スウェーデン戦で1アシストをマークした大島。あのプレーは彼の真骨頂だった。写真:JMPA/小倉直樹

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 グループリーグ3戦を通じて、ピッチ上で際立った存在感を見せ続けたのは大島僚太だった。技術の正確性とスピードから成る、高次元のパフォーマンスは別格。味方と敵がひしめく密集地帯でも巧みなルーレットで相手をかわしてボールに展開するなど、時に余裕すら漂うプレーぶりは「圧巻」という言葉がふさわしい出来だった。
 
 そんな彼のパフォーマンスに対して、風間八宏監督は「あれが普通のこと」と話す。
 
「周りには100キロのスピードに見えているかもしれないけど、僚太には60キロのスピードにしか見えていない。止める、蹴るの技術もそうだし、目の速さもそう。そういう意味で、僚太は日本人でもやれることを示したんじゃないかな」
 
 風間監督のよく言う「スピード」というのは、「目の速さ」や「判断の速さ」などの要素を組み合わせたものでもある。例えば、他の選手が3秒の間で3つのプレー選択肢が見えていたとしたら、大島はそれを1秒で見つけることができる。判断力と技術の正確性のある大島は、そこでプレーのスピードを0.5秒速めたとしても、ミスを起こすことはない。だから、風間監督からすれば、あれは大島にとっては平常運転だったというわけだ。
 
 なお「帰ってきたら、まずは看板の跳び越え方を教えないとな(笑)」と律儀にオチをつけていたのはさすがである。
 
 一方、川崎フロンターレの同僚たちはどう見ていたのだろうか。
 
 例えば、主将の中村憲剛。彼も「自分からすると、それほど驚きはなかったかな」と話している。チームでやっていることを、大島がそのまま表現できていたという印象があったからだろう。「僚太は普通にやれていました。今一緒にプレーしている者とすれば、それが嬉しかったかな」と言う。
 
「普通にやれている」という大島の姿から中村があらためて感じたのは、トラップの重要性だという。鋭く寄せに来た瞬間に、相手の逆をつくトラップ一つで相手を外し、面白いように局面を打開していたからである。
 
「僚太だけちゃんとトラップしていましたよね。たったそれだけのことだけど、それで劇的に状況が変わっていた。もちろんJリーグでは、僚太はあんなに前を向かせてくれないし、あれだけフリーになることもないけど。ナイジェリア戦だけ、途中でミケルが僚太を気にしだしたぐらい。やっぱりミケルはわかっているよね(笑)。ノープレッシャーならば、僚太一人でもあれだけ決定機を作れるということ」
 
 そのプレーぶりを通じて、フロンターレで磨いている技術が五輪という舞台でも通じていたことが、チームの自信にもつながると話している。
 
「僚太があのレベルでも臆せずにやれるのを見て、フロンターレでやっていることを突き詰めていけば、世界に通じると思った選手もいるんじゃないかな。そう思えば、ここでの練習もより意識を高くやれますよね」
 ストライカーの大久保嘉人はどうだろうか。彼も「僚太は良かったと思うよ」と言い、なかでもそのプレースピードを評価していた。
 
「前で勢いを持ってやれていたと思う。他の選手がポジション、ポジションで止まっているから、僚太のスピードが、すごく速く見えたじゃない? ただボランチの僚太が目立つだけじゃダメ。前の選手が、もっと勢いを持ってやらないと。周りがもっと動いて、連動性があればもっとよかった。あのスピードにスウェーデンはついていけなかったし。最後に勝ったことは良かったし、良い経験じゃないすか」
 
 大久保が指摘したように、スウェーデンの守備陣は大島の速さに後手を踏んでいた。決勝点の場面も、大島自身の真骨頂である、逆を突いた一瞬の突破から生まれた形だ。