■連載/ヒット商品開発秘話

 バナナやパイナップルでおなじみのドールが2016年3月下旬に発売した『Doleスムージー』がいま、ファミリーマートで人気を博し、好調に売れている。

『Doleスムージー』は世界の産地から厳選調達したフルーツを使用して製造。果汁100%で、1本で1日分のブルーツ200g(果物のある食生活推進全国協議会が推進する“毎日くだもの200g運動”より)と、1日分のビタミンC100mg(日本人の食事摂取基準[2015年版]男女15歳以上の1日の摂取推奨量)が摂取できるのが特徴だ。

まず、りんご、パイナップル、ぶどう果汁にバナナピューレと大麦若葉を合わせた〈グリーンブレンド〉と、りんご、パイナップル、オレンジの果汁にバナナピューレ、ピーチピューレ、マンゴーピューレを合わせた〈トロピカルブレンド〉の2種を発売。ファミリーマートで先行発売され、発売3週間で2か月分の売上見込みを達成するほど飛ぶように売れていった。7月26日には〈ココナッツブレンド〉を追加した。

グリーンブレンド トロピカルブレンド

■ペットボトル飲料事業をスムージーで拡大する

 同社では2014年から、ペットボトル飲料事業を展開してきたというが、『Doleスムージー』もこの事業拡大を模索する中で生まれたものだった。ペットボトル飲料事業では、パイナップル果汁100%ジュースを中心に展開していたが、その後、どのような飲料であれば事業拡大できるかを検討した結果、スムージーの投入を決めた。他にはフレーバーウオーターなども企画にあがったというが、スムージーに決まった理由は何だったのか? 加工食品本部マーケティングマネージャーの濱和之氏は、次のように話す。

「スムージーに決まった背景には、健康志向の高まりもありましたが、フルーツの美味しさを最大限生かせることがありました」

ドール 加工食品本部 マーケティングマネージャー 濱和之氏
ドール
加工食品本部
マーケティングマネージャー
濱和之氏

 こうして同社は、ペットボトル飲料の新商品として『Dole スムージー』を開発することにした。2015年に企画が立ち上がり、早速開発に着手することになった。

 とはいえ、スムージーはフルーツや野菜の組み合わせによって様々なものができる。何をつくり、そのために何が必要かを決める必要があった。市販のスムージーを買ったり、ジューススタンドで売られているものを飲んだりしながら検討し絞り込まれた結果が、〈グリーンブレンド〉と〈トロピカルブレンド〉であった。〈グリーンブレンド〉は、グリーンスムージーがスムージーの中で一番人気があることが決め手。スムージーの中では王道といえるものであり、外す理由はなかった。一方の〈トロピカルブレンド〉は、同社の企業イメージが影響した部分がある。濱氏は、このように説明する。
「当社と言えばパイナップルやバナナの印象が強く、Doleブランドの商品にはトロピカルなイメージがあります。ブランドイメージを生かして美味しいトロピカルブレンドをつくれば、強みが発揮できると考えました」

■意識したフレッシュな味わい

 つくるものが具体的に決まったら、味づくりに着手することになるが、〈グリーンブレンド〉では何よりも飲みやすさに気を遣った。そのために、果汁をベースにし、野菜には青汁の原料となる大麦若葉の粉末を使うことにした。野菜汁ではなく果汁の美味しさをベースにした点が、他のグリーンスムージーとの大きな違いである。

「市場に出回っているグリーンスムージーには、野菜汁を半分近く使っていたりするものがあります。野菜を摂りたいという需要に応えた面があると思いますが、フルーツの会社としてもっと美味しいグリーンスムージーをつくろうとしたとき、野菜汁はクセがあることから、これは使わずに、大麦若葉の粉末を使うことにしました」と濱氏。果汁100%によるフルーツの美味しさを全面に打ち出すことで、他のグリーンスムージーとの差別化も狙った。

 一方の〈トロピカルブレンド〉は、フルーツだけでつくるので、フルーツジュースとの違いがわからなくなる恐れがあった。フルーツジュースと違いスムージーは食感がトロッとしているが、トロッとした食感をどうやって出すかがカギを握った。このトロっとした食感を出すために採用されたのが、ピューレの活用だった。「これは〈グリーンブレンド〉にも共通することですが、ピューレをしっかり使うことで普通のジュースとは明らかに違う食感を出すことにしました」と濱氏は言う。

