■連載/金子浩久のEクルマ、Aクルマ

 プジョー・シトロエン・ジャポンが、日本でもディーゼルモデルを一気に9モデルも展開することになったことは、以前、本連載でお伝えした通り。そして早速、その第1弾となるプジョー『308』と『508』のメディア試乗会が開かれたので参加してきた。

 まずは『508』から。プジョーを代表する大型セダンとステーションワゴンだ。先日のコラムに書いた、僕が30年前に乗っていたプジョー『504』と『505』などとメカニズムを共用するところなどもちろん何もないが、ラインアップでの位置付けは変わらない。

新しいディーゼルエンジンを搭載したプジョー『308』『508』の実力検証 新しいディーゼルエンジンを搭載したプジョー『308』『508』の実力検証

 試乗したのは、『508 SW GT BlueHDi』。2.0L、4気筒ターボディーゼルエンジンを搭載し、前輪を駆動するステーションワゴンだ。トランスミッションは6速AT。走り出す前から感じたのがシートの良さだった。「GT」を謳うだけあって、サイドのクッションが盛り上がったバケットシートのような形状をしているが、乗り降りのたびに邪魔になるようなことはなかった。走行中も優しく身体をサポートしてくれる。2.0Lディーゼルターボの振動は皆無だ。音は無音というわけではなく、ガラガラとは言わないが、独特のビートを刻んでいることがわかる。

 新東名高速に乗って巡航に入ると、風切音とタイヤノイズの方が勝ってくる。それでも、100km/hは6速で1500回転しか回っていないから静かだ。ほんの少しの踏み込みからでも力強く加速するので、こうした巡航ならば疲労が小さいだろう。ハンドルに付いたパドルのタッチがとても良好なのと、6速ATの制御が賢くエンジンの良いところを巧みに引き出しているのに感心させられる。

 ただ、ボルボやジャガーのディーゼルエンジンなどと較べると、このプジョーの2.0Lはややレスポンスがマイルドだ。しかし、それは実用上全く問題がなく、キャラクターの違いと了解できる範囲のもの。このクルマに於いてエンジンとトランスミッションは己を主張することなく、完全に黒子に徹している。そこがとてもプジョーらしくてよいと思う。クルマが主役なのではなくて、乗って使う人とその暮らしを引き立てる役割に自ら徹しようとしているのが無言のうちに伝わってくる。僕の『504』もそうだった。     

 どこか遠くにセカンドハウスでも持っていて、休みの度ごとに家族や友人たちとそこへ通って季節と自然とスポーツと芸術を謳歌するような使い方にピッタリの1台だ。だから、ステーションワゴンで要となる、荷物の運搬や出し入れに気を使った造りになっている。荷室には余計な出っ張りや突起がなく、荷物が転がらないよう固定ネットが標準装備され、ゲートの敷居には重たい荷物の滑りを良くする金属製プレートが嵌め込まれている。

新しいディーゼルエンジンを搭載したプジョー『308』『508』の実力検証 新しいディーゼルエンジンを搭載したプジョー『308』『508』の実力検証

 他にも、細かな工夫があちこちに見受けられる。設計や開発に携わっている人が、きっとこのクルマを必要とするようなライフスタイルを送っているのだろうと想像してしまう。しかし、不満もないわけでなくて、乗り心地は全般的にとても快適で上質なのに、細い突起などを踏み越えたような時の、周期の短いショックがビシビシッとキツく伝わってきてしまうのが残念だった。僕の『505GTi』もまったく同じ症状があったから、これがプジョーのGTモデルの仕上げ方なのかもしれない。GTではない『508』の追加設定を望みたい。

新しいディーゼルエンジンを搭載したプジョー『308』『508』の実力検証 新しいディーゼルエンジンを搭載したプジョー『308』『508』の実力検証

 続いて乗ったのが『308 Allure BlueHDi』。フォルクスワーゲン『ゴルフ』のライバルとなるサイズの2BOXカーだ。『508 SW GT』と違って、1.6Lのディーゼルを積む。こちらも6速ATと組み合わされ、非常に巧みにエンジンのパフォーマンスを引き出している。2.0Lと1.6Lと排気量こそ違うが、キャラクターはとてもよく似ている。スポーティというよりは実用的な特性が与えられていて、加速力と取り扱いには申し分ない。

新しいディーゼルエンジンを搭載したプジョー『308』『508』の実力検証 新しいディーゼルエンジンを搭載したプジョー『308』『508』の実力検証

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 SPORTモードのボタンを押すと、エンジンレスポンスが鋭くなり、高回転域でシフトアップするようになるが、その分エンジン音もかなり高まってくる。サスペンションのセッティングは『508 SW GT BlueHDi』とは随分と異なっている。コーナリング中の左右方向へのロールは大きめだし、ピッチングもある。

新しいディーゼルエンジンを搭載したプジョー『308』『508』の実力検証 新しいディーゼルエンジンを搭載したプジョー『308』『508』の実力検証

新しいディーゼルエンジンを搭載したプジョー『308』『508』の実力検証

『508』のようなフラット感は弱く、常にどちらかに傾いている。でも、それが不安や不快につながるかというと全くの正反対で、実に気持ちが良く、面白い。コーナーを曲がるたびに右に左にボディを傾けながら駆け上がっていく。これが今のフランス人の標榜する“スポーティ”なのではないか。

 シートも柔らかく、快適。輸入ディーゼル車で最安値の299万円という価格以上の価値がある。背伸びしたり、妙にスポーティに仕立て上げることもなく、愚直に実質を磨き上げているところを高く評価したい。『308 Allure BlueHDi』をいつものように、「機械として優れているか?」と「商品として魅力的か?」という2つの指標で採点してみると、2つとも「★★★★★」の満点を付けたい。

文/金子浩久

モータリングライター。1961年東京生まれ。新車試乗にモーターショー、クルマ紀行にと地球狭しと駆け巡っている。取材モットーは“説明よりも解釈を”。最新刊に『ユーラシア横断1万5000キロ』。

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