かたちにする、結びつける、不満をもつ:ものづくりから始まる「ハックの技法 」#CHA2016

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「日常をハックせよ!」をテーマに今年も開催される、『WIRED』日本版主催「CREATIVE HACK AWARD」。”言うは易く行うは難し”なこの課題を前に、どのようなアプローチをすればよいのか。審査員のひとりであるライゾマティクス・齋藤精一と、「TechShop Tokyo」の代表取締役社長・有坂庄一に、ものづくりを通じた「日常」のハック術、そしてハックのために必要な視点を訊いた。

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『WIRED』日本版が主催する、次世代クリエイターのためのアワード「CREATIVE HACK AWARD」(CHA)。現在作品を募集中のこのアワードにあわせ、『WIRED』ではさまざまなゲストに「ハックの技法」を訊くオープンセミナーを都内で複数回開催している。

INFORMATION

作品の応募受付、開始! 受賞者には豪華な賞品も

2013年から『WIRED』日本版が開催しているアワード「CREATIVE HACK AWARD」。受賞者のなかから、クリエイティヴシーンで活躍する逸材も生まれている本アワードが、今年も作品の募集を開始。「日常をハックせよ!」をテーマに、あらゆる領域における「新たなクリエイティヴ」を受け付けています(応募締め切りは16年9月30日)。好評を博している「オープンセミナー」は、第3回が8月に開催予定。

7月28日に開催した第2回では、アワード初年度から審査員を務めるライゾマティクス代表取締役の齋藤精一と、本格的な工作機器が揃う会員制オープンアクセス型DIY工房「TechShop Tokyo」の代表取締役社長・有坂庄一、そして『WIRED』日本版編集長・若林恵が登壇。ものづくりを通じた「日常」のハック術を語った。

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有坂庄一|SHOICHI ARISAKATechShop Japan代表取締役社長。1998年富士通に入社し、ICTシステムの海外向けマーケティングを担当。2015年10月TechShop Japan代表取締役社長に就任。16年4月、アークヒルズにオープンさせた「TechShop Tokyo」を拠点にものづくりコミュニティを生み、「真のメイカームーヴメント」を日本に起こすべく活動中。

かたちにすること

TechShopは2006年にアメリカで生まれた会員制の工房だ。フライス盤や溶接機、あるいはレーザーカッターといったプロユースの工作機を誰でも使える環境をつくりだし、アメリカのメイカームーヴメントのなかで100を超えるビジネスがこの工房から生まれた。そんなTechShopの根底にあるのは「誰でも、もっと簡単にアイデアをかたちにできたら」という想いだ。

「いま、アイデアを形にできている人はほんの一握りです。それを支援する場所にするのが、TechShopの目指すところです。ターゲットはどこですかとよく聞かれますが、特にありません。自分のために何かをつくれば立派な趣味、誰かのためにつくればプレゼント、それに数千人、数万人の人が共感したらビジネスになる。そこに垣根はないので」

アイデアを実際に形にすること。それを日々実践しているのが、今年創立10周年を迎えたライゾマティクスだ。齋藤精一は最終的に企画書に収まってしまうアイデアではなく、プロトタイプまでつくることが重要だという。

「もう紙の上でビジネスを語るのはやめませんか?と、最近よく思うんです。どんどんアクションをおこして、どんどんエラーを出しながら、よいものをつくってほしい。そのきっかけとして、ハックアワードを使ってもらえればと思います。いまやっているビジネスとは違う視点や可能性、ビジネスモデルがつかめるはずです」

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齋藤精一|SEIICHI SAITO1975年神奈川県生まれ。ライゾマティクス代表取締役/クリエイティヴ & テクニカルディレクター。建築デザインをコロンビア大学(MSAAD)で学び、2000年からニューヨークで活動を開始。その後 ArnellGroup にてクリエイティヴとして活動し、03年の越後妻有アートトリエンナーレでアーティストに選出されたのをきっかけに帰国。アート制作活動と同時にフリーランスのクリエイティヴとして活動後、06年にライゾマティクスを設立。建築で培ったロジカルな思考をもとに、アートやコマーシャルの領域で立体作品やインタラクティヴ作品を制作する。

