「耐えて勝つ」テーマがまさかの弊害に…手倉森ジャパンに求められる修正点とは

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 ナイジェリア代表に4−5で敗れたリオデジャネイロ・オリンピック日本代表のグループステージ第1戦。打ち合う展開となったゲームは内容、結果とも、戦前には想像のつかないものとなった。5点も失うとは思わなかったが、4ゴールを奪えるとも思っていなかったからだ。

 理想のスコアは1−0。「耐えて勝つ」をテーマに掲げ、堅守速攻をスタイルとするチームにいったい何が起きたのか――。

 先制点を許したのは6分だった。左サイドからエゼキセルに強烈なシュートを打たれ、GK櫛引政敏(鹿島アントラーズ)が弾いたところをウマル・サディクに押し込まれたシーンでは、左サイドバックの藤春廣輝(ガンバ大阪)がイモー・エゼキエルに簡単にかわされたことが痛かった。

 10分に与えた2点目は左サイドから簡単にクロスを入れられ、室屋成(FC東京)が頭でクリアできず、オゲネカロ・エテボに決められた。

 43分の3失点目は植田直通(鹿島)のクリアをエテボに決められたものだが、その直前で塩谷司(サンフレッチェ広島)がウマルに突破を許してしまったのが遠因となった。

 51分の4点目は塩谷が与えたPKで失ったものだが、その前のシーンで塩谷と室屋が一瞬譲り合うような形でウマルに突破を許したのが原因だった。

 そして66分の5点目は大島僚太(川崎フロンターレ)から藤春へのパスを奪われ、GK櫛引がクロスボールに反応良く飛び出しながら、クリアが弱くなったところをエテボに流し込まれた。

 どれもミス絡みの失点でもったいないものばかり。ただし、手倉森誠監督が「13番(ウマル)のところで収まって、トップとトップ下のところで手を焼いた。その対策を持つ前に慌ててしまった」と分析したように、ナイジェリアが持つ“個の能力”に日本のディフェンス陣が圧倒され、ミスを誘発させられたという見方もできる。

 確かに“個”の部分にはいかんともしがたい差があった。だが、一方で気になったのは、日本が今大会で掲げている「耐えて勝つ」というテーマがもたらす弊害だ。

 手倉森監督は「オリンピックには自分たちよりも弱いチームはいない」という考えから、「粘り強く守って、スキを突いて仕留める」というゲームプランをチームに刷り込んできた。オーバーエイジとして参戦している興梠慎三(浦和レッズ)も試合前日、「前半は0−0でしのいで、後半勝負で行きたいと思う」と語っている。

 ところが、「耐えて勝つ」ことが強調されているため、失点を重ねてプランが崩壊した場合の動揺があまりに大きくなってしまった。前半は二度先行され、二度追いつくことに成功した。普通ならそこで落ち着きを取り戻さなければならないが、動揺は収まらなかった。指揮官が分析する。

「失点したのは、スキルや戦術の部分もあるかもしれないが、多少はメンタルもあるだろうなと。あっさり取られたことに対するショック。簡単にポンポンと点を取られたことに対して引きずってしまった」

 もう一つは、7月30日に行われたブラジルとの親善試合でもそうだったように「耐える」ことを意識するあまり、前半は自陣に引いて守る意識が強く、ボールを果敢に奪いに行く姿勢に乏しくなっていることだ。

 選手たちはナイジェリア戦でも自陣でブロックを作って、様子を見るようにゲームに入った。しかし、ブロックの間に簡単にパスを通され、あるいはドリブルで突破され、ディフェンスラインが一対一の状況にさらされて押し切られてしまった。これを藤春は「まずはブロックを作って守備をするというところがあるけれど、引いてしまうと相手のペースになってしまう。慎重に入りすぎたかもしれない」と嘆いた。

「これまでに対戦したことのない相手だった」と塩谷が言うように、たしかにウマルは強烈だった。イタリア・セリエA(ローマ)でプレーする彼のような相手に対して、一対一で守り切るのは簡単なことではない。それならゴール前からできるだけ遠ざけるために、またはウマルへのパスを遮断するために、ラインを押し上げて前からボールを奪いにいくプランがあっていい。