柔らかすぎる“ゆでたん”に驚き! 絶品牛たんバル「新橋炭焼牛たん本舗」実食レポ

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焼くしか芸がない食材だと思っていた。もちろん、トロトロになるまで煮込んだフレンチや洋食屋の一品も旨いが、高級すぎてなかなか手が出ない。

【動画】箸がスッと入る…!「ゆでたん」驚きの柔らかさ確認動画

牛たんの話だ。

ただ焼くだけでもなく、高級でもない、庶民的な牛たん料理を食べさせてくれる店はないのか。

長年そんなふうに思ってきた。

居酒屋が軒を連ねる新橋に、廉価で牛たん三昧をさせてくれるバルがオープンした。

テーブル席も備えた、スタンディングスタイルの「新橋炭焼牛たん本舗」だ。

「まずは『ゆでたん』を食べてみて」とオーナーシェフの松永藤吾さんにすすめられた。

はたして茹でただけの牛たんが旨いのか。

「まあ、そう言わず食べてみてくださいよ」

出てきた料理を見て、一瞬腰を引いた。真っ黒なのだ。黒の正体は粒黒胡椒。

そして、食べる前にまた驚いた。箸がすっと入るのだ。

最後に、食べてまたびっくり。やわらかく茹でてあるだけでなく、出汁の味もふくんでいた。

「利尻昆布と本枯鰹節でひいた出汁で8時間炊いてあります」

フレンチでもなければ洋食でもない、和食の技を駆使した牛たん料理があったとは。

1枚380円は高いような気もするが、かなり厚いので、お値打ちといえるだろう。

もう一品、人気が高い料理を出してもらった。

「タンシチュー」(680円)だ。

この料理は、フレンチが得意としている。が、新橋のこの店のタンシチューはフレンチのそれではない。ゆでたんと同じ出汁で4時間かけて煮込んだ後、トマトソースでさらに煮込んでいるというのだ。そのためフレンチでもなければ、イタリアンでもないタンシチューに仕上がっていた。

それもそのはず、松永さんは、これまで和食、フレンチ、イタリアンの腕を磨き、「クルーズクルーズTHE GINZA」などで総料理長をつとめてきた経験の持主。

これまで培ってきた和食、フレンチ、イタリアンの技術を要所要所に取り入れることで、他所では出会えない牛たん料理を食べさせてくれる。

実はこの店はランチも営業している。タンシチューは「夏野菜炭火焼き 牛たんシチュー」というランチメニューで提供している。

炭火で焼いたズッキーニ、オクラ、カボチャが盛られ、味噌汁、麦飯がついて980円。

近年麦飯は、便秘やダイエット効果が期待できることから、脚光を浴びている。おいしくて、健康的であることから、女性客がこの料理を注文するのだそうだ。

夜はバケットがついたタンシチューを、ワインと一緒に愉しませてくれる。

「『上たん 霜降りカルビ』も食べてください。酒のアテに合うと思います」

料理名を見ると牛肉の部位のカルビもついているような気がするが、そうではない。脂がのっていることから、「上たん 霜降りカルビ」と命名。しかも2日間熟成させることで、味がのるのだそうだ。

かなり厚くカットしてあるので、食べごたえがある。

自家製の柚子胡椒、手作りの白菜の漬物もついて、1枚580円。

新橋界隈の居酒屋ではポテトサラダをメニューに掲げている店が多いはず。松永さんの店にもあるのだが、ちょっと変わったポテトサラダを定番にしている。

「出汁で8時間炊いた牛たんを、冷やしてから、刻みます。これをジャガイモやキュウリ、ゴボウと和えたものが、うちの『牛たんポテトサラダ』です」

細かく刻んだ牛たん、シャキシャキ感のあるキュウリ、コリコリしたゴボウ。食感を愉しめる「牛たんポテトサラダ」は480円。

ところで。バルでありながら、酒の説明をあえてしなかった。それには理由がある。この店では、お通し代として580円を払うシステムを採用している。

「お通しが580円もするのか!」と眉間にシワをよせる人もいるかもしれない。が、ちょっと待ってほしい。「料理の、ひとり三国同盟シェフ」の松永さんは、手の込んだお通しを用意している。今の時期は大根と野菜を炊いたものと、ニンニク肉味噌を出している。

炒めたニンニクにひき肉を入れ、出汁で炊いたニンニク肉味噌を、コトコトと炊いた大根につけて食べてもらう一品だ。クーラーで冷えた五臓六腑を、温かい大根が癒やしてくれる。

「うちでは、手作りのお通しを食べていただきながら、ワインもシャンパンも日本酒も原価で提供しています。そのためのお通し代として、580円を頂戴しているんです」

酒の原価販売を実現させるために580円を支払ってもらっているというのだ。

その見返りに、どんな酒を原価で飲めるのか。

たとえば、「久保田の千寿特別本醸造」は一合で330円。「モエ・ブリュット・インペリアル」は1本4789円で提供している。

「冷蔵庫にはメニューに載っていない酒もあります。常連客の中にはメニューを見ず、今日のおすすめを聞いてくる方もいらっしゃいます」

かと思えば、オリジナルドリンクも揃っている。その中でもっとも人気なのが、凍らせたスライスレモンが入った「特製ガチ割りレモンサワー」(580円)だ。

氷を使っていないので、最後まで味が薄くならない。それどころか時間が経つとより冷たくなり、レモンの味が濃くなってくる。ホッピーではないが、2杯分が入った中だけを別途注文すれば、安く飲めるというわけだ。

焼くだけでもなく、フレンチでもイタリアンでもない牛たん料理。「料理の、ひとり三国同盟シェフ」が牛たんをどう昇華させるのか、ちょっと見ものだ。

新橋炭焼き牛タン本舗
東京都港区新橋3-14-6駒場ビル1F
03-3433-8103
11:30〜LO14:00/16:00〜LO23:00(日祝LO22:00)
無休