【レガシィ アウトバック試乗】クルマ趣味人が見る“スバルの旗艦”の魅力とは?

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いささか旧聞に属しますが、2014年にフルモデルチェンジを受けたスバル「レガシィ」の詳報に接して、「うへぇ…」と思ったスバルファンの方は多かったのではないでしょうか? 先代に当たる5世代目でさえ「デカッ!」と感じていたのに、ニューモデルはさらにボディを拡大したのですから。

6世代目のレガシィは“シャコタカ”ワゴンことクロスオーバータイプの「アウトバック」と、セダンボディの「B4」という2タイプで展開されます。市場の反応を予想してか、かなり早い段階から「新しいレガシィはアメリカ向けに開発される」、「日本市場向けには『レヴォーグ』という新型ワゴンが投入される」というニュースが流れていましたから、先達の遺産たる「ツーリングワゴン」が消滅したことに関しては、比較的冷静に受けとめられたようです。

とはいえ、「アメリカ市場に取り込まれると、スポーツカーは牙を抜かれ、実用車は水ぶくれして個性がなくなるんだよな」と毒づいた人もいることでしょう。ワタシは毒づきました。

ところが、アウトバックとB4が国内で販売され、実際に路上で見かけるようになると、「ちょっといいな」とつぶやくこともあるのですから、人間というものは…いや、ユーザーというのは勝手なものです。

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 ■「レヴォーグ」や「フォレスター」にはないアウトバックの美点は?

現行アウトバックのボディサイズは、全長4815(先代ツーリングワゴン比プラス25)×全幅1840(同プラス60)×全高1605(同プラス70)mm。寸法の拡大を持て余すところなく、いい意味で“アメリカンにおおらか”な雰囲気を醸し出しています。

全長が延びているにもかかわらず、ホイールベースはなぜかマイナス5mmの2745mmですから、相対的に前後のオーバーハング(車輪より外側の部分)が大きくなった。それがかえって、見る人にクラシカルな印象を与えるのかもしれません。一方、ボディ下部を黒い樹脂パーツで囲い、(天地も含めて)あまりに間延びして見えることを防いでいます。

日本市場向けのグレード構成はシンプルで、ベーシックなアウトバック(318万6000円)と、同リミテッド(345万6000円)の2種類。今回試乗したのは後者で、本革シートがおごられ、18インチホイールを履き、“スタブレックスライド”と名づけられた特別なショックアブソーバーを装着しているのが、ベーシックグレードとの大きな違いです。

運転席に座ると、室内が広い! 特に横方向に余裕があります。メーターまわり、センターコンソール、そして、シフトレバーまわりと、総じてシンプルにまとめられているのがいいですね。試乗車はブラック内装でしたが、アウトバックとB4は、2015年9月に一部改良を受けており、その際、アイボリー内装が設定されました。アイボリーを選べば、より瀟洒で、さらに広く感じられるのではないでしょうか。

後席も十分なスペースが取られ、頭上、膝前とも、文句ありません。後席向けのエアコン吹き出し口に加え、左右シートヒーターまで備わります! 背もたれは5段階にリクライン可能。本気で使えるリアシートですね。もちろん、背もたれを前方に倒し、ラゲッジスペースを広げることもできます。

荷室容量は559リッター。床下には区画整理された収納スペースが設けられ、例えば、巻き取り式のトノカバーなどをキレイに収めることができます。

床下収納への荷物出し入れ中には、樹脂製のかぎ爪でフロア手前を持ち上げたまま固定できるので、作業がしやすい。細やかな気遣いです。

細やかな気遣いといえば…、上級グレードのリミテッドは、ボタンひとつでリアハッチを開閉できる“パワーゲート”を備えるのですが、なんと、リアゲートが止まる高さを任意に設定できるのです! これなら、小柄な人や子供たちが、毎回腕を伸ばして背伸びし、ボタンにタッチしなくて済みます。実用的でありがたい装備です。

いざ走り始めると、2.5リッター水平対向エンジンが低いサウンドを発します。最高出力175馬力/5800回転、最大トルク24.0kg-m/4000回転。昨今は、ダウンサイジングされた小排気量ターボ車に乗る機会が多いので、2.5リッターのNAエンジンがやけに大排気量(!?)に感じられます。

スバル自慢の“SI-Drive”が「I」モードに入っていると、動力系が燃費重視に傾きすぎるせいか、人によっては「穏やかすぎる」と感じるかも。その場合、迷うことなく「S」モードに設定すると、グッと出足や加速が良くなるので、1580kgの車重を意識することなく使いやすくなります。

リミテッドの足まわりには、同グレードの特典としてスタブレックスライド・ダンパーが採用されました。これは、ショックアブソーバー内のピストンスピードが遅い時には、減衰力を早めに立ち上げてハンドリングを向上させ、逆に速い時には、減衰力の立ち上がりを従来よりも遅くし、入力をいなすよう工夫されたもの。乗り心地とハンドリングの両立を図ったデバイスです。

どこまで効果があるのかは、ちょっと判別しかねますが、アウトバック リミテッドの乗り心地は、内外装から予想するよりは硬め。意外とスポーティにセッティングされています。おそらくスバル内には、ココを下回ってはいけないという“スポーティの基準”といったラインがあるのでしょうが、アメリカンテイストなアウトバックがすっかり気に入ってしまった身には、少々スポーティに過ぎる、と感じました(個人の感想です)。

デビュー前は、さんざん「スバルともあろうメーカーが、アメリカンマーケットに日和ってしまって…」とくさしてたくせに、実車に乗ると「もう少し大きく、ゆるやかにロールさせた方が“らしい”のになぁ」などと考えているのですから、ホント、ユーザーとは勝手なものです。いやぁ〜、クルマってものは、実際に乗らないと分かりませんね(言い訳)。

アウトバックは、先の一部改良で“アイサイト”による前方検知にプラスし、レーダーシステムによって後方を監視できるようになりました。前後左右、全周をチェックして、死角に他車が入ったり、車線から逸脱しそうになったりすると、ドライバーに注意を促します。

また“ハイビームアシスト”の採用によって、ヘッドランプのハイ/ローを自動で切り替えることも可能です。

オプションの“ハーマンカードンサウンドシステム&SDナビゲーション”を装着している場合、iPhoneのSiriと連動し、ステアリングスイッチの発話ボタンと音声入力によって、ナビを操作できるようにもなりました。便利なだけでなく、運転中の視線移動を減らしてくれる、隠れた安全機能でもあります。

国内市場では、あまり注目されることのないアウトバックですが、スバルのクルマらしく、着実に進化を重ねています。レヴォーグや「フォレスター」といった主力車種と比較すると、フラッグシップらしく高価なこともありますが、その販売台数は3分の1から4分の1。

でもそれって、クルマ趣味人にとって悪いことではありません。アウトバックには、乗ってみないと、そしておそらく所有してみないと分からない、懐の深い魅力がありそうです。「そうか、その手があったか!」と、会う人、乗せる人ごとに感心させるクルマとなるに違いありません。

「アメリカンに大きくなりやがって」と好意を抱きかねていた人ほど、実車に向き合うとアウトバックを見直すことになるはず。ちなみにソースは、ワタシです…。

<SPECIFICATIONS>
☆リミテッド
ボディサイズ:L4815×W1840×H1605mm
車重:1580kg
駆動方式:4WD
エンジン:2498cc 水平対向4気筒 DOHC
トランスミッション:CVT
最高出力:175馬力/5800回転
最大トルク:24.0kg-m/4000回転
価格:345万6000円

(文&写真/ダン・アオキ)

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