『ヒップスター』 (C)2012 Uncle Freddy Productions LLC.

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【映画を聴く】『ヒップスター』前編

『ショート・ターム』監督のデビュー作

2013年の『ショート・ターム』で広く知られることになったデスティン・ダニエル・クレットン監督の長編デビュー作、『ヒップスター』(2012年)がついに日本上陸。7月30日より全国順次公開中で、初日は満席スタートとなった。

本作は、ジェフ・ブリッジスが57歳のカントリー・ミュージシャンを演じた『クレイジー・ハート』や、アル・パチーノが懐メロ系ロック歌手を演じた『Dearダニー 君へのうた』のヤングアダルト版と言えそうな、音楽のスパイスが効いた人生再起のドラマ。舞台になっている米サンディエゴのインディーズ音楽シーンをリアルに描き出したサウンドトラックも手伝って、本作は文字通りヒップな若者を中心に高い支持を得たという。

原題は『I AM NOT A HIPSTER』(ヒップスターじゃない)。そもそもヒップスターもしくはヒップというのは、流行に敏感で、音楽や映画、アートを好む人たちを総称する言葉だが、転じて“文化的背伸び”をする人たちをバカにする呼び名でもあったりする。たぶん本当にヒップな人たちは自分のことを“オレはヒップスター”とは言わない。そういう意味の込められた原題なのだろうが、邦題ではシンプルに『ヒップスター』とされている(それはそれで結果的にヒネリがあって面白い)。

本作の主人公、ブルック・ハイドも自分の意志に関係なく“ヒップスター”に祭り上げられたひとり。なんとなくやっていた音楽が評判になり、地元で期待のシンガー・ソングライターに。しかし本人はすべてに無気力で、自分が音楽をやる意味すら見失いつつある。地元のラジオ局に出演しても気の利いたことなど言えず、DJと話が噛み合わないし、友人のパーティではライバルのDJに悪態をついてつまみ出される。

彼の無気力の根本にあるのは、母の死だ。ある日、父親と3人の妹たちが母の遺灰を海に撒くためにブルックのもとにやってくる。久しぶりに家族と過ごす数日間で、ブルックは次第に自分を真正面から見つめ直すようになる。

ブルック役を演じるドミニク・ボガードは、ミュージカル版『ジャージー・ボーイズ』に出演したこともあるという若手俳優。その活躍は日本ではほとんど耳にしたことがないが、その佇まいには危うい色気があり、翳りのあるブルックの人物造形にもぴったりハマっている。ギターについては初心者で、本作のために弾き語りの猛練習を重ねたという。劇中では「Our Tiny Mouth」という曲などで心に深く沁みる弾き語りを披露しており、地元で人気のミュージシャンという設定にも説得力を感じる。

後編「泥くさいからこそ愛おしい!」へと続く…

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