一昨年4月に韓国南西部の海域で沈没した旅客船セウォル号の引き揚げが遅れ、韓国政府は目標時期を9月中に先延ばした。現場海域の気象悪化や技術的な問題が重なったためで、遺族は悲しみを募らせている。写真は今年7月にソウル市で行われたセウォル号関連の展覧会。

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2016年8月6日、14年4月、韓国南西部・珍島沖で沈没し、修学旅行中の高校生ら死者295人、行方不明者9人を出した旅客船セウォル号の引き揚げが遅れている。韓国政府は7月中を予定していたが、現場海域の気象悪化や技術的な問題が重なり、9月中に先延ばした。進まぬ作業に遺族は悲しみを募らせている。

セウォル号の船体は、水深45メートルの海底に横たわっており、行方不明者の遺体が船内に残っているとみられている。引き揚げ作業は現場海域の潮流が速いことなどから難航。船から流出した油の除去や、船内備品の流出を防ぐための扉・窓の保護などに手間取っていた。

ハンギョレ新聞によると、引き揚げの主要な作業となる船首持ち上げが、浮力を利用して船体の重量を軽くする「ポンツーン」(水タンク形の大型エアバッグ)に問題が生じ、2週間延期された。作業は再開されたが、今度は南東風と強いうねり(波高2メートル)が発生し、中断された。

この過程で船体の一部が破損。船首を持ち上げるために設置した鉄ワイヤー5本のうち2本が船体に食い込み、デッキ部分2カ所にそれぞれ6.1メートルと7.1メートルの長さの損傷ができた。

船首持ち上げはセウォル号を切断せずそのまま引き揚げるために不可欠な作業。船体の下に台座の役割をするリフティングビームを設置するには、船首を約5度(高さ10メートル)持ち上げなければならない。この作業が終わらなければ、船の後ろの部分にリフティングビームを設置できず、リフティングビームの設置作業が終わってから、ワイヤー52本を海上クレーンと繋ぎ、各種安全装置と浮力装置を設置すると、船体を引き揚げるための事前作業が終わるという。

さらに、韓国・JTBCによると、セウォル号の船体を港に移す際に重要な役割を果たすフローティングドックが試運転中に破損していたことも判明。フローティングドックは胴体部分が海に沈んでいるため、平衡状態を維持するための水を入れなければならないが、水注入の速度調節に失敗し、壁面が壊れてしまった。これについて、韓国海洋水産部は「運転技術が未熟だったために起きた事故にすぎない。繰り返し訓練をすれば、引き揚げ時点までに解決できる」と説明している。

こうした中、遺族の悲しみや癒やされるどころか増す一方。韓国・マネートゥデイはこのほど、「4・16セウォル号惨事特別調査委員会(特調委)」が今年1〜6月、修学旅行で多くの犠牲者が出た檀園高校の遺族145人を対象に行った詳細な調査の結果、遺族の多くが事故から2年余りたった現在も不眠やうつ症状などPTSD(心的外傷後ストレス障害)に苦しんでいると報じた。

特調委関係者は「事故発生直後から犠牲者や生存者、被害者家族に対する国家支援システムが不在だった」と指摘。「政府による人権的・公式的な支援と、望ましい支援システムの構築が検討されるべきだ」と訴えている。(編集/日向)