夢中になると、時間がたつのはあっという間...

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夏休みで帰省したり海外旅行に出かけたりする人も多いだろう。飛行機や車の長時間移動で気を付けたいのは、肺血栓塞栓症。いわゆるエコノミークラス症候群だ。

最近では、家の中にいても起こることがわかった。

長時間テレビを見ている人は危ない

肺血栓塞栓症は、長時間、脚を動かさずにいることで、太ももの奥にある静脈に血栓(血のかたまり)ができる。

その一部が、血流にのって肺まで飛んで、肺の血管を詰まらせてしまう病気だ。息苦しくなったり、胸が痛くなったり、重症化すると心肺停止することもある。

エコノミークラス症候群は、その名の通り、国際便の航空機でよく起きることが知られているが、車中泊をする場合にも発生しやすい。2004年に発生した新潟中越地震や、2016年4月の熊本地震では死者が出るなど、問題になった。

なりやすいのは、40歳以上で、以前に静脈血栓を患ったことがある、脚にケガをしている、がんを患っている人など。また、若くても妊娠中、出産後の女性は注意が必要だ。

長時間移動や車中泊をしていなくても、エコノミークラス症候群で死亡するリスクはあるというのが、最近の研究で明らかになった。家の中で1日5時間以上テレビを見る人は、肺血栓塞栓症で死亡するリスクが高くなるという。

見る時間が増えると死亡リスクが上がる

研究は、大阪大学大学院医学系研究科社会医学講座(公衆衛生学)の磯博康教授らの研究グループによるもの。7月27日に米国心臓病学会の学術雑誌「Circulation」電子版に掲載された。

研究グループは、1988年に開始された日本人の生活習慣に関する調査に協力した40〜79歳の8万6000人を対象に、88〜90年に1日あたりのテレビ視聴時間や生活習慣などについてアンケート。その後、20年間追跡調査を続け、2009年までに肺塞栓症で死亡した59人について分析した。

その結果、肺塞栓症による死亡リスクは、テレビ視聴時間が1日2.5時間未満の人に比べて、2.5〜4.9時間の人は1.7倍に。5時間以上の人は2.5倍になった。2時間につき、死亡リスクは40%増加するという。

座り過ぎによる健康への問題を研究している早稲田大学の岡浩一朗教授に、予防法を聞いた。

「できれば30分に1回、少なくとも1時間に1回は立ち上がって動いてください。太ももの筋肉(大腿四頭筋)を動かすことを意識して、テーブルの上や椅子に手をついて軽くスクワットを行うとよいでしょう。移動中で立ち上がれないときは、座ったままかかとを上げ下げしたり、ふくらはぎをもんだりするだけでもOKです」

岡教授によると、座り過ぎはエコノミークラス症候群だけでなく、心筋梗塞や脳梗塞、糖尿病、がんなどのリスクを高める という。

「座り過ぎはタバコ並みに体に害をもたらすとも言われています。毎日の座り過ぎは、たまの運動では解消されません。自分は大丈夫と思っていても、意外と座っている時間は長いもの。こまめに動くことを意識することが大切です」

最近はオリンピック観戦に夢中になり、いつも以上にテレビの前に座りっぱなしになっている人も多いのでは? 思い当るなら、今すぐ立ち上がろう。
[監修:岡浩一朗 早稲田大学スポーツ科学学術院教授]

参考論文
Watching Television and Risk of Mortality From Pulmonary Embolism Among Japanese Men and Women: The JACC (Japan Collaborative Cohort) Study
PMID: 27462056  DOI: 10.1161/CIRCULATIONAHA.116.023671

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