『図解 使える心理学』(植木理恵著、KADOKAWA)の著者は、東京大学大学院教育心理学コース修了後、文部科学省特別研究員を務めて心理学の実証的研究を行ってきたという人物。

日本教育心理学会においては、最難関といわれる「城戸奨励賞」「優秀論文賞」を史上最年少で受賞した実績も持っているのだそうです。

現在は慶応義塾大学理工学部講師であり、都内の総合病院で心理カウンセラーをつとめてもいるのだとか。

本書ではそんな実績に基づき、「毎日の生活をより楽しく豊かにする」という観点から、心理学の知識とテクニックを紹介しているわけです。

きょうは「元気になる心理学」のなかから、「15人に1人」がかかるといううつ病についての記述をクローズアップしてみたいと思います。

■うつとは「大うつ病性障害」のこと

ご存知のとおり、かつて「うつ病」や「躁うつ病」は「気分障害」としてまとめて語られていました。

しかし現在では、うつ症状だけの「うつ病性障害」と「躁」「うつ」が交代する「双極性障害」とは、まったく違う独立した病状だと考えられるようになっているのだそうです。

一般的に「うつ」と呼ばれているのは、「大うつ病性障害」のこと。

具体的な症状としては、気分が落ち込んで、すべてのことに興味や関心がわかず、集中力が低下してしまうわけです。

それどころか自責の念や罪悪感が強くなり、自殺したいという強い考え(自殺念慮)が浮かんできてしまうことも。

疲れやすく、食欲も減退し、睡眠過多や不眠に。

そして時間的には、特に朝方に憂鬱感に襲われ、夕方からは軽減するという日内変動が認められるのだそうです。

■うつは決して珍しい病気ではない!

なお、よく指摘されることではありますが、特に「うつ」になりやすいのは、几帳面で完全主義、責任感が強く、人に対して過剰に気配りをするようなタイプ。つまり、真面目な人だということになるでしょう。

また、親しい人の死、あるいは失業といった、なんらかの喪失体験があると発症しやすいのだといいます。

そして特徴的なのは、決して珍しい病気ではないということ。うつの症状が出てきたら絶望的な気持ちになってしまうかもしれませんが、100人中約6人、つまり15人に1人の割合で発症しているというのです。

よくある病気だということで、そんなこともあって最近では薬物治療もかなり進歩しているのだとか。だからこそ、もし「うつ病かもしれない」と思ったら、早めに受診することが大切だと著者はいいます。

さて、では一方の「双極性障害」とはどんなものなのでしょうか?

これは憂鬱で無気力な状態と、活動的で高揚した状態を繰り返すもの。

かつては「躁うつ病」と呼ばれ、「うつ」の一種だと誤解されてきたのだといいます。

そのため同じ気分障害に分類されていたそうですが、遺伝子的にも統合失調症と共通因子が見出され、いまは別の病気とされているのだそうです。

■確認すべき「うつ病自己評価尺度」

なお、うつ病かどうかを判断するために、CES-D(うつ病自己評価尺度)という質問票が紹介されています。

「最近、気分が落ち込んでいるな」と思ったら、チェックしてみてほしいと著者。その内容を確認してみましょう。

・なにをするにも億劫・面倒くさい

・物事に集中できない

・なかなか眠れない

・なにか恐ろしい気持ちがする

・いつもより口数が少ない

・家族や友だちから励まされても気が晴れない

2つ以上あてはまるようであれば、要注意。ストレスがたまりはじめているといいます。

そんなときは普段の生活を振り返ってみて、ストレスの原因となっていることを避け、できるだけ気分転換を図るようにすることが大切だといいます。

■今話題の新型うつ病とうつ病の違い

しかし近年は、こうした従来のうつ病とはまったく異なる「新型うつ」(非定型うつ病)というものが話題になっているのだそうです。

先に触れてきたような従来のうつ病とは違い、症状は次のようなもの。

・責任が生じることはしたくない

・なんでも人のせいにする

・自分がうつ病だとアピールする

・仕事などは憂鬱で嫌だけど、好きなことは積極的にやれる

・気分の浮き沈みが激しい

・過食気味で体重が増えてきている

・夕方から夜にかけて具合が悪くなる

・何時間寝ても寝足りない気がする

「逃避型うつ病」「ディスチミア型うつ病」とも呼ばれ、周囲からは、わがままや詐病ではないかと疑われがち。本人はつらい思いをして悩んでいるのに、病気だとは思われず、「嫌味で独善的な性格になった」と誤解されて孤立し、病状が悪化することもあるのだそうです。

こちらも抱え込まず、おかしいなと思ったら、早めに医師に相談してみるのがいいのかもしれません。

他にも職場での人間関係から恋愛、トラブルの対処法まで、扱われている内容は幅広く実践的。きっと役立つと思いますので、ぜひ手にとってみてください。

(文/作家、書評家・印南敦史)

 

【参考】

※植木理恵(2016)『図解 使える心理学』KADOKAWA