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●LINEの収益構造は?
念願の株式公開も実現し、名実ともに日本を代表するIT企業のひとつとなったLINE。しかしLINEの収益構造となると、案外よくわかっていない。様々な事業に手を出しているLINEだが、現実には何を稼ぎ頭の事業としている企業なのだろうか?

○4本柱の収益構造

7月14日(米国時間)、および15日(日本時間)、LINEはニューヨーク証券取引所と東京証券取引所の市場第一部にそれぞれ株式上場を行った。公募価格は32.84ドル、3,300円であるのに対し、初値は42ドル、4,900円を付け、時価総額は一時期1兆円を超えた。半月を過ぎた現在はだいぶ落ち着いているが、それでも8月4日付の終値は3,950円と、公募価格を上回って展開している。

上々のスタートを切ったと言えるLINEだが、将来について不安視する声は多い。LINEが今年6月10日に東証に提出した「新規上場申請のための有価証券報告書」で公開した財務内容によると、2015年12月期連結決算は赤字だったからだ。

事業を開始してからまだ5年ばかりの若いサービスではあるが、LINEといえば日本のメッセージングアプリで支配的な位置を占めるだけに、赤字というのは意外な気もする。そこで、まずはLINEが展開する事業を確認してみよう。

前述の「新規上場申請のための有価証券報告書」からLINEの事業配分を見てみると、LINEの事業は「コミュニケーションおよびコンテンツ」と「広告」の2分野から成っている。

それぞれを細かく見ていくと、前者は「コミュニケーション」分野としてトーク、スタンプ、着せ替え、LINE Outなど、「コンテンツ」分野としてLINE GAME、LINE PLAY、LINE マンガ、LINE MUSIC(子会社の運営)などがあり、さらに「その他」としてLINE Pay、LINE FRIENDS、LINE Mobileやスタートアップ投資などが含まれる。

後者は「LINE広告」としてLINE公式アカウント、LINEスポンサードスタンプ、スポンサードテーマ、LINEポイント、LINE@、LINE ビジネスコネクト、タイムライン広告などがあり、「ポータル広告」としてlivedoorやNAVERまとめ等が挙げられる。広告の2分野を1つにまとめて考えると、4本柱というわけだ。

2015年度および2016年度の第二四半期までの売上収益をみると、2015年度は「コンテンツ」が、2016年度は「広告」がサービス別の売上でトップシェアを占めており、特に広告はほぼ毎期ごとに収益を伸ばしている。

つまり、昨年度まではLINEは「スタンプの会社」だったのが、ようやく2016年度にきて広告収入が上回るようになってきたというわけだ。いよいよLINEも本格的にインフラとして成立してきた感がある。

コンテンツの収入はゲームやスタンプといったコンテンツのヒットに影響されるため、安定的な収入源という意味では、やはり広告中心のビジネスモデルのほうが都合がいい。LINEの場合、個人の興味関心に合わせてタイムライン上に広告を配信するパフォーマンス型広告が大きな成果を上げており、今後も引き続き中心的な収入源になりそうだ。

また、企業や自治体などがパブリックなコミュニケーションに利用できる「LINE@」も広告事業に含まれており、日本国内でのLINEの普及度合を考えると、今後の発展が期待される。

●LINEが抱える課題
○海外展開とAIの利用が今後の課題

LINE全体の事業収入は70%が日本市場であり、今後の発展には日本以外の国での成長が不可欠だ。LINEでは海外での事業拡大をタイ、台湾、インドネシアに絞っており、フェイスブックのある英語圏や中国の微声といったサービスとは直接競合せず、まずはこれらの国での安定的なシェア確保を目指している。

国内では次々とサービスを発表して派手な印象のあるLINEだが、海外での事業展開は地道な印象が強い。とはいえ、総人口で3億人を超えるこれらの国・地域を攻略できれば、日本と並ぶ大きな市場になるのは間違いない。さらに、まだインフラが整備されていない周辺国家への展開も期待できる。LINEにとっては失敗の許されない市場だけに慎重なのも止むないだろう。

技術面では、LINE BOT APIに代表される自動応答アカウント(BOT)の技術開発が肝になりそうだ。すでにクロネコヤマトと共同で、AIを使って自然言語で再配達指定をLINEアカウントから応対できるシステムを開発しているが、LINEがインフラとしてますます確固たる地位を確保するためにも、人力に頼らず大量の要求に応答できるBOTシステムは不可欠だ。

BOTは企業等の公式サポートアカウント用だけでなく、LINE上の各種コンテンツの検索サービスとして、またLINE@などにも応用がきくものであり、LINEメッセンジャーを中心として各種サービスをシームレスに利用する、スマートポータル化のための切り札となる技術だけに、そのバックボーンとなるAIの開発についても、早急な対応が求められる。国内でもDeNAやソフトバンクなどがAIに多額の出資をして、企業買収や技術提携などを進めているが、LINEも国内、あるいは上場した米国でのAI開発企業の買収などを進めていく必要があるだろう。

(海老原昭)