Editor’s Eye

2016.08.10


「スターバックス meets 江戸切子」
地域密着という新しい試みなのか

スターバックスの中でも墨田区内の店でしか買えないという“幻”のアイテムがあるというので、早々に取材してみることにした。そのアイテムは驚くことに3万5000円というスターバックス史上最高価格ではないかと思わせる高価なグラス<江戸切子>。それはもう美しく、しかもスターバックスカラーとも言えるディープグリーン。ディテールにもIDボックスがあったり、と凝りまくり。販売されている店舗も墨田区内の4店舗のみというローカル徹底ぶり。
なんで、このようなローカルコラボが実現したのだろうか。


JIMOTO madeという試み


「スターバックスは世界中で展開しているブランドで、どこの店舗へ行っても共通したスターバックスならではの体験を提供できることが強みだと考えていますが、今年でスターバックスの日本1号店が誕生して20年の節目でもあります。日本において、今後も店舗それぞれが地域に愛されていくためにも、もっと地元=日本と密着した活動はできないかと考えてスタートしたのが通称“JIMOTO made”というプロジェクトです」
その第一弾となるのが、この江戸切子というわけだ。
「まずは東京を舞台に調査を始め、行き着いた伝統工芸が江戸切子でした。今回の江戸切子は墨田区の職人さんに依頼をしたこともあり、”地元”のコンセプトにこだわるうえでも、墨田区内の店舗のみで販売させていただくことにしました」

プロジェクト担当の濱田氏、河上氏の想いが形になっていく過程を取材することにした。



#1:江戸硝子という素材そのものが伝統工芸


江戸切子のベースとなるのが、江戸硝子で作られる手吹きのグラスだ。向かったのは、江戸硝子の伝統を江戸時代から守る東洋佐々木ガラスの工場だ。高温で溶かされたガラスを職人が吹き竿に巻き取り、息を吹き入れて形作る。と書くと簡単だが、実際には高熱の工場で熟練の職人たちが黙々とグラス作りを続ける。特に江戸切子のためのグラスは外側に色ガラスを被せるという工程が加わるため難易度も極めて高い。この道20年のベテラン(伝統工芸士の資格も持つ)大山 宏一氏に伺った。



「とにかく、一定の重さ、一定の厚みを作るのが難しい作業です。それも職人の感覚で揃えなければならず、気を休めるところはありません。まるでスポーツの試合のような感覚ですね」
工場には意外なほど若い職人が多く(スターバックスで販売している江戸切子のガラスを製造するチームのリーダーはなんと女性!)、後継者不足に悩む伝統工芸の世界にも新しい流れが出来つつあるのが感じられた。
さて、吹き上がったグラスだが、重量をチェックされ更に検査の工程で厳しく選別される。1日に数十個がこのすべての工程をパスすることができるという難易度の高い作業なのだ。完成品(と言ってもカットされる前の状態だが)でも十分に美しいのには驚かされる。



#2:まさに職人芸!切子は手先の感覚で生まれる


仕上がった江戸硝子の色グラスは、次の工程である切子細工の工房へと送られる。それが墨田区で110数年の歴史を持つ廣田硝子だ。そこでも職人歴25年の名工が手作業でカットを施す。
「作業はすべて指先の感覚ですね。最初に決まった模様に合わせて割り出しという位置決めをしておきますが、カットはグラスの中から覗きながらですから勘というか経験で刻んでいきます」
名工と呼ばれる川井 更造氏は淡々と語る。



「硝子の性質を熟知すること。それに尽きますね。今回のデザインは決まるまで何度も打ち合わせを行いました。この中には江戸切子の伝統的な文様が三つ入っています。“七宝(しっぽう)”“八角籠目(はっかくかごめ)”“あられ”と三つ入れることはとても稀で、世界的なブランドと江戸切子という伝統工芸のミックスがとてもうまくいったと思っています」。廣田硝子会長廣田達夫氏は語る。



地域とそこに根付く伝統的なアイテムとのコラボレーションはまだ第一段階だ。これからどんな新しい試みが生まれてくるか。スターバックスというグローバルなブランドが、日本に登場して20年の今、また新しい関係が生まれてくるのかもしれない。ちょっと目が離せない取り組みだと思う。

(Text: Y.Nag)
(Photo: Yuuko Konagai)

東洋佐々木ガラス
http://www.toyo.sasaki.co.jp/
廣田硝子
http://hirota-glass.co.jp/
すみだ江戸切子館
http://edokiriko.net

スターバックス アイスコーヒーグラス
http://www.starbucks.co.jp/goods/mug/4524785275393/

外部サイト