絶景ブームに乗れるか? 紛争地に建つカンボジアの世界遺産

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長年紛争が続いたカンボジアは、山岳に入るといまだに地雷が埋まっていたり、危険な地域というイメージが強い。「教えて!goo」にある「カンボジアの歴史について 自分の認識」を見ても苦難の道を歩んできたことが分かる。その一方で、アンコールワットをはじめ膨大な歴史遺産を擁する観光立国でもある。その魅力をリポートする。

■タイ国境にある「プレア・ヴィヒア」

約800mにわたる上り坂に敷かれた石畳の参道を延々と歩き、断崖絶壁にせり出した岩の上から眼下を見下ろす。広がるのはカンボジア北部の熱帯林だ。汗をかいた肌に当たる風が心地よい。

タイ国境付近に位置するヒンズー教寺院遺跡「プレア・ヴィヒア」。世界遺産に登録された2008年から11年までタイとの間で紛争が相次ぎ、国際司法裁判所が判決を下す13年までニュースに頻繁に登場していた遺跡だ。観光客が安心して訪問できるようになったのは最近のことという。

アンコールワットを擁しながらカンボジアの観光客は2年続けて減少。人気回復の目玉にしようと絶景ブームを当て込み、観光関係者が盛んにプレア・ヴィヒアの売り込みを図っている。日本でも兵庫県朝来市の高地にある竹田城跡が「天空の城」として一大ブームを巻き起こしており、狙いは悪くない。

早朝にカンボシア遺跡巡りの拠点となるシェムリアップをマイクロバスで出発し、北東へ150km。途中いくつかの遺跡に寄りながら、午後2時頃にプレア・ヴィヒアのある街に到着した。麓でピックアップトラックの荷台に乗り換えて約20分ほど急勾配を登っていく。半端ない秘境感を味わう。

■迷彩服の軍人とその家族が常駐

目的地が近づくに連れて迷彩服を着た軍人の姿が増えてきた。同行したガイドは「人がいなくなるとタイ人が入ってくるから、軍人とその家族が住んでいる。危なくはないです」と説明する。

トラックの荷台から降りる。軍人とその家族が暮らす区域を見渡す。小さな子供や家畜の鶏が走り回り、のどかに見える一方、多くの塹壕が綺麗な状態で残されており、いつでも臨戦態勢に入れそうだ。

ナーガと呼ばれる蛇の体とコブラの頭を持つ魔除けの像が建つ欄干を出発点に、海抜625mの頂きに建つ大聖堂を目指して登っていく。途中いくつかの塔門があり、大工事だったことが伺える。創建年代は9〜12世紀頃とされ、複数の王が権威を示すために増改築していったそうだ。

遺跡の中を軍人の子供らが遊んでいたり、たそがれていると思っていた兵士が実はスマートフォンでゲームに熱中していたり、軍人と国連教育科学文化機関(ユネスコ)職員が観光客の求めに応じて記念写真に納まっていたりと緊迫感はまるでない。絶景が見渡せる岩の下の空洞に祭壇が置かれ、女性たちが祈りを捧げていた。紛争で犠牲になった自国の軍人の弔いだ。

カンボジアでありながら、この一帯に入るにはあらためてパスポートを見せる必要がある。タイ人を入れさせないためだ。カンボジア側が断崖絶壁なのに対し、タイ側からはプレア・ヴィヒアに入りやすいという事情もある。

シェムリアップという地名の意味は「シェム(タイ)を追い出す」だとか。国際紛争とは根が深いものだ。

【カンボジアへのアクセス】
日本から直行する定期便はないものの、ベトナムのハノイ、ホーチミンで乗り換えれば7〜9時間でシェムリアップに到着できる。(取材協力:ベトナム航空)

教えて!goo スタッフ(Oshiete Staff)