主に関東圏の葬儀社に提案しており反応は上々だという(撮影/横山渉)

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 死亡数160万人時代の課題はビジネスで解決火葬場の不足や葬儀費用の不透明性など、業界に問題は多い。それらの問題を解決しようとチャレンジするビジネスが増えている。

【葬儀ビジネス01】
ドライブスルー葬儀:足腰の弱いお年寄りも車から降りずに焼香

 葬儀のあり方は大都市と地方では大きく異なる。都市部では葬儀場まで電車で行けるが、地方では車で行くのが普通だ。そんな地方の事情に照らして、「ドライブスルー型葬儀システム」を開発し、特許を取得した会社がある。長野県上田市のD&Aコンサルティングだ。

 葬儀の流れはこうだ。葬儀場の専用通路に入ったら、誘導灯の指示に従って専用受付の横に車をつける。受付にはタッチパネルがあり、車から降りずに窓から手を出して氏名・住所などを入力し、焼香ゾーンへ。

 ここでの焼香は、抹香を指でつまむ通常のものではなく、焼香台に置かれた「焼香ボタン」を押す。すると、葬儀場の祭壇の遺影下に置かれた花形ランプに明かりがともり、焼香があったことを知らせる。

 車内で手を合わせ拝礼している姿は、遺影近くに配置されたスクリーンに映し出される。焼香が済んだら、ゲート用ボタンを押す。前方の自動ゲートが上がり、あとは前進して通路を抜けるだけ。香典はタッチパネルのところにいる係員に手渡しする。開発した同社の竹原健二社長が言う。

「6年前、知り合いから、お葬式の通知が来たので車で連れていってほしいと頼まれた。その方は高齢で足がかなり弱っていました。葬儀場に行くと、焼香をするのに長い列が。結局、中に入って出てくるまで40分もかかりました。足腰の弱いお年寄りが長時間立っているのはつらい。車から降りずに済ませることはできないかと考えました」

 受付のタッチパネルには、供花を注文できる機能もある。葬儀終了後は、参列者や供花した人などがすべてリスト化されるので、喪主も手間が省ける。

 一つの葬儀場に最大2台まで設置することを想定しており、2台設置すると金額は1800万円。現在はデモ機のみだが、来年4月にこのシステムを備えた葬儀場が開設される予定だ。(ジャーナリスト・横山渉)

【葬儀ビジネス02】
葬式「早割」サービス:事前に500円支払うだけ最大で6万6千円安くなる

 葬式の「早割」チケットが売れているという。飛行機や携帯電話じゃあるまいし、いったい何のこと?

「500円で入れる、葬儀の掛け捨て保険のようなものです」

 と、「早割」サービスを考案したユニクエスト・オンライン(大阪市)社長の田中智也さん。

 同社は14ページで「改葬代行」を10月から始めるとすでに紹介した。追加料金一切不要の葬式を提供しており、料金体系がわかりにくい業界に一石を投じている。

「われわれのサービスは社会貢献性が高いと思っています。そのサービスを、死という危機感をまだ持てない人に知ってもらうには、『割引』というメリットが必要でした」(田中さん)

 葬儀で掛け金を積み立てるサービスとしては、葬儀社などが運営する冠婚葬祭互助会があり、葬式を挙げる時に積立金を使うことができる。しかし、いざ葬儀となると、葬儀社から「花飾り」や「湯灌(ゆかん)」など望んでいないサービスをすすめられ最終的に高額になるケースがあり、国民生活センターへの相談も少なくない。同社はその点、定額プランとなっているので、そうした心配はないという。

 こうして14年3月にスタートした「早割」。仕組みはカンタン。事前に500円を支払うだけ。割引率はプランによって違うが、葬儀費用が最大で6万6千円安くなる。有効期間は入金してから30日の免責期間を経て3年間。以降は、再び500円を支払えば、3年間期間が延長されていく。申し込んだ本人のほか、三親等まで保証される。同社にとっても、潜在的な顧客を囲い込むことができるというメリットがありそうだ。

 とは言え、生前に死を考えるなんて不謹慎じゃないか。

「一般の方からは、歓迎の声しかありません」(田中さん)

 かくして「早割」の売り上げは初年度5千件、2年目は2万8千件。3年目の今年は3万件を超える勢いだという。

 大阪市の禾元(のぎもと))初恵さん(67)は1年半ほど前に、高齢の母親(94)のために「早割」チケットを購入した。浮いたお金で姉も含め3人で、1泊2日の温泉旅行に行ったと楽しそうに話す。

「最後に親孝行ができました」

(編集部・野村昌二)

【葬儀ビジネス03】
遺体一人ぶん保冷庫:ガラス張りで故人を外からうかがえる“安置面会”

 都市部では火葬場不足が深刻な問題だ。人手不足による火葬場の統廃合、地域住民の反対などで新たな火葬場をつくることが難しいといった事情もある。

 墓石などの開発・販売を行うニチリョクはそんな状況に対応すべく、遺体を安置するための「ガラス張り保冷庫」を、6月に行われた業界向け展示会に参考出品した。葬儀社向けに営業展開する予定だが、開発途中であるため価格などの詳細は未定。いわゆる“遺体一人ぶんの冷柩庫”で、小さいスペースでも安置することができる。ガラス張りで故人の様子を外からうかがうことができるのが特長だ。

