スウェーデン戦で決勝点を挙げた矢島。しかし、その手応えよりも、コロンビア戦で決定機をモノにできなかったことを悔いていた。写真:JMPA/小倉直樹

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 リオ五輪グループリーグ第3戦で、手倉森ジャパンは今大会初勝利を挙げた。勝点1で並んでいたスウェーデンを無失点に抑え、矢島の決勝点で1-0勝利。しかし、他会場でナイジェリアを下したコロンビアが勝点を5に伸ばしたため、日本はあと一歩及ばずにグループリーグ敗退が決まった。

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 チームに初の勝点3をもたらした矢島は、「3戦目で1点取れたことは良かったですが」と自身のゴールを振り返ると同時に、「やるのが遅かったですし、初戦や2戦目に結果を残せなかったという意味では、まだまだ全然ダメです」と漏らした。
 
「(スウェーデン戦で)点を取った時は本当に嬉しかったけど、終わった後は……。初戦も2戦目も悔いが残る試合だったので悔しかった。こういう大会は初戦が大事だって分かっていたけど、また痛感させられたし、2戦目は入ったと思ったシュートがGKに止められたり、自分たちが主導権を握っているなかでも相手はワンチャンスを決めてきた」
 
 矢島の心に残ったのは後悔の念だ。チームとして「最も重要」(手倉森監督)と認識していた初戦のナイジェリア戦で、まさかの5失点。続く第2戦のコロンビア戦でも、2点を先行される苦しい展開を強いられた。アジアチャンピオンになった原動力である守備が崩壊し、自分たちのミス絡みで戦況を難しくしていくチームを立て直せないもどかしさが、矢島の悔しさを加速させていた。
 
「2試合目もチャンスに顔を出せていたので、そこで決められる選手になれるかどうか。そういうのが上に行っている選手だと思うので、勝負強さの必要性を感じました」
 
 背番号9の頭をよぎったのは、コロンビア戦のあるシーンだ。右サイドを突破した室屋のクロスを興梠が落とし、エリア内の矢島が左足でシュートを放つ。先制点かと思われた一撃はしかし、コロンビアGKに阻まれて日本は決定的なチャンスを逸した。あのシュートが決まっていれば――。矢島がそう悔やむのも無理はない。
 
 ただ一方で、チャンスを決めきれなかった自身のプレーを反省すると同時に、チームとしても“勝負強さ”が欠けていたことを痛感していた。
「トゥーロンでも経験しましたけど、そういうの(相手がワンチャンスで決めてくるの)を何回も経験しているので、そこが日本が世界大会で上手くやっていけないところの差なのかなと思います。意図的に守備でハメ込みに行っても、相手のフィジカルの強さではがされたり、キープされたりする。そこで押し込まれる展開が続くっていうのも感じたし、ナイジェリアは特にそういう選手がたくさんいたので、そこで後手になったと思います」
 
 相手が個の能力を押し出して来ることを分かりながら、それに対する守備のディテールを詰めきれていなかった。もちろん、個々が局面で負けないことが大事なのは理解しているが、そもそも個の能力の不足分を組織で補ってきたのが手倉森ジャパンの本質だ。結局、日本の組織は世界大会では通用しなかった。手倉森監督のもとで作り上げてきたチームは、対世界という面で甘さがあった、と矢島は認識しているのかもしれない。
 
「球際の強さと言ったらありきたりですが、どうやって身体を入れるとか、そういうところを日本人は考えてやらないとフィジカルの差は埋まらないと思う。一人ひとりがフィジカルを上げていくのは当たり前のことだし、身体が小さいままでは勝てないので。そこからどうやって相手のゴールを奪うのかを考えるのが日本の良さだと思うから、そういうのをしっかり守備のところでもやったほうがいいのかと思いました」
 
 世界で勝つためのヒントを、矢島は掴んだのかもしれない。しかし、大会は終わった。岡山に所属する彼が戻るのは、J2という日常だ。ワンチャンスを決めてくるストライカーも、強烈なフィジカルや長いリーチでボールを絡め取ってくるディフェンダーもいない。その世界で、リオ五輪で学んだ”肌感覚”を維持していくのは簡単ではないだろう。
 
「オリンピックという大会に出たこと、この経験を無駄にしないように個人的に這い上がって行きたいなと、そういう気持ちが強いです。この経験、感じたものを示していくのはこれからの自分の力次第、意識の問題だと思うので、這い上がって行きたいなと思います」
 
 アジア王者を決める五輪予選の決勝、そして五輪ラストマッチのスウェーデン戦という大一番のいずれもでゴールを挙げた、この男の反発力は計り知れない。

 すべては自分次第――。14年1月の立ち上げ当初から主力を張ってきた手倉森監督の秘蔵っ子は、新たな決意を胸にブラジルを去る。