今年になって北朝鮮から脱出者が増加傾向を見せている。最近はエリート層の脱北も急増。韓国政府は「より良い人生の機会を求め、さらに良い暮らしをするため」とみている。写真は中国の北朝鮮レストラン。

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2016年8月6日、今年になって北朝鮮から脱出、韓国入りする亡命者が増加傾向を見せている。最近は生活に困窮した住民だけなく、エリート層の脱北も急増。北朝鮮は度重なる核実験などで国際社会の厳しい制裁に直面しており、韓国政府は「より良い人生の機会を求め、さらに良い暮らしをするため多くなった」と分析している。

聯合ニュースが伝えた韓国統一部の集計によると、今年1〜7月に韓国入りした脱北者は815人(暫定)で、前年同期比15.6%増加した。11年末に金正恩(キム・ジョンウン)体制がスタートして以降、脱北者の数が明確に増えたのは今年が初めて。09年に2914人まで増えた脱北者の数は11年2706人、12年1502人、13年1514人、14年1397人、15年1276人と減少する傾向にあった。

最近は生活に困窮して北朝鮮を脱出するこれまでの事例とは異なり、出身成分(身分)が高い層に分類されるエリート層の脱出が急増している。韓国政府当局者は「より良い人生の機会を求め、さらに良い暮らしをするために脱北する人が過去に比べて多くなった」と指摘。その上で「もちろん、まだ脱北者の50%は経済的な困難を脱北の理由に選んでいるが、より良い機会を求めるためという回答も20%まで上昇した」としている。

ほかにも(1)金朝鮮労働党委員長による支配体制への不安要素が大きくなった(2)本国に送金する負担が増大した―などがエリート層急増の理由として挙げられる。中国の北朝鮮レストランで働き、4月に韓国入りした従業員13人の1人は韓国政府の聞き取り調査に「北の体制にはこれ以上希望がないと判断した」と明かした。

韓国政府が特に注目しているのは、7月6〜16日香港で開催された国際数学オリンピックに参加していた18歳の北朝鮮男子学生が韓国総領事館に駆け込んだケース。香港・明報などによると、北朝鮮代表6人のうちの1人で、109カ国の学生602人が参加した今大会で、北朝鮮チームは総合6位の成績を残した。

「科学技術大国」を目指す北朝鮮で将来を嘱望された数学の秀才とされ、両親は数学教師。親類には朝鮮人民軍の幹部もいるという。韓国の専門家は「国際社会の制裁により北朝鮮が孤立しており、世界を舞台に自分の才能を生かせないと考えたかもしれない」ともみている。

これに対し、北朝鮮は国内の締め付けを強化している。中国・海外網によると、4月のレストラン従業員の集団脱北に激怒した金党委員長は責任者6人の公開処刑を指示。6人は政府幹部や海外勤務者の家族ら180人が見守る中、5月5日に平壌姜健総合軍艦学校で処刑された、と報じた。脱北者の家族は妙香山の教育施設に監禁され、思想教育を受けたという。

さらに、中央日報は金党委員長が韓国への報復テロを指示し、北朝鮮の工作部署が先を競ってテロ要員を中国や東南アジアに送っている、と報道。「韓国公館や韓人会事務室などテロ目標を具体的に割り当てながら『命令即時実行』という指示も通達された」とし、「事業などをエサに誘引して拉致をする可能性が高い」などと注意を呼び掛けている。(編集/日向)