■連載/カーツさとうの週刊★秘境酒場開拓団

週刊秘境酒場★お役人の皆様が節約呑みにご愛用の立ち呑み『H』

お役人の皆様が節約呑みにご愛用の立ち呑み『H(仮名)』の評価

オヤジス度    ★★
エルドラ度    ★★
オヤジナリティー ★★

 今回は、書いてそうでほとんど書いてなかった新橋の呑み屋

 ほとんど書いてないっていうのにはワケがある。

 世間で新橋というと“サラリーマンの聖地”とかいわれてて、安い呑み屋だらけみたいなイメージがあるかもしれないが、オレの経済レベルでいうと、決して安い店が多いってワケじゃない。正直いって、平均的には高いような気すらする。

 そりゃそうですよ。新橋で呑んでるサラリーマンのみなさんの職場考えてみなさいよ。すぐ近くは虎ノ門の官庁街ですよ。安定と高給でお馴染みのみなさんが、呑みに行くような街なんですよ。そりゃあちょっとくらい高くたってなんの不思議もない。

 オレみたいな下賤の民にいわせれば「お役人様〜!」どころか、

「お代官様ぁ〜!!」

 みたいな人が飲み歩いてる街ですよ。簡単にいうと“サラリーマンの聖地”というより“ホワイトカラーの聖地”ですね。

 だから呑んでる連中にアンケートみたいのを新橋でよくやるっていうのも、答える人が安心っていうのがあるんだと思うよ。酔ってもそこはホワイトカラーみたいな。

 あんな酔っぱらいアンケート、蒲田だとか赤羽だとかでやったら大変なことになっちゃうと思うもん。「今、政府に期待することは?」なんて質問されても、いきなり、

「女抱かせろー!!」

 だ、

「やりてェ〜!」

 だ、そんな惨状が目に浮かびますよ。逆にテレビカメラに上がっちゃってなんも話せないとかさ。

 で、新橋といえばよく話に出てくるのが烏森口(山手線でいうと内側の出口)のニュー新橋ビル。ココの地下の飲食店街の呑み屋も安そうで高いんだよね、汐留口側の新橋駅前ビルは、けっこう安いけど。

 しかし、そんなお値段高めのニュー新橋ビルの地下にも、一軒だけズバ抜けて安い店がある。

『そこにジャンバー酒場の香りはない!!』

 それが立ち呑みの『H(仮名』』だ。新宿線の大島にある(ちょっと前までは西大島にあった)これまたバカ安いことで有名な立ち呑み『B(仮名)』の姉妹店らしい。

 店内は入ると左右の壁沿いにタチノミカウンター、中央にいくつかの立ち呑みテーブル。奥が商品受け渡し用のカウンターになっててその奥が厨房。

 しかし立ち呑みといってもさすが新橋は客層が上品ですな。ちゃんとしたビジネススーツの方が多いし、女性のグループ客なんてのもいて、ジャンバー酒場感はゼロである。Tシャツ短パンのオレなんて逆に異端ですらある。あと、一人客が少ない!

 一人でただただ、

「オレはアルコールが摂取したいんだ!!」

 という感じの客がまったくいない!! みなさん優雅に談笑しつつお酒に興じているその光景は、日本の立ち呑屋の良さはしっかりありながらも、ロンドンの立ち呑みパブのような印象すら受ける、行ったことないけど。

 さて! 問題はそのお値段。飲み物はほとんどが300円! 角ハイボールもサワー系も焼酎も、そして生ビールまでもが300円!!  

「生ビールが300円って、そりゃアンタ発泡酒でしょ?」

 と思うかもしれないが、メニューにはちゃんと『サントリー ザ・モルツ』と明記してある。これが中ジョッキでこの価格というのは、ビール好きにはたまんないかもしれない。

 なにしろ今急に思い出したんだけど、モルツってショーケンがCMやってたんですよ。「うまいんだな〜、これが」っつうヤツ。お役人と対極にいるようなショーケンの宣伝してたビールがお役人に愛飲されてるんだな〜。

 でもオレが頼んだのは角のハイボール。現金引き換えで現物をもらうと、カウンターにレモンスライスが置いてある。300円でレモンも入るっていうのが素晴らしい!!  

 とにかく新橋では信じられないくらい安いですよ。

 そしてもうちょっと高額のプレミアムな酒もあるんだけど、それがまた信じられないくらい安いのだった!!

『お代官もビックリなプレミアムハイボールの超価格!』

 地酒は500円。ホッピーセットが500円っていう、ここらは驚かないんだけど、すごいのが山崎や白州、知多といったウイスキーのハイボールが400円ってヤツ。いや〜これは安い! ちょっとビックリした。まぁビックリしたっつっても、オレなんかだと、

「同じアルコールだろ!」

 つって300円の角ハイボールを頼んじゃうけど、虎ノ門勤めの皆様は、いっちゃうのかね400円のヤツ!

「どうせ定年になっても厚生年金があるぜ!!」

 とかいって。

「とはいえ厚生年金も安くなってるから、この店来てんだぜ!!」

 ってヤツですかね。

 そんなことはどうでもいい。つまみもほとんどが300円。ホワイトボードに書いてあるんで、色々と日替わりもあるんだろうけど、オレがいった日は『カキフライ』『八宝菜』『まぐろの冬瓜煮』なんていう「300円でもいいの?」的なヤツもあれは、『フライドポテト』『ネギメンマ』といった「立ち呑みならば妥当に300円!」とはいうヤツもある。

 でオレはそんな中から、なんかパリポリしたのが喰いたくって『うり漬』なんていう、300円妥当シリーズの一品を頼んじゃったんだけど、いや〜うまかった! うりの漬物っていったら雷干しに代表されるように東京の漬物だからね。それを新橋で食べながら安酒を呑むっていうのが、なんともいいじゃないですか!

 でもほとんどのお客さんがオーダーしてるのが300円ではないメニュー。それが『おまかせ刺身盛り』。500円なんだけど、他のお客さんが頼んでるの見たら、アジ、マグロ、イカなんてのが5種くらい乗ってて、これまた500円にして破格の盛り具合!

 実はオレ、この後、飲み会があって、その前の0次会的にこの店で呑んでいた。だからあんまりお腹いっぱいにしても……と思って、この刺身は頼まなかったけど、普通だったら絶対に頼んでたと思う。もうこれは厚生年金のない、しがない国民保険野郎でも頼んでもなんの不思議もない!

 ということで、ハイボールを3杯にうり漬の総額1200円で店を出た。その後、3次会でカラオケに行くことになり、おもわず歌ってたのはショーケンの歌だったゼベェベ!!

週刊秘境酒場★お役人の皆様が節約呑みにご愛用の立ち呑み『H』

文/カーツさとう

コラムニスト。グルメ、旅、エアライン、サブカル、サウナ、ネコ、釣りなど幅広いジャンルに精通しており、新聞、雑誌、ラジオなどで活躍中。独特の文体でファンも多い。

■連載/カーツさとうの週刊★秘境酒場開拓団