コロンビア戦で手倉森ジャパンが見せた「反発心」…指揮官のメンタル回復策と想定外だった二つのミス

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 リオデジャネイロ・オリンピックではスターティングラインナップがキックオフのおよそ30分前に発表される。だが、それよりも早く選手たちはピッチに姿を現し、スタメンとサブに分かれてウォーミングアップを始めるため、その光景から公式発表より前にその日のスタメンが分かる。

 コロンビア戦前に双眼鏡でスタメンと思われるフィールドプレーヤー10人の姿を確認していくと……大島僚太(川崎フロンターレ)と南野拓実(ザルツブルク)の姿がない――。

 ナイジェリアとのグループステージ第1節で好パフォーマンスを見せた攻撃のキーマンが二人ともスタメンから外れ、ミスを連発したDF陣にメスが入れられることはなかった。

「5失点したからディフェンスラインにテコ入れして、4点を取れたから中盤は変えなくていいかな、と最初は考えたんだ」

 試合後にそう明かした手倉森誠監督は、「でも」と言って続けた。

「5失点した責任を押し付けるような交代はしたくない。自信を回復させたいなと。ただ、前から取りに行きたいと思った時に、90分出場した選手は後回しにする(途中出場させる)プランを今日は選んだ。GKだけは変えたけど、クシ(櫛引政敏/鹿島アントラーズ)にも『自信を回復させるチャンスを絶対に与える』という話をした」

 そうした指揮官のマネジメントに対して右サイドバックの室屋成(FC東京)が言う。

「正直、次(コロンビア戦)は出られないかなって思ったりもしたんですけど、それでもテグさんは自分を使ってくれた。ここでまた変なパフォーマンスを見せたら、テグさんを失望させてしまうと思ったし、使ってくれたテグさんに感謝しながら、ここで絶対に信頼を取り戻そうと思ってプレーしました」

 おそらくそれは、ディフェンスラインの選手たち全員に共通する思いだったことだろう。テオフィロ・グティエレスやドルラン・パボンら強力なアタッカーを擁するコロンビア相手に、日本は終始強気な高いライン設定で応戦していく。

 前線に入った興梠慎三(浦和レッズ)と浅野拓磨(アーセナル)もコロンビアのディフェンスラインに積極的にプレッシャーを掛けていく。指揮官が前日会見で宣言していた「攻撃的な守備」、「攻撃的な精神」は前半、確かに見て取れた。

 この「攻撃的な守備」と「攻撃的な精神」を分かりやすい形で具現化していたのが、ボランチに入った19歳の井手口陽介(ガンバ大阪)だった。2015年7月のコスタリカ戦以来、約1年ぶりに遠藤航(浦和)とボランチを組んだチーム最年少は、南米の選手を思わせるほどガツガツと激しく敵のボールホルダーにアプローチし、その勢いのまま攻撃に参加する。結果、日本の思惑どおりの展開でスコアレスのままハーフタイムを迎えた。

 ところが後半に入った60分、その井手口のミスで先制されてしまう。「後ろにトラップするかなと思って先読みして行ったら、そのまま前を向かれてしまって。僕の判断ミスです」と井手口が言うように、マークしていたグティエレスにクルリと入れ替わられ、ゴール前への進入を許してしまったのだ。

 すかさず、手倉森監督が動く。呼び寄せたのは、大島と南野だ。

「(監督から)『守備から入って後半にいく』という話を事前にされていた」と大島が言えば、「点を取って来いと言って送り出された」と南野は言う。反撃の準備は整ったはずだった。

 だが、痛恨のミスはその時に起こった。

「本当に覚えていないくらいの感じで、クリアしようと思った時には足に当たって……」

 相手のシュートをGK中村航輔(柏レイソル)が防いだリバウンドが藤春廣輝(G大阪)の足に当たってゴールラインを割ってしまう。攻撃のスイッチを入れた瞬間に喫した痛恨の2失点目――。