『本をサクサク読む技術 長編小説から翻訳モノまで』(齋藤 孝/中央公論新社)

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 「積ん読」という言葉をご存じだろうか。ネットで調べてみると「本を買うだけ買って、読まずにそのままにしておくこと」らしい。どうやら読書家あるあるのようで、いつか読もうと買って、そのまま「積ん読」状態になることは多々あるようだ。せっかく本を購入したのに、読まずにホコリを被っているのはもったいない。

 そこで『本をサクサク読む技術 長編小説から翻訳モノまで』(齋藤 孝/中央公論新社)を紹介したい。本書から何かヒントを学べれば、読書家たちの困ったあるあるが解決できるのではないだろうか。

■読み通すことにこだわるな

 本書は、読書家でもある教育学者の齋藤 孝氏が様々な本を読破するコツを紹介している。どんな奇怪な技を紹介してくれるのだろうと思っていたら、なんと「無駄に読み通す必要はない」と書いてある。確かに本をまるまる読み通すのは大変なエネルギーと時間を要する。このために買った本が読めない「積ん読」状態が生まれるわけだ。したがって、自分が必要で知りたい知識だけでも抜き出すことができれば、それは「読了」と見なしていいという。全体の2割読めたら、もしくは誰かにその書籍のことを説明できれば十分というわけだ。ずいぶん思い切っていて、なんともったいないと思う方もいるだろう。

 ただ、本書の極意は、1冊の本だけを「2割読書」するのではなく、たった2割しか読まないからこそ何冊もの本を一気に購入して一気に読み進めることができることだ 。たくさんの本と出会って、たくさんの知識を吸収するには、人生はあまりに時間が足りない。そのための「2割読書」だ。齋藤氏がいうには、読書家と呼ばれる人ほど、読み通すことにこだわっておらず、より多くの本と出会い、エッセンスだけを片っ端から吸収しているという。

■長編小説は「シナリオ読み」で読破せよ

 「なんだか面白そうだけど…ぶ厚い…」。そんな小説はたくさんある。これまた「積ん読」の要因になりやすい。だが、これも齋藤氏直伝のサクサク読む読書術がある。それが「シナリオ読み」だ。すなわち、カギ括弧のついた会話だけを拾って読んでいくのだ。長編小説では、作者が登場人物に味わい深い心理描写や情景描写をさせることがある。しかしそれは「くどい」「まどろっこしい」「ストーリーが先に進まない」という弱点を生むことにもなる。よって、登場人物の人間関係が分かり、感情が表れやすく、何より読みやすい会話部分だけを拾って読んでしまえばいいという。

 もちろん、それだけでは内容が分からない可能性もあるので、その前後のストーリーを想像して補ったり、分からない部分の会話前後だけ、会話以外も読んでみたりするといいようだ。「なんと不真面目な」と思われそうだが、「積ん読」回避はもちろん、長編小説を読むハードルも下がる。

■本を買ったら直ちに喫茶店へ

 読みたいモチベーションが一番高いのが、本を買った直後だ。これを逃すと「積ん読」になる危険が一気に高まる。つまり「本を買ったら直ちに喫茶店へ行け」と齋藤氏は言う。時間があまりないという方は、1冊につき20分の制限時間を設けるといいらしい。パラパラとめくりながら、面白そうなところに目星をつけて、何が書いてあるか把握する。この作業なら3冊買っても1時間で済む。そして自宅へ帰って、その本をまた開く。一度目を通しているので、さっとその世界へ飛び込むことができ、効率的な読書ができるという。

 本は、誰かの知識を手っ取り早く学べる素晴らしい道具だ。本書を機会に、もう少し頭の中に知識をつめこんでみてはいかがだろうか。

文=いのうえゆきひろ