安定したポストプレーと献身的な守備を見せた興梠だが、大会を通じて1得点は決して満足のいく数字ではないだろう。A代表でのさらなる台頭を期待したい。写真:JMPA/小倉直樹

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 興梠慎三、塩谷司、藤春廣輝とオーバーエイジ3枠をフル活用して挑んだリオ五輪は、1勝1分1敗でグループリーグ敗退に終わった。同じく3人(吉田麻也、徳永悠平。林彰洋はバックアップメンバー)を組み込み、44年ぶりのベスト4に輝いたロンドン大会に比べるとやはり物足りない結果と言わざるを得ない。
 
 興梠と塩谷は3試合連続でスタメンに名を連ねたが、コロンビア戦で痛恨のオウンゴールを喫した藤春は、スウェーデン戦で出場機会がないまま、サルバドールの地を後にした。最年長の興梠にしてもポストワークで起点を作った一方、ゴールはPKによる1得点のみで、シュートも計3本止まり。塩谷はナイジェリア戦とコロンビア戦で計4失点に絡み、スタートダッシュ失敗の一因となってしまった。
 
 
 当初名前が挙がっていた、本田圭佑や香川真司、清武弘嗣、長友佑都ら欧州組、あるいは3年連続Jリーグ得点王の大久保嘉人のようなビッグネーム招集は叶わなかった。彼らの招集が実現していれば違う結果になっていたかも……という想いが湧くのはごく自然な流れだが、今大会は代表チームに選手の拘束権がなく、クラブの協力を得られなかったのだからその議論はナンセンスだ。ルールに則ったうえで、手倉森監督は“敢えて”A代表でレギュラーを掴んでいない3人を招集したのである。
 
 スウェーデン戦後の囲み取材で、指揮官はオーバーエイジについて次のように言及している。
 
「攻撃面の形は見えたけど、守備面を2週間で融合させるのは難しい? それも経験ですよ。世界を経験したヤツをオーバーエイジで連れていけという意見もあったなかで、俺はA代表のレギュラーじゃない彼らにレギュラークラスまで成長してもらいたくて、呼んだからね。ミスに絡んでしまった部分もありますけど、痛い思いをして選手は成長できるんだなというところを信じています。彼らも良い経験をしたんじゃないかなと」
 では、選手側から見て、オーバーエイジとして参加したリオ五輪は、どんな大会となったのか。3人の試合後のコメントに耳を傾けてみよう。
 
「自分の力が全然足りないと教えられましたが、世界の舞台を経験できたことは絶対に自分の糧になる。ここでの経験をサッカー人生で生かさなければ、それこそ呼んでもらった意味がなくなってしまう。今後もっともっと上のレベルに行って、いつかテグさんに会った時に『シオを呼んで良かった』と言ってもらえるような選手になりたい」(塩谷)
 
「こういう国際大会は初めての経験で、本当に自分のためになりました。Jリーグとの差を感じたり、世界は上には上がいるなと。技術、パス、ボールコントロール、身体能力はずば抜けてJとは違うと体感できたことは良かったと思います」(藤春)
 
「オーバーエイジ=即戦力ということで、どこまで自分がやれるのか、もちろん不安でした。でも、背負いすぎるのもあまり良くないと思ったし、気楽なスタンスで臨めたかなと。チームのために一生懸命走り切ろうと自分の中で決めていたので、その部分で少しはチームに貢献できた自負はありますけど、結果としてもっと貢献したかったですね」(興梠)
 
 興梠は「今大会で出し切ったので、次のことは何も考えてない」とクールに話したが、DFとして悔しさにまみれた塩谷と藤春は、リベンジの想いを込めて今後のさらなる飛躍を誓っている。五輪で何を学び、何を自身の成長や日本のサッカーに還元するか。
 
「A代表のレギュラークラスになってほしい」
 手倉森監督のその想いが近い将来、現実のものとなっていることを切に願う。
 
取材・文:小田智史(サッカーダイジェスト特派)