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■リオ・オリンピックの女神は「イパネマの娘」

 いよいよリオ・オリンピックが開幕。日本時間8月6日午前7時(現地5日午後8時)から3時間にわたって開会式が盛大に開催された。総合演出は映画監督のフェルナンド・メイレレス。『シティ・オブ・ゴッド』でアカデミー賞監督賞にノミネートされたことでも知られている。

 前回ロンドン・オリンピックではポール・マッカートニーが出演するなど、「世界の言葉」である音楽は演出上重要な要素となる。今回のオリンピック・マスコットの名前が「ヴィニシウス」と「トム」、つまりボサ・ノヴァの名作家コンビ、詩人ヴィニシウス・ジ・モライスと作曲家アントニオ・カルロス・ジョビン(愛称トム)からとられているだけに、ボサ・ノヴァがフィーチャーされるであろうことは予想していたが、これほどまでとは思わなかった。

 まず、銀色の波をイメージさせる、会場での最初の団体パフォーマンスと、そこから続くカウントダウンのバックに使われたのは「サマー・サンバ」。マルコス・ヴァーリが作曲し、1966年にオルガンのワルター・ワンダレイがヒットさせた名曲だ。のちに英語詞が付けられ「ソー・ナイス」というタイトルでアストラッド・ジルベルトらがカヴァーし、世界的に有名だ。世界の注目が集まる冒頭に、サンバではなくボサ・ノヴァのこの曲を持ってきたことからも、「リオはボサ・ノヴァ」という意識が感じられる。

 そして、ブラジル国旗掲揚と国歌歌唱はパウリーニョ・ダヴィオラのギター弾き語り+ストリングス。ダヴィオラはリオ出身の国民的人気のサンバ・シンガーの巨匠だが、ギターの弾き語りはまさにボサ・ノヴァ。この大胆なアレンジには驚いた。

 続くパフォーマンスは、太古の昔から現在に至るブラジルの歴史を振り返るものだが、そこに登場した実在の人物はふたり。ひとりはアルベルト・サントス・デュモン(1873〜1932)。フランスで飛行船や航空機を開発し、ライト兄弟に3年遅れたがヨーロッパで最初の航空機を飛ばした発明家で飛行機王。ブラジルでは紙幣に肖像が使われるほどの世界に名だたる偉人だ。

 その飛行パフォーマンスのバックに流れていたのは、アントニオ・カルロス・ジョビン作詞作曲のボサ・ノヴァ名曲「サンバ・ド・アヴィオン」(1963年作)。NHKのアナウンサーは時代を考えたのか直訳で「飛行機のサンバ」と紹介したが、「ジェット機のサンバ」の邦題でよく知られている。

 この曲はリオに近づく飛行機の中から帰郷に心躍らせる、リオ愛あふれる歌。フランスからサントス・デュモンが帰ってきたのだ。ちなみに、かつてのリオの国際空港の名前は「サントス・デュモン空港」であった(現在は国内線空港になっている)。そして現在の国際空港は「アントニオ・カルロス・ジョビン空港」。飛行機が到着すると、そこには大きなジョビンの肖像が映し出される。ブラジルそしてリオを象徴するもうひとりの人物はジョビンであった。

◎続きは後編で。お楽しみに!

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文/編集部