日本ラグビーがふたたび歴史的大金星を挙げ、世界を驚かせた――。

 昨年のワールドカップ(W杯)で男子15人制ラグビー日本代表が南アフリカを撃破した快挙に続き、今度は男子7人制ラグビー日本代表がオリンピックの舞台で「ジャイアントキリング」を起こしたのだ。

 8月9日、リオデジャネイロ五輪から正式種目となった男子7人制ラグビー(セブンズ)が開幕。予選プールCに入った日本は、初戦で「オールブラックス」ことニュージーランドと対戦し、見事に14−12で逆転勝利を収めた。男子として、国際大会でオールブラックスに勝利する史上初の快挙である。

 オールブラックスは15人制だけでなく、7人制でも最強国のひとつだ。7人制のワールドカップでは6大会中2回優勝し、過去17年のワールドシリーズ(F1のように世界で戦うサーキット大会)においても実に12度の総合優勝を果たしており、昨年度も3大会で優勝して総合3位(日本は15位)となっている。もちろん、リオ五輪でも金メダルが有力視されているチームだ。

 15人制ラグビーでW杯2連覇に貢献したソニー・ビル・ウィリアムズ、2006年からチームを支えるDJ・フォーブス、セブンズの年間MVPに輝いたこともあるティム・ミケルソン、父が日本のリコーでプレーしていたアキラ&リエコのイオアネ兄弟......。今大会のニュージーランドのメンツを見ても、個々の能力に長けたアスリートが揃う豪華メンバーなのが知れる。

 そんな優勝候補のオールブラックス相手に、どうやって日本は勝つことができたのか――。

 勝因のひとつに挙げられるのは、日本のアタックが世界でも十分に通じるレベルにあったことが大きかった。昨年11月、日本はアジア予選で優勝してリオへの切符を獲得したあと、100日間の合宿を敢行した。そこでチームとして成熟し、桑水流(くわずる)裕策、レメキ ロマノ ラヴァ、トゥキリ ロテ、坂井克行ら主力に加え、スクラムハーフとスイーパーを兼ねる合谷(ごうや)和弘、ラン能力が高い後藤輝也などがチームにフィット。また、フィジー出身で身長190cmの副島亀里(そえじま・かめり)ララボウ ラティアナラが絡むことで、空中戦に強く、ランでもタメを作ってオフロードパス(※)ができるなどのアクセントが加わった。

※オフロードパス=タックルを受ける前に投げる通常のパスに対し、タックルを受けてから投げるパスのこと。

 その結果、昨年度のワールドシリーズではフィジー相手に延長戦までもつれ込んだり、イングランド(オリンピックは混成チームのイギリスで出場)と引き分けたりするなど、一定の成果は出てきた。リオ五輪では初戦のニュージーランド戦で2トライ、惜敗した2戦目のイギリス戦でも3トライを挙げたが、それは決してフロックでもなんでもない。まさしく実力で奪ったトライだ。

 ただ、課題も以前から明白だった。それはディフェンスだ。

 スピードが速く、フィジカルの強い選手が揃う世界の舞台では、どうしても簡単に突破されてしまう。そこで、2012年から指導する瀬川智広ヘッドコーチ(HC)は、「放っておいたらアタックの練習ばかりをしてしまう」メンバーに対し、今年3月ごろからディフェンス中心の練習を課し続けた。

 日本のディフェンスは、組織全体を前に押し上げて守る「ブリッツディフェンス」である。相手との接点でプレッシャーをかけないのであれば、すぐに7人が起き上がって前に出て、ひとり目がロータックルで相手を止め、ふたり目は挟むようにタックルし、オフロードパスをされる前に倒す。

 日本は今年6月末に初戦の相手が決まったときから、ずっとニュージーランドを分析していたという。そこで考えついたのが、個の強いニュージーランド相手に対してスローペースで粘り、時間をかけてアタックすることだ。それは、ターンオーバーからの失点を防ぐ狙いもあった。

 その戦術は見事にハマり、日本はしっかりと敵陣でボールをキープしながら攻め込み、リズムを作り出すことに成功した。さらに調子の上がっていた後藤祥尭(よしたか)を先発に起用すると、その期待に応える先制トライで主導権を握った。このトライで、選手たちは「いける!」と感じたという。

 後半も、ランで前に出られる坂井、オフロードパスのうまい副島を効果的に入れるなど、ゲーム運びも見事だった。そしてロスタイム、ニュージーランドの最後の猛攻に耐えた日本は、セブンズ史上に残る大金星を挙げることができたのである。

 ニュージーランド戦を終え、桑水流主将に成長したところを聞くと、「ディフェンスが粘れるようになった」と口にした。瀬川HCも、「(組織的ディフェンスについて)試行錯誤して、なかなかできたなかったものが、今日はたまたまかもしれないができました」と笑顔で答えた。

 続いて行なわれた予選プール2試合目の相手はイギリス。結果は19−21で惜敗したものの、ロスタイムにボールをしっかりと展開してトライを挙げるなど、あと一歩というところまで追い詰めた。「ニュージーランド戦で、やればできるという自信になった」(桑水流)と言うとおり、ずるずると崩されない強さを出せたのは収穫だ。

 大会2日目の8月10日は、予選プール最終戦でケニアと対戦する。ニュージーランドやイギリスと比べると格下だが、ケニアは今春のシンガポール・セブンズで優勝するなど実力は侮れない。

 早くもリオ五輪で、日本は"台風の目"となりつつある。ケニア戦に勝利すれば、決勝トーナメント進出は確実。目標に掲げる「メダル獲得」を実現するためにも、予選プールではひとつでも順位を上げて通過し、少しでも有利な立場で次に進みたいところだ。

「ニュージーランド戦はひとつのゲームとして考えれば、すばらしいことだと思います。ただ、セブンズ全体として考えたとき、大会のなかでひとつひとつ勝っていくことが大事です」(瀬川HC)

 日本はどこまで勝ち上がることができるのか――。さらなる「ジャイアントキリング」に期待したい。

斉藤健仁●取材・文 text by Saito Kenji