世界ランキング1位でリオデジャネイロ五輪に挑む、バドミントン女子ダブルスの高橋礼華(26歳)&松友美佐紀(24歳)ペア。4チーム×4グループで行なわれる五輪本番のグループリーグでも第1シードとなって、グループAで世界ランク11位のオランダペア、16位のタイペア、22位のインドペアと対戦する。

 このグループリーグを1位で勝ち抜いて決勝トーナメント(グループリーグ上位2チームが進出)に駒を進めることができれば、最大のライバルとなる世界ランキング2位の中国ペア(於洋&唐淵渟)とは、順当なら決勝で激突することになる。

 高橋&松友が狙うのは、もちろん金メダル。そんな彼女たちにとって、大会前には追い風となる出来事があった。日本バドミントン協会の今井茂満理事が説明する。

「大会直前になって、五輪連覇を狙っていた中国の趙雷ウン&田卿ペア(世界ランク3位)の趙選手が、今回は混合ダブルスに専念し、女子ダブルスに出場しないことになった。これは、日本にとってかなり大きい」

 趙は女子ダブルス選手の中で「癸吋廛譟璽筺次廚噺世錣譴襪曚匹亮体麓圈その趙と田卿のペアは、前回のロンドン五輪で金メダルを獲得し、その後の世界選手権でも2連覇中という強豪だ。頂点を狙う高橋&松友ペアにとって、それほどの"難敵"がいなくなったことは、確かに相当なプラス材料となるだろう。

 代わって出場する世界ランク7位の駱インと駱羽の姉妹ペア(中国)も、一時は世界ランク1位になったことのある強敵だが、経験豊富な趙&田卿ペアと比べれば、その"壁"の高さははるかに低い。高橋&松友の、金メダルへの期待がますます膨らむ。

 実際、ここ最近の高橋&松友ペアは非常に安定した強さを誇っている。2011年11月の初めに世界ランキング10位になってからは、着実に順位を上げていって、2013年2月には世界ランク4位まで上昇。その後は常に4位以内をキープして、2015年4月、ついに世界ランク1位を獲得した。以来、昨年12月からの3カ月間は一時ランキングを落としたものの、その期間を除けば、ずっとトップの座に君臨しているのだ。

 振り返れば、ふたりがペアを結成したのは、松友が宮城県の聖ウルスラ学院英智高に入学して半年ほど経ってからの2007年の秋。それからは一気に頭角を現して、翌2008年の高校選抜で優勝し、夏のインターハイでも頂点に立った。さらに、初出場の全日本総合選手権でもいきなりベスト4入りを果たした。

 ただ当時は、「松友ありき」という印象が強かった。というのも、松友は小学生のときからシングルスで全国大会のタイトルを総なめにしてきた逸材。常に注目され、高校に入って高橋とペアを組んでからも、ダブルスだけでなく、シングルスでも数々の栄冠を獲得していたからだ。全日本総合選手権シングルスでも、高校3年生のときに準決勝まで進出。当時、日本の第一人者だった廣瀬栄理子を相手に"あわや"という勝負を演じた。

 一方、高橋も松友同様、小学校時代に全国制覇を果たしたトッププレーヤーだったが、中学時代にヘルニアを発症。高校時代は、持てる能力を存分に発揮できる状態にはなかった。

 そのため、ふたりが高校卒業後もペアを組んで戦っていくかどうかは、微妙なところだった。特に、松友が社会人1年目にシングルスの世界ジュニアで準優勝。輝かしい成績を残していただけに、松友がシングルスを優先すれば、ペア解消の可能性もあった。が、松友は高橋とのダブルスを重視。2012年ロンドン五輪の代表権獲得レースが始まった2011年春からは、ダブルスに専念するようになった。

 結局、ロンドン五輪出場はならなかったものの、強打の高橋とネット前のセンスが光る松友のペアはメキメキと力をつけていった。高橋も本来の力を取り戻し始め、ロンドン五輪以降、ふたりの勢いはさらに加速した。

 今井理事が再び語る。

「もともとふたりは、前衛で相手に球を上げさせるプレーがうまい松友がゲームを作って、松友が相手に上げさせた球を高橋が強打で決める、という戦い方をしてきた。それが、今もうまくはまっている。そのうえで、世界で戦うためには、やはりどちらかにパワーがないと通用しない。ロンドン五輪で結果を残した(銀メダル)藤井瑞希&垣岩令佳ペアも、垣岩のパワーがあった。高橋もそんなパワーを持っただけでなく、(そのパワーを)単発で終わらせず、何発も打ち続けられるようになった。それが、高橋&松友ペアが強くなった要因です。

 加えて高橋は、かつて弱点だったレシーブがうまくなって、しっかり相手コートの後方まで打ち返せるようになった。それによって、松友とのコンビネーションも完成されたように思う。また、松友も後方からでは厳しいものの、ハーフくらいの場所からなら、ポイントを決められるようなスマッシュが打てるようになった。その分、攻撃力がワンランクアップ。このペアにとっては、それも大きかった。あとは、粘りが増して、全体のレベルアップが図れたので、中国ペアに押し込まれることがなくなった」

 さらに今井理事は、「細かい部分で言えば、ショートサーブがすごく安定してきている」と言って、高橋&松友ペアが実力的には「金メダルに一番近い存在にいるのは間違いない」と太鼓判を押した。

「世界ランク2位の於&唐ペアも、昨年からの11大会では優勝が4回、2位が5回と安定した強さを見せている。それでも、3月の全英オープンと6月のインドネシアオープンの決勝では、高橋&松友が勝っている。そこでも、もう(パワーで)圧倒されるような感じもなかったですから。

 その他のペアも、これまでの大会で戦ってきている相手。戦い方の方針をしっかり決めて試合に臨めば大丈夫でしょう。これまで、相手の様子を見ようとして少し消極的に(試合に)入ってしまったときは負けることもありましたが、立ち上がりから集中して、やるべきことを最初からガチッと固めていけば、そう簡単に負けることはないと思います」(今井理事)

 中国ペアに限らず、第3シードのインドネシアのペアや、第4シードの韓国ペア、デンマークの長身ペアなど曲者は多いが、迷いと油断さえなければ、高橋&松友が負ける相手ではないだろう。

「昨年は世界選手権で敗戦し、松友のケガなどもあって苦しい戦いが続いた。でも、そこから立て直して五輪出場を決める、といういい経験ができた。それを本番につなげたい」と高橋。松友も「昨年の苦しい経験があって、今の自分たちがいる」と言って、五輪での活躍を誓う。

 グループリーグは現地8月11日にスタートし、15日から決勝トーナメント、18日に決勝戦が行なわれる。高橋と松友、ふたりの金メダルを目指した戦いが、いよいよ始まる。

折山淑美●文 text by Oriyama Toshimi