8月10日「やきとりの日」にちなみ、庶民の味発展の歴史を探ってみた

写真拡大

居酒屋の定番メニューに、「やきとり」をあげる人は多いのではないか。特にビールやハイボールがおいしいこの季節に、やきとりはぴったりのお供ではないか。「教えて!goo」
で、「やきとりで好きなもの」を聞いてみたところ、「一番は普通の塩+もも(普通の焼き鳥)です。これが美味しいお店は大体美味しいと思います」(kaduki_tさん)といった定番が好きという意見から、「結構いろいろ食べますねぇ。砂肝、皮、ネギマ、ハツ、なんこつ、塩よりはタレのほうが多いかな。でも、一番はツクネですね。タレより塩で食べることが多いですが、お酒がすすんじゃいます」(inositolさん)など、多くの意見が寄せられた。飲みの席以外でも、日本の庶民に広く愛されているやきとりだが、そもそもいつ頃から日本に登場し、どのような歴史を経てきたのだろう。やきとりのテーマパーク「全や連総本店東京」の名誉館長、はんつ遠藤さんに教えてもらった。

■やきとりが大衆食文化になるまで

普段何気なく食べているが、その歴史についてはあまり知られていない「やきとり」。まずはやきとりの起源について伺った。

「一般的には鳥肉を串に刺し、タレや塩をつけて焼いたものですが、起源を限定するのは意外に難しいですね。江戸中期の1785年頃、やきとり屋台が江戸に現れたとする説。明治後期に東京市中に現れたとする説。1923年の関東大震災後の焼け跡で発祥したとする説などがあるようですが。ちなみに、記述に串に刺したやきとりが出てきた最初の本は、江戸時代の1689年に出された『合類日用料理抄』と言われているそうです」(はんつ遠藤さん)

どうやら、世に出たのは江戸時代以降のようだ。しかし、我々がイメージするやきとり店が日本中で見られるようになるのは、もっと後のことだという。

「もともと武士たちが生活のために鶏を飼いはじめ、やがて養鶏業として確立されていきます。大転換期が訪れたのは昭和30年代、飼育方法を合理化し生産性を上げたブロイラーが出回ったことによります。価格が安定したブロイラーは、それまで高級だった鶏肉を身近な食材に変えました。そして、庶民の生活の中から『やきとり店』が登場。駅前などに進出し、会社帰りのお父さんたちが立ち寄る場所として定着してきました。これが一般的なやきとりの誕生といえるでしょう」(はんつ遠藤さん)

やきとりが庶民の味となった背景には、飼育法の革新による価格破壊が影響していたようだ。

■ご当地やきとりが大ブーム

次に、今話題の「ご当地やきとり」について聞いた。

「日本には、使用する肉の種類や部位、タレや焼き方などが異なる地域固有のやきとり文化(ご当地やきとり)が存在します。中でも『やきとり7大都市』が有名です。北海道美唄では、鳥の肉から内臓までさまざまな部位が一本の串に刺されています。間に玉ねぎがはさまれているのも他所とは違うところです。同じく北海道室蘭では、豚肉と玉ねぎを使い、洋ガラシをつけて食べます。また福島では、伊達鶏などを使った食べごたえのあるやきとりが定番です」(はんつ遠藤さん)

7大都市の2つが北海道にあったとは……。北海道にやきとりのイメージがなかったという人もいるのでは。

「埼玉県の東松山は、豚のカシラ肉などをピリ辛の味噌だれで、山口県の長門は、ガーリックパウダーと唐辛子を振りかけて食べます。また、愛媛県の今治は、厚い鉄板で鳥皮を焼く、串に刺さない鉄板やきとり、福岡県の久留米は、豚、鶏から馬肉まで何でも串に刺せばやきとりです」(はんつ遠藤さん)

ひと口にやきとりといっても、豚や馬の肉まで含む地域があるとは実に奥が深い。それにどれも個性があっておいしそうである。ちなみに、世界一長いやきとりは25.55mで、5月に東松山市で行われた「セカチョウ(世界一長いやきとり)」イベントで作られたものだという。

筆者はこの原稿を書きながら、ずっとやきとりのことばかり考えていた。馴染みの店でビールとともに、あれやこれやを注文するイメージもすでに沸いている。今宵、かつて贅沢品であったやきとりが、市民の口へ渡った喜びに思いを馳せながら、皆さんもやきとりを味わってみてはいかがだろうか。

●専門家プロフィール:はんつ遠藤
「全や連総本店東京」名誉館長。フードジャーナリスト。ラーメン、うどん、そばなどの麺料理のほか、ご当地グルメ、デパ地下、ファミレスなど総取材軒数は7000軒を超える。著書は24冊。その知識を生かして料理研究家としてレシピを紹介するなど、活動の場を広げている。

教えて!goo スタッフ(Oshiete Staff)