話し相手がこんな顔したら…  「ドライマウス」の原因と予防について

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執筆:南部 洋子(助産師、看護師、タッチケア公認講師)
監修:石川 毅(歯科医、アイデンタルオフィス恵比寿 院長)


ドライアイ、ドライスキン、ドライヴァギナ、ドライマウス。これらは「4大ドライ」といわれています。

今回はそのうちの一つ、ドライマウスについて。
悪化すると口臭がきつくなったり、摂食障害になったりするといわれています。何が原因なのか、予防するにはどうしたら良いのか、詳しくみていきましょう。

ドライマウスとは

ドライマウスは、「口腔乾燥症(こうくうかんそうしょう)」といい、唾液の分泌が減って口の中が乾燥する状態をいいます。口の中の乾燥以外にも次のような症状が見られます。

・口臭
・虫歯
・歯周病
・味覚障害
・感染症
・誤嚥性肺炎
・食物が飲み込めない
・舌の痛み
・口の中の粘つき

潜在患者は、1000万人はいると推定されていて、その多くは中高年の女性です。しかし、最近では若い人にもドライマウスの患者が増えています。

唾液量が減ることで、自浄作用が衰え、歯垢(プラーク)が溜まりやすくなり、虫歯や歯周病が進みやすくなったり、口内炎も出来やすくなったりします。とくに高齢者は、そのまま放置すると飲み込む能力が低下し、摂食障害や誤嚥性肺炎になりかねません。

唾液の働き

唾液は、耳下腺、顎下腺、舌下腺、の大唾液腺と小唾液腺から分泌されます。その量は、個人差もありますが、成人で1日1〜1.5ℓ(安静時唾液で700-800ミリリットル程度)にもおよびます。

唾液の役割は、抗菌作用や自浄作用ですが、消化吸収を助ける、味覚を鋭くする、粘膜を保護する、など重要な役割を果たしています。また、緩衝液としてpHが急激に低下しないように働くことで、虫歯の予防も行っているのです。そのため、唾液の分泌量が減ると、虫歯や歯周病以外にも、口の中の細菌が肺に入って起こる誤嚥性肺炎、口腔カンジダ症なども起こりやすくなります。

「噛まないこと」が助長する?ドライマウスの原因とは

誰でも加齢に伴って唾液の分泌量は減りますが、ドライマウスは、加齢以外にもさまざまな原因が考えられ、複数の要因が重なっていることも少なくありません。

それは、糖尿病や腎不全など病気のあるもの、またストレスや更年期障害、などです。膠原病の1つであるシェーグレン症候群でもドライマウスの症状が現れます。

また、薬や治療の副作用としてもおこります。利尿薬の使用では、尿がたくさん出て、口の中が乾きやすくなります。そして、口呼吸をする癖のある人や、眠っている時にいびきをかく人は、唾液が蒸発して、口の中が乾きやすくなります。

つまり、ドライマウスは現代病として増え続けているのです。

現代ではファストフ―ドを食す機会が増え、柔らかい食べ物を好むようになり、咀嚼時間が短くなる傾向にあります。噛むという行為は、唾液の分泌を促し、唾液腺は、筋肉によって裏打ちされていますので、その筋肉が衰えて、唾液の分泌量がますます低下するのです。

ドライマウスの治療法

ドライマウスと診断された場合、治療法は、「原因療法」と「対症療法」の2つがあります。原因療法は、原因の疾患が改善されなければ、ドライマウスも改善されないので、医師と連携を取って治療を行っていきます。

対症療法は、乾燥や痛みなどの症状を和らげるために人工唾液、保湿ジェル、含嗽剤、トローチ、口腔用軟膏、内服薬などを用いて口の中の保湿をする方法です。ほかにも唾液分泌促進剤による薬物療法、筋機能療法などがあります。

人工唾液は、唾液とほぼ同じ組成のサラサラした液体で口の中を潤すことができます。
スプレータイプのものが多く、味も工夫されています。保湿ジェルは、唾液と同じ抗菌物質、粘膜修復作用をもつ成分を含み、唾液に近い働きをするものです。口の中に塗るタイプなので、人工唾液よりも効果が長持ちします。

どうやって予防するの?

食習慣に気を付ける


噛まなくても食べられるようなものばかりを食べず、乾物や根菜などよく噛まないと飲み込めないようなものを食事に取り入れましょう。厚生労働省では、一口当たり30回咬むことを推奨しています。
また無理なダイエットや朝食抜きなどは、唾液がますます出ないことになります。とくに朝食を食べないと就寝中に唾液が減ったままの状態が続いて、口の中が乾燥している時間が長くなってしまいます。

飲酒や喫煙を控える


寝る前の飲酒は、口腔乾燥を助長し、細菌増殖する格好の場になります。飲み過ぎには気をつけましょう。また喫煙は、口の中の環境には、百害あって一利なし、です。

規則正しい生活を送る


不規則な生活をしていると自律神経が乱れて、唾液の分泌に悪影響です。ストレスで緊張状態が続いていると唾液が出てきません。一日の中で、リラックスできる時間を持ちましょう。また、エアコンを使いすぎると乾燥しやすくなります。加湿器などをうまく使用し、部屋の乾燥を防ぎましょう。

マッサージする


唾液腺をマッサージすると効果的です。耳下腺は、両頬に指先をあて、耳の手前を指で後ろから手前に向かって円を描くように10回程度マッサージします。顎下腺は、下顎の骨の内側を耳の下から顎の中央部まで、5か所位を10〜20回程度押しましょう。舌下腺は、両手の親指を揃えて、下顎の真下(舌の付け根辺り)を何度か押すと効果的です。

3つの唾液腺部位のマッサージを毎日習慣付けると、唾液腺の機能が高まり、口腔乾燥の緩和だけでなく、出てきた唾液を飲み込むことで嚥下の訓練にもなります。

ドライマウスの症状があれば、まずは歯科医へ受診しましょう。全身疾患があってドライマウスを起こしている場合があるので、その場合はその疾患を治療する必要があります。歯科と医科の連携が欠かせません。


<執筆者プロフィール>
南部 洋子(なんぶ・ようこ)
助産師、看護師、タッチケア公認講師 株式会社 とらうべ 社長。国立大学病院産婦人科での経験後、とらうべ社を設立。タッチケアシニアトレーナー