「米国第一」を掲げる共和党大統領候補トランプ氏は保護貿易政策により、米国の企業と労働者を守ると言明している。米国では大統領に与えられた権限はきわめて大きく、大統領に当選した場合、保護貿易措置を発動するとみられる。資料写真。

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共和党の大統領候補トランプ氏は「米国第一」を掲げ、保護貿易政策により、米国の企業と労働者守ると言明している。大統領に当選した場合、米国では大統領に与えられた権限はきわめて大きいため、これをフル活用し貿易制限など保護貿易措置を取るとみられる。

米国には「国際緊急経済援護法」「国家安全貿易法」などがあり、行政府が議会の承認を要しないで、貿易制限措置を取ることができる法律上の権限が多くある。大統領は容易に保護手段に訴えることが可能だ。

米国の輸入相手国は中国、カナダ、メキシコ、日本、ドイツの順。世界の生産拠点として台頭した中国が断トツで、北米自由貿易協定(NAFTA)加盟国のカナダ、メキシコが続く。中国などからの輸入を制限する措置を取る可能性が高い。

米国ではNAFTAによって労働者の職を奪われたと見られている。トランプ氏が大統領になれば、脱退や見直しに向けた交渉を求めることもあり得る。NAFTAはカナダ、メキシコと米国による自由貿易協定。この協定をきっかけに米国からメキシコへの投資が増え、メキシコから米国、カナダへの輸出が伸びた。トランプ氏はメキシコからの輸入増や不法移民を抑えるため「メキシコとの国境に壁をつくる」との過激発言を繰り返している。壁を実際に作るのは困難だが、NAFTAからの脱退や見直しは「壁」になり得る。6か月前の事前通告で脱退が可能だ。

米上院が「通貨操作法」を承認したが、1994年以降、米財務省が「通貨操作国」としての認定を行った例はない。しかし認定が行われれば米国は一方的に関税を課すことができるようになる。貿易相手国は米国に対し、予測困難な市場と考えるようになるだろう。

世界経済にとって大きなリスクになるのは、「対米外国投資委員会」の運用。中国の対米投資は今年200億〜300億ドルに達しており、トランプ氏は厳しい態度で臨む構えだ。国家安全保障面からの対米外国投資の規制は、今後議会の法的な動きを含め、強化される可能性もある。

貿易面で大統領が採用できる手段は、広範囲で、貿易政策や為替政策調整で産業政策を追求しようと思えば、輸入制限や関税引き上げを含め、その実現は可能。しかし、この措置は貿易相手国の報復的措置を招くことになり、世界経済の失速につながる。

米国の第2四半期のGDP成長率が年率換算で1.2%と大きく減速したが、その主因は3期連続の減少だった。その要因について、シンクタンク幹部は「大統領選での候補者の主張を通じて、貿易・国際投資を巡る閉鎖色の強い政策が現実味を帯びていることを、米国の経営者たちが、認識し、投資や貿易が拡大を抑制したためではないか」と分析している。(八牧浩行)