結びつけること

いままで分断されていた領域同士を結びつけることが、ハックなのだと齋藤は言う。

「ハックするというのは、いままでまったくつながらなかった技術・分野同士をつなげるということです。仕事や学校は、ひとつのものに特化して取り組むことが多いですが、その枠を超えて、ほかの人と一緒に開発をしていく、一緒にアイデアを交換していくことをしないと、負けてしまいます」

既存の領域を超えたビジネスとして挙がったのがAirbnbUberの名だ。

「AirbnbやUberは、すごい画期的なことをやっているというよりは、世の中の隙間や、見えていなかったことに気づいて、テクノロジーのプラットフォームを使ってその隙間を結びあわせたんです。

Airbnbの創業者は、エンジニアではなくデザイナーなんですよね。彼は、いわゆる技術ドリヴンなイノヴェイションを、デザインの方向にシフトさせました。いままで結びついていなかったものを結び付けたり、当たり前だと思われていた手順を編成しなおしたり。エンジニアリングとデザインというものが、似たものとして存在しているんです」(若林)

「いま、ハードやソフト、UXやUIといった領域の違いがなくなっています。Uberでいうと、例えばタクシーをオンライン化してシェアするというのは考えられるアイデアなんですね。でもいちばんのすごさは、それを実現することにあるんです。

業界や行政で難しい調整もあって、アイデアを実現するためには必然的に、デザインがわかる弁護士や、タクシーのサーヴィスの知識があるアプリの開発者が必要になります。いわゆる一業種だけでつくることができないんです。しかも、Uberを日本の数社でつくろうとしても、それはUberにはなりません。一貫して、理想論をもってきちんと実現できるかが大事なんです」(齋藤)

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不満をもつこと

最後にハックの視点として語られたのは、不満をもつことだ。有坂が例に挙げたのは、TechShopで生まれた「Square」だ。カード決済に大きな改革をもたらしたこの小さな端末は、もともとはあるガラス職人の不満から生まれたものだという。

「その職人は路上でガラスを売っていたのですが、お客さんが現金払いだと商品を買ってくれないことに気が付きました。『路上でカード決済があれば売れるのにな』と不満に思った彼は、たまたま友だちだったジャック・ドーシーと組んで、仕組みのプロトタイプをつくったんです。

誰でも思いつくアイデアだし、仕組み的にもプログラム的にも大したことない。それでも、Squareは大成功した。よく『俺の会社でもできた』と言う人がいますが、たぶんできない理由があったんです。思いついたことをやれた人とやれない人の違いってなんなんだろうな、とよく思います」(有坂)

「ハックって何だろうと思ったりするのですが、ひとつには現実に対する不満があるんですよね。現状のシステムだったりとか、自分がもっているプロダクトだったりとかに満足していたら、改変する理由がないんです。

なんかおかしい気がする、というのをどれだけ強く思えるか。もしくは、こうやったらうまくできるかも、みたいな考え方があるといいです。現状を見て『これが当たり前じゃなくてもいいのにな』というモチヴェイションが、クリエイティヴの根源的なありがたとしても大事なのだと思います」(若林)

「なぜここにこれがないのかとか、なぜこれとこれは互換性がないのかとか、大人の事情を見つけること。そして、そこに疑問をもつことが、視点的にはハックなのだと思います。それに対するソリューションを考えるのが、いま日本に欠けているところですね」(齋藤)

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作品の応募受付、開始! 受賞者には豪華な賞品も

2013年から『WIRED』日本版が開催しているアワード「CREATIVE HACK AWARD」。受賞者のなかから、クリエイティヴシーンで活躍する逸材も生まれている本アワードが、今年も作品の募集を開始。「日常をハックせよ!」をテーマに、あらゆる領域における「新たなクリエイティヴ」を受け付けています(応募締め切りは16年9月30日)。好評を博している「オープンセミナー」は、第3回が8月に開催予定。