『ゆびさきちゃんのだいぼうけん』(白泉社)

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 本を縦に開くというユニークな発想でヒットした『100かいだてのいえ』の作者・いわいとしおの新作絵本『ゆびさきちゃんのだいぼうけん』(白泉社)が発売されました。小さな女の子・ゆびさきちゃんが動物たちとともに大冒険をくり広げる姿を、まるで「すごろく」のようにつながった長〜いイラストを指でたどりながら楽しむ、というコンセプトの斬新な作品です。

 あいかわらずカラフルで可愛らしい絵柄には、大人の読者も惹きつけられます。が、大人のお気に入りがそのまま子どものお気に入りになるとは限らないのが絵本の世界。はたしてリアル読者層である子どもにこの作品はどう映っているのでしょうか? というわけで、わが家の息子(1歳10か月・愛読書は『だるまちゃんとてんぐちゃん』)とともに『ゆびさきちゃんのだいぼうけん』をさっそく体験してみました!

「ゆびさきちゃんは、ちっちゃなおんなのこ。みんなから、『ゆびちゃん』と、よばれています。あるひのこと、ゆびちゃんは、ぬいぐるみたちとむちゅうになってあそんでいました。ところが……」

 読み聞かせをはじめて早々、息子が最初の見開きページをあちこち指さしだしました。

「ピッピ!」「ニャーニャー!」「ブーブー!」

 ゆびちゃんの部屋に並んだ動物のぬいぐるみが、まずは気になっている様子。ほかにもドライヤーや洗濯機など、見なれた日常のアイテムがちょこちょこ描きこまれていて、子どもの「見たことある!」心を刺激してくれます。いきなり楽しそうですが、ちょっと待って、まだゆびちゃんは冒険に出かけていないぞ。名残惜しそうな息子をなだめつつ、次のページをめくります。

 ママにお風呂に入るようにいわれたゆびちゃんは、家出して公園へ向かいます。すべり台をすべって、階段をのぼり、ブランコをこいで、という流れがアニメのようなひと続きの絵で描かれており、指でたどると公園を駆け回っているような気分になります。すべり台やブランコは息子にもおなじみなので、「トットットッ」「すいーっ」というゆびちゃんの動きをたどってやると、ニヤニヤと笑って喜んでいました。

 大人目線で感心したのは、ゆびちゃんが遊具で遊ぶだけでなく、どんぐりを拾ったり、きりかぶにのぼって「ラララ〜♪」と歌い出したりするところ。小さい子ってこういう行動しますよねー。ゆびちゃんはそのへんが実にリアルで、可愛らしいのです!

 その後、ゆびちゃんはうしさんに誘われて動物の住む世界へ。トラックでミルクを配達したり、たぬきのロープウェーに乗って山のぼりをしたり、はとの汽車に乗って郵便配達をしたりと、さまざまな冒険をくり広げます。
 ページをめくるごとにがらりと場面が変わるのがこの絵本のポイント。小さい子はなかなか集中力が続かないものですが、これなら最後まで飽きずに追いかけることができます。
乗り物好きな息子は、はとの汽車が出てくるページで大興奮。「ポッポ!」と叫びながら、線路のあちこちを指差していました。
また、うまがニンジンを育てていたり、くまがキノコを集めていたりと、動物たちの暮らしや仕事が、細かく描きこまれているのも嬉しいですね。

 やがてゆびちゃんは船に乗り、海の上のコンサート会場へ。クジラの口の中に動物たちがずらっと並んでいる見開きページが、息子には最大のツボだったようで、なぜかたぬきの真似をして奇妙なダンスを踊っておりました。幼い子どもにまで楽しそうなムードがしっかり伝わる、いわいさんの画力にあらためて感服です!

 大冒険を終えたゆびちゃんは、無事パパとママの待つ家に帰ってきます。息子もどこかから帰ってきた気がしたのか、ページを閉じながら「バイバ〜イ」とゆびちゃんに手を振っていました。

 今回、うちの1歳児はまだ自分の指でページをたどることはできませんでしたが、親がたどってみせると、興味津々で身を乗り出し、ゆびちゃんの冒険に見入っていました。これから先しばらくは一緒に楽しめそうです。

 どのページにも子どもの大好きな動物や乗り物、果物がたくさん登場しているので、男の子も女の子も夢中になれるはず。読み聞かせている大人までわくわくしてくる、遊び心満載の作品でした。

文=朝宮運河