この"負けっぷり"をどう評価するか。今後の試合を占ううえでは、それが重要なポイントになる。

 リオデジャネイロ五輪グループリーグ第1戦。日本はナイジェリアと派手な打ち合いを演じた末に、4−5で敗れた。

 ディフェンスに関して言えば、身体能力の違いをまざまざと見せつけられたと言っていい。さしたる連係も持たないナイジェリア相手に、個人能力のゴリ押しで、いとも簡単にゴールを許したのでは勝負にならない。1対1の局面で、ことごとく負け続けた結果の5失点である。

 だが、その一方で、一時は2−5まで点差が開いたことを考えれば、結果として1点差まで詰めたことはかなり大きい。また、負けたとはいえ、4点を取れたことは攻撃面において大きな自信となるだろう。

 特に3点目(FW浅野拓磨のゴール)は、FW興梠慎三のポストプレーから、DF藤春廣輝のオーバーラップを生かす理想的な形で相手ディフェンスを完全に崩し切ったものだった。この試合で1ゴールを決めたMF南野拓実が、「やりたい攻撃の形で得点を取れた部分も多く、手応えを感じている」と話しているのも納得ができる。

 つまりは、5失点に目を向けるか。あるいは、4得点に目を向けるか。どちらを採るかで、試合の見え方はずいぶん異なるものになるのである。

 では、この試合ではどちらを採るべきなのか。

 もちろん、試合の見方に絶対的な正解などあるはずはないが、個人的に言えば、4得点したことよりも5失点したことを、より重要視するべきだと思っている。

 理由は単純。五輪代表のこれまでの戦い方が、しっかりとした守備をベースに失点を抑え、少ないチャンスを確実に生かすものだったからだ。

 今年1月に行なわれたリオ五輪アジア最終予選(アジアU−23選手権)のとき、手倉森誠監督は「今回の日本は『耐えて勝つチーム』だ」と話していたが、まさにそんな戦い方がこのチームの真骨頂だった。

 ところが、ナイジェリア戦に関して言うと、耐えて勝つ展開に持ち込めなかった。彼らは自分たちが望む展開に持ち込めなかったとき、意外なほどの脆(もろ)さを見せた。それはこの試合のスコアの推移を見ればよく分かる。

前半
6分、0−1
9分、1−1
10分、1−2
13分、2−2
42分、2−3
後半
52分、2−4
66分、2−5
70分、3−5
90+5分、4−5

 注目すべきは、最初の13分間である。日本はどちらかと言えば、静かな立ち上がりを望み、多少押し込まれても我慢して試合を進めることをイメージしていた。実際、キャプテンのMF遠藤航は、「(前半は)最低0−0。その中でチャンスを生かして1点取れればと思っていた」と語っている。

 ところが、日本は開始わずか10分で2失点。しかもそのつど、失点直後すぐに追いついたことで、「簡単に点を取られるけど、簡単に取れるので、(今やるべきは)攻撃なのか、守備なのか、シーソー状態になってしまった」(手倉森監督)。

 いっそ日本にとっては、0−2にでもなっていたほうが、「まずは守備を落ち着かせよう」という意識でまとまれてよかったかもしれない。互いにゴールを奪い合った結果、試合はいつまでも行ったり来たりの展開が続いた。

 要するに、いつものこのチームらしい「耐えて勝つ」ような、落ち着いた試合展開に持ち込めないまま、終わってみたら、たまたま1点差だった。そんな試合になったのだ。

 このチームらしからぬ試合だったことは、指揮官も認めている。

 手倉森監督は「前半の終わらせ方」を課題に挙げ、「本来であれば2−2で(ハーフタイムに)帰ってこないといけないし、(今までは)帰ってくるチームだった」と語っていた。五輪の緊張感から立ち上がりは浮足立ったとしても、2−2に追いついたところで落ち着きを取り戻さなければいけなかった。

 だが、遠藤も「2−2で前半を終わっていれば、後半は落ち着いて試合を進められたかなと思う」と振り返ったように、前半のうちに3点目を献上すると、後半にも2ゴールを許して決定的な3点差。結果論ではあるが、その後、2点を返していることを考えれば、もったいない"自滅"だった。

「『耐えて勝つ』と言い過ぎたことで、選手たちには耐え切れずポンポンと点を取られたこと(のショック)を引きずらせてしまった」

 手倉森監督はそう語っていたが、選手たちは今まで体感したことのない身体能力の高さに面食らい、簡単に失点してしまうことに少なからずショックも受けただろう。

 その結果、自分たちのスタイルを見失い、不用意に失点を重ねることになった。それこそがこの試合の敗因であり、惜敗をポジティブには受け止められない理由でもある。

 選手たちは、4点取れたからよし、ではなく、今まで自分たちはどういう戦いをしてきたのかを、もう一度振り返る必要がある。それなくして、グループリーグ突破の道は開けてこない。

 第2、3戦で対戦するコロンビアとスウェーデンは、ナイジェリアよりも組織的にまとまっており、DFラインがバラバラだったナイジェリアに比べ、間違いなく守備は堅い。先に大量失点しようものなら、その時点でゲームオーバーである。手倉森監督は語る。

「(選手に)引きずるな、と言いたい。ゲーム中に失点して引きずって、また失点している。こんなに多く点を取られるジャパンじゃないし、今までそういうチーム作りをしてきた」

 振り返ってみれば、日本はアジア最終予選でさえ、決定的なピンチをいくつも迎えていた。失点が少なかったからと言って、危なげなく相手の攻撃を抑えていたわけではない。それでも失点しなかったのは、必ずしも日本の我慢や粘りだけが理由ではなく、相手のミスに助けられたからである。

 つまり、舞台がアジアなら相手のミスに救われた場面でも、世界のこのレベルの相手になれば確実に決めてくる。それだけのことだ。

 そもそも五輪本大会出場を危ぶまれていたチームである。1点くらい失うのは当たり前。でも、それ以上は絶対にやらない。

 それくらいの覚悟なくして、五輪本大会で「耐えて勝つ」は成しえない。

浅田真樹●文 text by Asada Masaki