攻勢に出ていながら得点を奪えずにいるうち、相手にワンチャンスを生かされて失点。試合を優位に進めていたチームが、そのまま逃げ切られて負けてしまうという展開は、サッカーにはありがちだ。

 リオデジャネイロ五輪グループリーグ第2戦。コロンビアと対戦した日本は、まさにそんな"サッカーあるある"にハマりかけていた。

 だからこそ、この引き分けは大きかった。サッカーにおいて典型的な負けパターンをはねのけて得た勝ち点1は、日本を死の淵からよみがえらせたばかりか、国際経験豊富とは言えない選手たちを、ひと回り成長させたに違いない。

 前半の日本は、ほぼパーフェクトな試合内容だったと言っていい。

 高い位置から相手にプレッシャーをかけ、中盤でボールを奪うと、テンポよくパスをつないでコロンビアゴールに迫った。しかも、初戦のナイジェリア戦のように、攻撃が縦に急ぎ過ぎることもなく、一度2トップがボールを受けてタメを作ってからサイドに展開するなど、全体の押し上げを図って厚みのある攻撃ができていた。キャプテンのMF遠藤航が振り返る。

「ナイジェリア戦の反省としては、相手の出方を見過ぎたというか、構えてしまったところがあった。特に2−2になったあと、ちょっと守備的になりすぎた。なので、今日は相手どうこうより、自分たちがアクションを起こしながらサッカーを進めていこう、と。チーム全員が前から(プレスに)行く意識を持ってやれたと思うし、主導権はしっかり握れていたと思う」

 しかし、そんな日本の攻撃に唯一欠けていたものが得点だった。一方的、と表現してもいいほどに数多くのチャンスを作りながらも、日本はなかなか待望の得点が奪えなかった。

 こうなると、ある程度サッカーを知っている人なら誰でも、少なからず嫌な予感がしていたはずだ。案の定、日本は後半に入っても立ち上がりから攻め続けたものの、逆にコロンビアにワンチャンスを生かされ、59分に先制点を許してしまう。MF矢島慎也が語る。

「その(チャンスを逃していると相手にチャンスを与えてしまう)典型的な流れ。前半だけでなく、自分を含め、後半にもいくつかチャンスがあったが、なかなか点を取れずにいた。そこで失点しないことが大事だったが、失点してしまった」

 この時点ですら、すでに「ほらね」と言いたくなるような展開だったにもかかわらず、そのわずか6分後に、しかもオウンゴールで追加点を与えたのでは、もはや勝負あり、のはずだった。

 ところが、日本はここから怒涛の反撃を見せる。直後に鮮やかな中央突破からFW浅野拓磨のゴールで1点を返すと、74分には連続攻撃からMF中島翔哉が技ありのミドルシュートを決め、同点に追いついたのである。

 前の試合では大量失点して敗れ、この試合では優勢に試合を進めながら、チャンスを生かせず相手に先制点を許してしまう悪い流れ。抗(あらが)いようのない負の濁流にのまれても不思議はなかったが、選手たちはどうにかギリギリのところで踏みとどまった。遠藤が力強い口調で語る。

「2失点してしまったが、そこはナイジェリア戦の反省も含めて、みんな切り替えられた。パワーを持って前半からプレッシャーをかけて、自分たちのリズムでサッカーをしていた中で、もうワンパワー出して2点追いついたのは次につながると思う」

 もちろん、この引き分けが100%喜べる結果でないことは言うまでもない。

 グループリーグ突破の可能性を高めるためには勝ちたい試合だったし、実際、内容的にも勝ち試合。それを考えれば、残念な結果ではある。

 また、優位に試合を運びながらワンチャンスを生かされて失点したうえに、すぐに2点目を献上したのもいただけなかった。

 結果的に、DF藤春廣輝のミスによるオウンゴールではあったが、「失点したことで全体が慌てて前掛かりになってしまい、ショートカウンターを受けてしまった」とDF室屋成が語ったように、チームとして「どれだけ最少失点でいけるか。2失点目を許さないことが大事」(室屋)だった。

 さらに言えば、2−2に追いついたあと、十分勝ち越せるだけのチャンスがあっただけに、試合をひっくり返せなかったのももったいなかった。90分の中には、ネガティブな要素がいくつもあった。

 とはいえ、試合内容に関して言えば、ナイジェリア戦よりは数段よくなっていることは間違いない。

「攻撃の形というところはよかったと思うので、今日みたいな内容を続けながら、失点をせずに、チャンスが巡ってきたときにしっかり先制点を取るという展開に持っていきたい」

 遠藤がそう話すように、勝って勝ち点3を手にして最終戦に臨めれば文句なしだったが、試合内容には選手たちも手応えを感じている。同じ勝ち点1でも、攻めあぐんだ末に0−0で引き分けるよりは、自信を得るという意味でも、勢いをつけるという意味でも、価値の大きい勝ち点1だったのではないだろうか。

 ただし、コロンビア戦に引き分けたことで、日本の自力でのグループリーグ突破の可能性はなくなった。

 グループリーグ最後の日本vsスウェーデンと同時刻に始まるナイジェリアvsコロンビアで、コロンビアが勝ってしまえば、日本はスウェーデンに勝ってもグループリーグ敗退が決まってしまう。

 だが、逆にコロンビアが負けか引き分けならば、日本は勝ちさえすれば決勝トーナメント進出が決まる。また、コロンビアが負けた場合、日本はスウェーデンと引き分けても決勝トーナメント進出の可能性が十分に残る。

 手倉森誠監督は、自分たちが置かれた状況を楽しむかのように語る。

「オレたちはそれくらいの立場。アジアではふたつに入って(アジア最終予選で決勝進出し、3位決定戦に回ることなくリオ五輪出場が)決まったが、世界ではギリギリの勝負を覚悟しないとやっていけない。いい修羅場が経験できている」

 そして、指揮官は笑顔でこう続ける。

「(決勝トーナメント進出の)可能性を残した分、何かしでかしそうな雰囲気がある」

 この日の試合を見る限り、手倉森監督の見立ては、決して贔屓(ひいき)目ではないように思う。

浅田真樹●文 text by Asada Masaki