 ひつぎが入る業務用の冷蔵庫はこれまでもあったが、面会という発想はなかった。寄り添いたいという家族の気持ちに応えるために開発したという。

 同社は“安置面会”のニーズに応えてきた先駆け。2010年6月には家族葬・直葬専門の式場として神奈川県に「ラステル久保山」を開業し、「遺体安置サービス」を始めた。故人が火葬される前に、最期の一夜を過ごすホテル(ラストホテル)の意で名付けられた。12年には2軒目として「ラステル新横浜」をオープン。ラステル新横浜の横田直彦支配人はこう話す。

「病院で亡くなる方が多いですが、遺体を自宅に運べないことも多い。火葬まで遺体をどこに置くかは切実な問題です」

 面会室用のフロアには、シンプルな祭壇があり、故人の入ったひつぎを載せるようになっている。祭壇の向こう側には大きな霊安室がある。ゆっくりと面会したい家族向けには、貸し切りの個室も。家族は24時間いつでも故人と面会することができる。“遺体用ホテル”と紹介されることも多く、利用者は毎年増えており、新横浜と久保山合わせて月平均で50件以上の利用があるという。料金は1日1万2千円で、1時間あたり500円。

 同社のサービス以前にも葬儀社が遺体を預かることはあったが、ひつぎを車の中に置いておくなど、丁寧な扱いとは言えないケースも多かったという。(ジャーナリスト・横山渉)

【葬儀ビジネス04】
プラン比較サイト:“情報開示”遅れた葬儀業界 IT化進めて透明性高める

 首都圏で葬儀事業を行うアーバンフューネスコーポレーションは7月から、葬儀情報を紹介する情報サイト「葬儀ガイド」をスタートした。

 葬儀ガイドには、全国の葬儀社、葬儀事例などが掲載されており、ユーザーは複数の葬儀社の葬儀プランを比較検討することで、信頼できる葬儀社を選ぶことができる。葬儀事例には、実際に行われた葬儀の会場写真が複数掲載されており、故人が好きだった日本酒や花、思い出の品物などが飾ってある様子も見ることができる。

 専門の葬儀社は地域密着型の零細企業が多く、その数は全国で約6千社といわれている。積極的に宣伝活動しているところは少なく、ホームページを持っているところも少数派。業界全体として“情報開示”が遅れていた印象は否めず、葬儀費用などの透明性が問題だった。葬儀社側のサイトへの情報掲載は無料だ。加藤勉取締役はこう話す。

「業界横断型の情報サイトはこれまでありませんでした。葬儀業界は他に比べてIT化が遅れていた。直葬など低価格化が進んでいますが、料金だけでなく自分の価値観に合った葬儀をしてほしいという思いから立ち上げました。年内に全国2千社の参加を目標にしています」

 葬儀ガイドと同時にスタートしたのがスマホ・タブレット用のアプリ「葬ロング」。これは葬祭ディレクターのためのプロ専用業務支援アプリだ。自分が担当した葬儀を写真に撮り、スマホなどでクラウド上に保存する。ユーザーである葬祭ディレクターはそれらの情報を共有し、顧客に葬儀内容を提案するときに「こんなふうに葬儀ができます」と実例を示しながら説明することができる。

 葬ロングの情報は葬儀ガイドにも転送できるが、喪主の中には誰の目にも触れる情報サイトには掲載してほしくないと考える人もいる。その場合は、「葬ロング」だけに掲載をとどめる。

 このほか、同社は火葬場の空き状況などをチェックできる「斎場・葬儀場ガイド」の運営も開始している。(ジャーナリスト・横山渉)

【葬儀ビジネス05】
粉末にして海洋散骨:号鐘を鳴らして一礼し黙祷 散骨場所とアルバムを送付

 海に遺灰をまく海洋散骨を選ぶ人が増えている。散骨は遺骨を墓に納めず、灰にして自然に返すこと。7月下旬、全国19カ所で散骨事業を展開している琉宮海葬の散骨現場に立ち会った。

 この日、神奈川県の平塚新港に係留されていたプレジャーボートに乗船すると、甲斐浩司社長がすでに準備を始めていた。

 この日の遺骨は故人11人分。甲斐社長は11個の小さな竹かごに花びらを入れていく。この花びらと日本酒小瓶1本とミネラルウォーターのペットボトル1本がワンセット。これらを洋上で遺骨と一緒にまく。準備が終わり、船は海岸から離れた。

 日本海洋散骨協会では散骨する場所は、海岸から3キロ以上離れた沖合を目安としている。船長がその日の散骨場所を決める。天候や海況はもちろん、周囲に釣り船などがいないことを確認しなければならない。

 出港後、20分程度でこの日の散骨ポイントに到着した。甲斐社長は鐘(号鐘)を鳴らして、散骨開始を宣言する。合掌はせず、一礼して黙祷する。宗教色をなくすためだ。散骨の様子はデジカメで撮影。後日、散骨証明書と一緒に依頼者にアルバムを発送する。グーグルマップで調べた散骨場所も連絡する。

 遺骨の入った袋は海に沈みながら溶け、白いパウダーがあたりに一瞬広がる。遺骨は骨とわからないように粉末にされていた(粉骨作業の様子は22ページ参照)。甲斐社長によれば、依頼は年々増加。7月は50件以上散骨したという。
「海ならどこでもいいだろうというルール無視の業者もいる。供養の本質をあらためて考える必要がある」(甲斐社長)

 かつては「海が好き」という趣味的な理由が多かったが、今は必ずしもそうではないという。

「そうした美談は少数派。お墓がない、墓守がいないという現実的な理由が増えている」(同)

(ジャーナリスト・横山渉)

AERA 2016年8月15日号