日本仕様の搭載エンジンは、「INGINIUM(インジニウム)」と呼ばれる最新の2L直4ディーゼルターボと、3Lスパーチャージャー付V6ガソリンの2種。

パワースペックは、前者が180PS/4000r.p.mと43.8kgm/1750~2500r.p.m、後者には340PS/6500r.p.mと45.9kgm/3500r.p.mの標準型と、380ps/6500r.p.mと46.9kgm/3500r.p.mのHP版がある。

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トランスミットは、全車8速ATにIDD(インテリジェント・ドライブライン・ダイナミクス)採用のトルクオンディマンド式AWDを組み合わせている。

これ、通常は後輪へ90%の駆動トルクを送るが、走行状況に応じて、それを最大90%以上前輪に移行できる4駆システム。

で、今回試せたは“普通のV6“とインジニウム仕様の搭載モデルでありました。

V6ガソリン版の試乗車は、255/50R20インチタイヤを履く35t R-Sport。L4ディーゼルは255/55R19を履いた20d Prestigeのご指定であります。

 

80%のアルミ材と2%のマグネシューム部材、残り18%が各種鋼板という構成のハイブリッドボディは、走り出した瞬間に判るほどボディコアにガッシリとした剛性感が漲ってる。おまけに、前後の軸荷重配分が50:50というスポーツカー並のバランスも効いているんだろう。

2t近い車重を全く意識させることなく、軸ブレしない滑らかさで走り出せる感触が、実に印象的だ。躾けの好い電動パワステの感触はもとより、シャーシにはトルクベクタリング・バイ・ブレーキング、インテリジェント・ドライブイン・ダイナミクス等、安定して止まる、曲がるを支援するための「寿限無の黒子」が緻密に配備されていて、それらが巧みに連携し合う事により、F-PACEに爽快な走りと弛まないフィット感をもたらしている。

脚の動きには、柔軟な関節に抑制感一杯の張りある筋肉が躍動している如きイメージが常にある。けれど、古典的なジャガーの猫脚とは最早次元の違うボディ体幹の強さが、無駄な多々良踏みを尽く吸収して不快や不安を操者に与えないのが、今様だな。

操作に呼応するインフォメーションが実に適切で、挙動を即座に掴めるから、とにかく積極的に走り込めるし、穏やかに走りたい時にも生きた路面の突然の変化に脅かされることが少ない。

試乗を通じて、「御者に極め付け忠実性の高い乗り物」という印象に終始した。

3Lの340PSと45.9kgm仕様エンジンは、スーパーチャージャーの奏でる勇ましいサウンドはさておき、全域に滑らかで応答性も素早い部類といった印象。力感自体も、走行状況に応じた緻密なパワー制御に加え、2t近いボディ重量もあってか、持て余すほどのものではない。

8ATの制御に委ね右足の感触で操る範囲なら、万事安心感に満ちた過不足ない心臓だ。もちろんダイナミック・モードやマニュアル・セレクトで、美味しいパワーやトルクの波を目一杯たぐり出せば、御望みの「豹変」も可能ではある。

そういう時も、件の黒子軍団が必死にあちこちで働いていてくれるから、いわゆる「意のままの運転」のまま、ハイアベレージのペイスを稼ぎ出すことができる。

方や、ディーゼル版のINGINIUMエンジンの秀逸は何より静粛性だろう。直噴のノイズレベルはオープンボンネット状態でも同等排気量のガソリン直噴に劣らない。

ディーゼルとしては異例に静かなアイドリングだ。走り出してスロットルを開けていく過程も、ノイズというより寧ろ心地よい部類のサウンドと表現できる類で、ネガなイメージに一切触らない。素敵だねぇ、これは。

惜しむらくは3点あり。

常用性面で感じる発進トルクの、やや薄い点。加えて、日本の一般道の常用域(40〜60Km/h範囲)において、パーシャルから加速体制に入る場合などに示される、ATシフトモードの不適応感、かな。

それに、試乗車に装着の19インチタイヤの感触がやや、粗い…。

先ず、アイドルから踏み込んだ時に感じさせるトルクの薄さは、2Lキャパのシングルターボ・ディーゼルのポテンシャルとしては未だ払拭しにくい宿命だろうから、このタメは覚悟して堪えられる範疇ではある。

走り出してしまえば加速は驚くほど滑らかで、文字通り広いトルクバンドを掴んでしまえば、寧ろ十分に力強く感じるから。

だけど、要するに1500rpm+の巡行領域からアクセルを踏み込んで加速を所望する場合などは、もう少々積極的に、かつ滑らかにAT側がトルクのボトムを補う制御をして欲しい、って感じ。

まぁ、そういう時はマニュアルでギヤを落とすか、市街地では燃費効率に目を瞑ってATモードを予め「ダイナミック」にして走ればいいって話ではあるけれど。

V6ガソリンに比べINGINIUMディーゼル搭載車、乗り比べると鼻先が軽く感じ、ワインディングでは身のこなしに優位性を感じさせる。のは魅力なのだけれど、19インチタイヤ装着の試乗車は若干だが、タイヤの縦バネ感が強い印象。舗装路面の状況によって、共振の収まりが悪かった点が惜しまれるところだ。

18インチや22インチ仕様は比較試乗出来なかったけれど、これだけ多彩なタイヤチョイスを可能としているわけだから、全方位に万全とは仲々いかないのかもしれない、けどね。

(鈴木誠男)

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