「夕刊」は「タモリ」?“おもしろ誤読”をまとめたツイートに大きな反響…ことばの専門家に話を聞いた

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「あなた個人の誤読で印象に残る語」のまとめが面白いと、Twitterで話題になっています。

「おもしろ誤読まとめ」

この画像を投稿しているのは、飯間浩明(@IIMA_Hiroaki)さん。

これは、飯間さんがTwitterで募集した「あなた個人の誤読で印象に残る語」の一部をまとめたものです。

Twitter/@IIMA_Hiroaki

Twitter/@IIMA_Hiroaki

辞書の編さん者である飯間さんは、「お願い」と題してツイート。

「あなた個人の誤読で印象に残る語」があれば、教えてほしいというものでした。

すると、フォロワーやフォロワー外から、たくさんのリプライが届いたそうです。

飯間さんは、その中で「にやっとする例」をまとめてみたんだとか。

「錦糸町駅」を「にしきけいちょうえき」と読んでしまったり、「夕刊」を「タモリ」と読んでしまうなど、数々の「ことば」が誤読されています。

ツイートには「日本は漢字・平仮名・片仮名・英字混在文化ですね…」といったコメントも。

「あなた個人の誤読で印象に残る語」が面白いと反響を呼び、ツイートも20,000回以上リツートされていました。

「ことばのどういう部分で困っているか」を知りたい

なぜ、「あなた個人の誤読で印象に残る語」をTwitterで募集されたのでしょうか?

飯間さんへお話を伺ってみました。

photoAC/桔梗

photoAC/桔梗

―― 「あなた個人の誤読で印象に残る語」について、Twitterで募集をしてみようと思った理由を教えてください。

「あなた個人の誤読で印象に残る語」を募集したのは、私の仕事上の理由によります。

今回、新たにフォローしてくださった方も多いのですが、私の職業を謎だと感じる方もいるかもしれません。

私は辞書編さん者を名乗っており、『三省堂国語辞典』の編さんに携わっています。(三省堂社員ではなく、辞書を作る仕事をする研究者ということです)。

目下、私は「利用者に役立つ辞書とは」ということをよく考えます。ネットで何でも容易に検索でき、ポータルサイトで大辞林・大辞泉が無料で利用できる時代です。

ほかの辞書は「もういらないんじゃないの」という気もしますね。しかし、世間では、「ことば」について疑問や悩みを持つ人は多く、「ことば」に関する誤解や迷信もあふれています。

辞書編さん者としては、人々のこういう疑問や悩みを少しでも解消できる辞書が作りたいと思うわけです。(ここで「辞書」というのは、紙版・スマホのアプリ版の両方を指します)。

「ことばの何でつまずいているかを知る」

話が「誤読の募集」から逸れているようですが、逸れてはいません。

多くの人に役立つ辞書を作るには、皆さんが「ことばのどういう部分で困っているか」を知らなければなりません。

それは、敬語についてかもしれないし、文章をどう書けばいいかということかもしれません。「漢字が読めない」ということもあるかもしれません。

でも、辞書編さん者は、なまじ自分が「ことば」の専門家であるだけに「皆がどういうことで困っているか」をよく知らないのです。

私がTwitterを続けているのも、「ことば」についての情報発信のかたわら、多くの人が「ことばの何でつまずいているかを知る」という目的もあります。

今回、「あなた自身が誤読していて印象に残る語」を教えてもらおうと思ったのも、皆さんはどういう漢字が読めないのか、その実際が知りたいと思ったからです。

photoAC/ma-chan

photoAC/ma-chan

広まっている「誤読」があれば、それはもはや「誤読」の範囲を超えているかもしれず、「慣用読み」として辞書に登録する必要があるかもしれません。

また、スマホ版の辞書で誤った読みで検索しても、正しい項目が出てくるといった工夫ができるかもしれません。

具体的にどういうふうに使うかはこれから考えるのですが、どういう辞書を作るにしても、まず資料がなければなりません。

「こういう誤読がある」、「こういう誤読に気をつけろ」という本は、ちまたに多いのですが、生の声を聞いてみる必要がありました。

つまり、今回の試みの趣旨は、べつに「おもしろい誤読を集めて楽しもう」というわけではないんですね。

そもそもの趣旨は、皆さんが漢字をどう読んでいるかの情報収集です。Twitterで、おもしろい誤読を報告したのは、いわば、情報提供に対するお礼です。

「おもしろ誤読」以外の分析はこれから

ツイートにまとめた「おもしろ誤読」以外に、私のところにはさまざまな誤読が集まっています。その傾向の分析はこれからやります。

辞書の質の向上のために役立つ資料のひとつになるでしょう。

画像にまとめた「おもしろ誤読」については、もはや特に言うこともないのですが、ひとつ注釈をつけておくと、ここには雑多なものが集まっています。

厳密には「誤読」だけを並べたわけではありません。「切磋琢磨」を「きっさぶたまろ」と読んだのは、これは誤読であり傑作です。

photoAC/紺色らいおん

photoAC/紺色らいおん

一方、「管理人」を「かににん」と発音したのは、漢字を誤読したわけではなくて周囲の人の発音を耳で聞いて覚えたわけです。(「管理人」という漢字を知る以前に)。

また、「ペイズリー柄」をこともあろうに「ペッサリー柄」と言ってしまったのは、脳内の記憶が混乱して、つい別のことばを口に出してしまったということです。

このように、この画像にはいくつかの誤りのパターンが含まれています。Twitterでの反応の中には、それを簡単に分類していた人もいました。

そうやって、この画像をもとに、いろいろと考えを深めてみるのも楽しいことではないでしょうか。

―― ありがとうございました。

飯間さんの辞書の質の向上に、役立てたいという思いが伝わってきますね!

「あなた自身が誤読していて印象に残る語」に興味がある方は、ぜひTwitterアカウントをチェックしてみてはいかがでしょうか?

※この記事のツイートと画像は飯間浩明(@IIMA_Hiroaki)さんの許可を得て掲載しています。