『デスマーチからはじまる異世界狂想曲』(愛七ひろ:原作、あやめぐむ:作画、shri:キャラクター原案/KADOKAWA)

写真拡大

 ここ数年、「なろう系」と呼ばれるジャンルの小説が次々とヒットしている。「なろう系」とは、「小説家になろう」に代表されるような無料小説投稿サイトにて注目を集め、書籍化され市場に流通された作品のこと。その多くがラノベに分類され、非常にコアなファンを獲得しているうえに、コミカライズやアニメ化もされ、積極的なメディアミックス展開をしているのが特徴だ。最近では、『オーバーロード』『無職転生―異世界行ったら本気だす―』『魔法科高校の劣等生』『ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか』などが有名である。

 そんな「なろう系」で、大ヒット間違いなしと注目を集めている作品がある。それが『デスマーチからはじまる異世界狂想曲』(愛七ひろ:原作、あやめぐむ:作画、shri:キャラクター原案/KADOKAWA)。原作はなんと3億PVを記録した超話題作で、それをコミカライズした本作は続々と重版出来中なのだ。

 本作の主人公は、鈴木一郎・29歳。PCやスマホ用のゲームを製作する会社で、社畜のように身を粉にして働くプログラマーだ。物語は、そんな彼が納期に間に合わせるためにてんやわんやしている“デスマーチ”の真っ只中からスタートする。仕様変更、バグチェック……クライアントからの無茶振りに応えるため、30時間ぶっ続けで働くというなんとも恐ろしい状況だ。

 ところが、案件が一通り落ち着き、彼が眠りに就いたところで状況は一変する。気が付くとそこはゲームの世界。高校生の姿、そして彼が愛用する「サトゥー」という名称で、ファンタジー世界に投げ出されてしまっていたのだ。……と、ここまで読めばわかる通り、本作は「なろう系」でも人気の「異世界転生モノ」なのである。しかし、本作が他と異なるのは、ファンタジー世界を徹底的にプログラマーの目線で切り取っているところ。

 ステータス画面を開き自身のスペックをチェックする、モンスター撃破時のログを解析する、状況に応じてスキルポイントを割り振るなど、サトゥーの目線・行動はプログラマーのそれ。異世界の住人としてではなく、ゲーム製作者として世界を俯瞰で見ているのだ。そのため、ファンタジー世界に対する彼の感想も、どこか客観的。魔族や獣人たちが生活する国を見ては「なかなかの多種族国家みたいだな」と言い、「せっかくの非日常だから楽しまないとね」なんて楽観的な見解に至ったりもする。これはまさに、僕らがRPGを楽しむ時の感想と一緒。だからこそ本作は、上質なRPG実況を見ているかのような気持ちで、その世界観に浸ることができるのだ。

 しかし、彼が異世界を満喫できているのは、それが「夢」だと思っているから。けれど、その夢がなかなか覚めない。それどころか、さまざまな事件に巻き込まれていくうちに、いよいよそれが現実のものだと認識することになる。それでも冷静なのが、サトゥーもとい鈴木一郎の良いところなのだけれど。

 1巻、2巻では彼が異世界を楽しみつつ、活躍する姿が描かれる。そして、8月9日(火)に発売されたばかりの3巻では、元日本人である奴隷少女と出会い、異世界転生の謎が少しずつ紐解かれていく。果たして彼は、無事に元の世界へと戻れるのだろうか――。

 プログラマーが主人公の、一風変わった異世界転生モノ。3億PV記録という、まさにモンスター級の「なろう系」作品に、ぜひ触れてみてほしい。

文=五十嵐 大