『超・箇条書き-「10倍速く、魅力的に」伝える技術』(杉野幹人/ダイヤモンド社)

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上司に仕事上の報告をすると「無駄が多い」とよく言われる。恥ずかしながら、原稿を確認してもらったときにもそう言われる。もっとひどいのが口頭での報告で、頭の中で話をまとめられず、途中から自分でも何を言っているのかよくわからなくなる。私は子どもの頃からそうだったので、自分の意見や出来事を伝えるのが上手い人たちのことを、いつもうらやましく思っていた。

伝え上手な人たちが持っている能力は何か。その答えは、箇条書きの上手さである、と本書『超・箇条書き-「10倍速く、魅力的に」伝える技術』(杉野幹人/ダイヤモンド社)の冒頭に書かれている。が、あまりピンとこないんですけど……。

 そもそも、箇条書きに上手い下手があるのだろうか。「箇条書きくらい誰にだってできる」というのが私の正直な感想だ。しかし、本書の著者・杉野幹人氏は「世界の最前線では、『短く、魅力的に伝える』ツールとして箇条書きが選ばれ、そして使われている」と語る。「箇条書きを笑う者は箇条書きに泣く」と。

 まず、本書のタイトルにある「超・箇条書き」とは、「『短く、魅力的に伝える』箇条書き。そして人を動かす箇条書き」のこと。伝えることを羅列化するだけの箇条書きに、次の3要素「構造化」「物語化」「メッセージ化」が加わったものを「超・箇条書き」と呼ぶ。

 1点目の「構造化」とは、受け取り手に全体像を一瞬で伝える技術。2点目「物語化」は、相手のことを考え、最後まで読み(聞き)通せるようにする技術のこと。そして3点目の「メッセージ化」は、相手の心を動かし、行動を起こさせるための技術である。

 以上3要素について、具体例をふんだんに用いて解説している。個人的に印象的だったのは、その解説の流れだ。読み進めると、章の冒頭で登場した例文が段階的に修正されていき、章の終わりで「超・箇条書き」が完成。改善の過程が丁寧なので、どこが悪くて、どう直せばよいかがわかりやすかった。

 また、序章「なぜ箇条書きが、最強のビジネススキルなのか?」にある、日本人の「伝え方」のクセに関する記述も興味深い。「日本では他国よりも意見と人格が同一視されがち」で、たとえば会議の場で意見を否定された日本人は、自らを否定されたと感じ、相手を避けるようになるという。だから日本では率直な意見が成果につながりにくい。率直すぎ、伝わりすぎる箇条書きが、日本で充分に使われてこなかった背景に、日本人の断言を避ける傾向が少なからず関係しているようだ。

 とはいえ、現代は情報過多の社会である。情報が多くなればなるほど、それを取捨選択する価値は高まり、ニュース配信サイトが増えた一方で、まとめサイトの需要も増えたことを著者は指摘している。だからこそ「短く、魅力的に伝える」必要があるのだ、と。

「熟練したコンサルタントであれば、箇条書きで伝えないときもストーリーラインは必ずつくる」のだそうだ。ストーリーラインとは、これから伝えたいことの流れを指す。絵やグラフを交えたスライドや企画書、会議の場での発言でも、何かを伝えるときは、まず箇条書きで流れを整理するという。

 つまり、私に足りなかったのはこれなのだ。そもそも何を伝えたいのか、何を伝えなくてはならないかをはっきりさせずに話し始めたり、メールを打ち始めたりする。頭の中で情報が整理し切れていないから、話が尻切れトンボになって、途中でわけがわからなくなる。

 たかが箇条書き、されど箇条書き――私も心のどこかでは、箇条書きを笑っていたのかもしれない。「箇条書きを笑う者は箇条書きに泣く」とは、まさにこのことだ。

文=上原純(Office Ti+)