 フレーバーによって、細かい工夫を盛り込んでいった『Dole スムージー』だが、濱氏は、「全体を通して意識したのはフレッシュな味わいを出すこと」と言う。使用している果汁は濃縮還元果汁だが、つくり立ての味わいを出せるよう、香りが立つように果汁やピューレの配合比を細かく調整するなどし、試作・検証を重ねた。

■SNSを通じて評判が拡散

 こうして完成した『Dole スムージー』は、まずファミリーマートに紹介したことで、先行発売となった。トントン拍子で取り扱いが決まった後は、ボトルデザインなどでアドバイスを得ながら開発を進めて行くことになった。なお、ファミリーマートで先行発売しているが、その他では大きく展開する予定はなく、取り扱いのメインはこれからも、ファミリーマートだという。

 発売後の売れ行きは、同社やファミリーマートの想定を超えていた。現在は解消されたが、一時は生産が追いつかなくなるほどだったという。

 スタートダッシュが成功した理由の1つに、SNSでの拡散があった。とくに同社が仕掛けたわけではないものの、発売当初は『Dole スムージー』の購入者がInstagramなどSNSに写真をアップし、「すごく美味しい」といった好意的なコメントも一緒に添えていたケースが目立った。SNSによって急速に拡散したことが、新たな購入者を呼び込む結果となった。

 また、〈グリーンブレンド〉に関しては、「色からして飲みづらく美味しくなさそうに見えるけど、飲んでみると美味しい」と評されることが多いという。〈グリーンブレンド〉に関しては見た目から受ける印象と味の間にギャップがあり、驚かされるというのである。

■〈ココナッツブレンド〉の投入

 そして7月26日に、いかにも夏らしい〈ココナッツブレンド〉が発売になった。パイナップル、りんご、ぶどう、ココナッツの果汁とバナナピューレを主な材料とした。一見すると〈グリーンブレンド〉と〈トロピカルブレンド〉の好調さを受けて開発・投入されたように見えるが、実際は、〈グリーンブレンド〉と〈トロピカルブレンド〉の発売を控えた3月上旬に、ファミリーマートとすでに準備をしていたものだったという。

〈ココナッツブレンド〉の場合、ココナッツとフルーツのバランスを取るのが難しかったという。それは、ココナッツを際立つようにすると、油分や日焼け止めのような香りが強くなり、好き嫌いがはっきり分かれるため。かと言って、控えめにすると、ココナッツらしさが出ない。ココナッツ感か感じられ、なおかつココナッツの油分や香りが目立たない、他のフルーツとの最適なバランスを見つけるために、試作・検証を重ねたという。

ココナッツブレンド

★★★取材からわかった『Doleスムージー』のヒット要因3★★★

1.ブランドイメージ通り

 ドールといえばフルーツ。飲みにくそうなイメージがある〈グリーンブレンド〉も、フルーツの豊かな甘みと香りで飲みやすくしたほど。ブランドイメージ通りの商品をつくった。

2.ペットボトルの採用

 中身が見えるペットボトルに厳選したフルーツでつくったスムージーを充填。中身が見えるので、フレッシュ感が伝わりやすい。ペットボトル飲料としてスムージーを展開するというアイデアが高く評価された。

3.必要な栄養を満たしている

 美味しさもさることながら、スムージーは美容や健康のために不可欠な栄養の補給ができなければならない。その意味では、1本で1日分のフルーツとビタミンCの摂取ができ、美容や健康面のニーズを満たしている。

 フルーツの豊かな甘さと香りは、つくり込まれた印象受ける。「さすがドール」と思える完成度の高さは、飲めば誰にでもわかるほどである。

製品情報
http://www.family.co.jp/company/news_releases/2016/160329_01.pdf

文/大沢裕司

ものづくりに関することを中心に、割と幅広く色々なことを取材するライター。主な取材テーマは商品開発、技術開発、生産、工場、など。当連載のネタ探しに日々奔走中。

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