だが、まさにそこからアジア最終予選でも見せた「反発力」が発揮された。

 1分後に大島→南野→浅野とつないで鮮やかなゴールで1点を返すと、「GKの位置を見ていて狙った。打った瞬間に入ると思った」と言う中島が右足で豪快なミドルシュートを叩き込む。その後も大島を中心に軽快にパスをつないでコロンビアを翻弄する日本の攻撃が、スタンドを埋めたブラジル人の観客を魅了した。日本人サポーターの「ニッポン!」コールに合わせてブラジル人の観客も「ジャパン!」コールを連呼。その大合唱が日本人サポーターより圧倒的に多いコロンビアサポーターの「コ・ロン・ビア!」コールをかき消していく。

 93分、南野のフィードに抜け出した浅野が後方からのボールを巧みな胸トラップからシュートに持ち込んが、これはGKがキャッチ。その直後に引き分けを確定させるホイッスルが吹かれた。亀川諒史(アビスパ福岡)を右サイドバックに送り込んでサイド攻撃を強めたが、最後のひと押しができなかった。

「モチベーションビデオや『日本の魂を示そう』という俺の言葉もあって、初戦は大きなものを背負わせすぎた。だからこの試合では、『仲間を信じて助け合おう』、『まずこのチームの力を示そう』と。それができて初めて日本の力を示せるんだと」

 こうした指揮官のアプローチによって、わずか2日間でメンタル面を回復させて臨んだコロンビア戦。前半は「攻撃的な守備」で応戦し、互角以上の内容でゲームを折り返すことに成功した。

 そして後半、大島と南野のダブル投入で「2点取るプランはあった」という指揮官の狙いどおりに流れを一気に手繰り寄せると、1点を返したあとはコロンビアに決定機を一度も許さずに2点目を奪取。追い込まれてからの「反発心」をしっかりと発揮してみせた。90分を通じて狙いどおりの戦いはできた。あの二つのミスだけを除いて――。

 試合を追うごとに成長していったアジア最終予選と同じように、このオリンピックでも2試合を終え、大きな成長の跡を見せている。その成長の物語が、あと1試合で終わってしまうのはもったいない。現在、日本はグループ4位。決勝トーナメント進出の命運は、ナイジェリア対コロンビアの結果に委ねられている。この試合でコロンビアが引き分け以下に終わらなければ、その先はない。この状況にも「世界でギリギリの修羅場を経験していないチームに、いい修羅場が来ている。他力本願だけど、可能性を残したことで何かしでかしそうな状況になった」と指揮官は微笑む。コロンビア戦のような内容でまずはスウェーデンを叩き、吉報を待つしかない。

文=飯尾篤史