地獄の階段

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 韓国・仁川(インチョン)市で、地下鉄2号線が全面開通した。無人遠隔操作システムを採用したこの路線には約2兆3,000億ウォン(約2,300億円)の税金が投入されたというが、初日からトラブルが続発。開通を楽しみにしていた仁川市民たちは、早くも興ざめのようだ。

 例えば、開通から5時間もたたずして運転を見合わせる事態に。6カ所の駅で、電力供給が途切れたのだ。約15分後に運転は再開されるも、さらに10分後には、また別の駅が瞬電。同様のトラブルが何度も発生し、そのたびに運行がストップした。

 そもそも2号線は、1カ所でトラブルが発生すると、全区間の車両が止まるように設計されているという。安全のためとはいえ、乗客にとっては甚だ迷惑な話だ。開通初日に2号線が運転を見合わせた時間は、合計80分にも及ぶ。

 仁川交通公社は初日の運転見合わせについて、「線路に大量に電流が流れると、それを感知して電流を遮断する設計になっているが、その遮断器のセンサーが多少敏感にセットされていた」と釈明したが、市民からは「開通前にテストしていなかったのか?」と、憤慨の声が上がった。

 ほかにも、信号装置の通信障害で電車が定位置に停車しなかったり、車両のドアが閉まらず、駅員が手動で閉めるといったトラブルが現在も続いている。

 問題はまだある。2号線の路線はカーブがやたら多いが、車体はアルミニウム素材で軽く、揺れやすい。普通の乗客は、手すりやつり革をつかんで揺れに備えられるが、障害者や子連れ乗客の場合はそうもいかない。

 実際2号線は、そういった乗客のための配慮が、あまり見当たらない。全車両のドアの開閉時間は20秒と短く、車椅子対応車両にも、低めの手すりなどはない。無人システムのため、駅員による乗車案内もできず、いずれ重大な事故が起こると指摘する声も上がっている。

 また、韓国一“最悪の駅”と呼ばれる駅も誕生。加佐(カザ)駅では、1番出口と2番出口にはエスカレーターがなく、階段だけが設置されており、それぞれ124段、93段となっている。通称「ヘル(Hell=地獄)階段」だ。1番出口までの階段は、アパート7階分に相当する22メートルもあり、見上げただけでも気が遠くなる。逆に、筋トレのために、この階段をわざわざ利用する人もいるほどだ。

 ちなみに、エスカレーターはなく、一応エレベーターは、それぞれの出口に2台ずつ設置されているそうだが、1台の定員数は17人。“ヘル階段”を避けられるのは、1回につき34人しかいないという計算になる。ラッシュ時は、まさに戦場だ。

 一部では“これぞ地獄鉄”と呼ばれる仁川地下鉄2号線。人々の安全のためにも、いろいろと改善していく必要がありそうだ。