたはずです。ならば、位置を特定できないIPのデフォルト位置を決める際も、そのアドレスを頼りに場所探しをする人、その場所にいる人に何が起こるかは推測できたはず。配慮が足りなかったというだけでは、十数年間も代償を支払わされた人の損失は大きいと言わざるを得ません。Vogelmanさんは80代の高齢とのこと。我々としては一刻も早く穏やかな日々を取り戻せるよう祈るばかりです。