TPPが米国で批准されるのは絶望的な状況になってきた。11月の大統領選から来年1月の新大統領就任までのレームダックセッション(日程消化期間)に、オバマ大統領が可決させれば道は開けるが、その可能性は極めて低いという。資料写真。

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TPPが米国で批准されるのは絶望的な状況になってきた。11月の大統領選から来年1月の新大統領就任までのレームダックセッション(日程消化期間)に、オバマ大統領が可決させれば道は開けるが、その可能性は極めて低いという。

米有力政治筋が8月3日明らかにしたところによると、TPP(太平洋連携協定)が米国で批准されるのは絶望的な状況になってきた。11月の大統領選から来年1月の新大統領就任までのレームダックセッション(日程消化会期)に、オバマ大統領が可決させれば道は開けるが、その可能性は極めて低いという。

世耕弘成経済産業相は、9月中旬召集の臨時国会での批准に全力をあげる考えを示している。しかし日本でも農業関係者を中心にTPP反対論は根強く、安倍政権も前国会での可決を見送った。最大の経済シェアを有する米国が批准しなければTPPは成立せず、空中分解する。

米有力政治筋の発言要旨は次の通り。

共和党候補のトランプ氏、民主党候補のヒラリー・クリントン氏がともにTPPに反対。オバマ大統領が推進してきた「アジア枢軸」政策の中心とも言うべきTPPを拒否している。オバマ政権は任期中に議会承認を得たいとしているが、同政権の幹部やTPP支持の議会関係者も、「可能性は2割以下」と見ている。

共和党のマッコウネル上院院内総務やライアン下院議長が慎重姿勢のほか、米国世論の大勢も国際貿易連携に反対している。さらに有力議員には、オバマ大統領の歴史的な業績に手を貸したくないという思いも強い。大統領選と併せ上下議員の一部が改選されるが、これに直面している議員も賛成票を入れにくい。

経済界でもTPPに賛成する企業や団体は極めて少なく、促進へのロビー活動もほとんど行われていない。特に製薬業界やIT業界は現行TPPに猛反発している。

国務長官を務め、当初TPPを推進していたヒラリー氏が大統領に当選した場合、賛成派は翻意を期待するが、困難だろう。夫のビル・クリントン大統領時代の1993年に調印されたNAFTA( 米国、カナダ・メキシコ3カ国による域内貿易自由化取り決め)は、多くの米労働者の職が奪われたと批判されている。NAFTAへの否定的な国民感情が、反TPPの感情にもつながり、労働組合、環境保護団体、消費者団体がTPP反対運動を展開している。

国民の多くは過去20年間以上にわたり、NAFTAでは労働約束が反故にされたと批判、「TPPではもう騙されない」という感情を抱いている。

オバマ大統領退陣後は、議会の構成から見て、議会承認はますます困難になる。民主党では上院議員25人が18年に選挙を控えており、下院も11月の選挙で自由貿易を支持する議員が減るのは必至で、さらに難しくなる。(八牧浩行)