【知ってる?】なぜ蚊取り線香は左巻きなのか

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夏が来るとどこからともなく漂ってくる、どこか郷愁を誘うあの香り。そう、蚊取り線香です。

蚊取り線香といえば渦巻き型。そしてよく見ると、左巻き。これには何か理由があるのでしょうか?「金鳥」でお馴染みの大日本除虫菊株式会社に聞いてみたところ、思わぬ誕生秘話が明らかになりました!

左巻きになるまでには様々なドラマがあった!

蚊取り線香ができたのは100年以上前とのことですが、どうやって開発されたのですか?

「蚊取り線香を作ったのは、創業者の上山英一郎です。慶應義塾で学んだあと金鳥の前身である『上山商店』を創業しました。英一郎の“世界を相手に仕事をし、日本に貢献したい”という志を知っていた恩師の福沢諭吉が、1885年(明治18年)に米国植物会社の社長H・E・アモア氏を紹介してくれたのです」(宣伝部)

創業者肖像 創業者・上山英一郎

 

そのアモア氏から「除虫菊」の種子を譲り受けたのが、蚊取り線香誕生のきっかけ。福沢諭吉が、蚊取り線香誕生のきっかけを作ったとは驚きです! その除虫菊を日本で栽培し、蚊取り線香を作り始めたということですが、最初はどんな形だったのでしょうか。

「蚊取り線香ができるまでは、昔ながらの蚊遣り火にならって、火鉢や香炉におがくずと混ぜて除虫菊の粉を撒くという形でした。しかし夏に火鉢というのも熱いし、何より煙たくて不便。もっと利便性の高い形を考える中で、旅先で仏壇線香屋の息子と同宿になったことがヒントになりました」(宣伝部)

1890年(明治23年)、その偶然の出会いから生まれたのが、世界で初めての棒状の蚊取り線香。最初はまさに線香そのまんまの形だったんですね!

棒状かとり線香

まさにアイデア!棒状が渦巻き型になったワケ

でも、それを渦巻き型にしたのはなぜ?

「当時の棒状の線香は40分程度しかもたず、しかも細くて煙が少ないので、同時に2、3本焚かなくてはいけなかったんです。しかし長くすると折れてしまうというので、創業者の妻・ゆきが『渦巻型にすればいい』というアイデアを提案しました。そこで、1895年(明治28年)から7年間の研究の後、渦巻型の蚊取り線香が誕生たんです」(宣伝部)

創業者の妻のアイデアだったんですね! これで燃焼時間は約7時間と大幅に改善! 寝る前に火を着ければ、一晩中蚊から守ってくれるようになりました。

この初期型の蚊取り線香は、なんと手巻きで製造していたそうです。

手巻き風景

でもよく見ると、今とは逆の「右巻き」。

「女工さんには右利きが多く、右巻きの方が巻きやすく生産性が上がるというので、当時の製品は右巻きでした」(宣伝部)

生産性を考えての右巻きだったんですね。熟練工の中には1日に3000〜5000巻を仕上げる人もいたそう。

その右巻きから、今の左巻きに変わった理由は何だったのでしょうか。

「1958年(昭和33年)から機械による打ち抜きに製法が変わりました。その際に、他社さんとの差別化のため『左巻き』に変更しました」(宣伝部)

金鳥渦巻大正8

今の蚊取り線香が左巻きなのは、機械化という文明の進化の証でもあったんですね!

世界に羽ばたく蚊取り線香!

そんな蚊取り線香。実は日本だけでなく海外でも需要があるのだとか。

「海外でも暑くて蚊の多い地域ではやはり需要があるということで、当社でもタイのバンコクに生産工場があります」(宣伝部)

タイ商品2

タイ商品

こちらがタイの製品。ひと目で殺虫剤と分かる分かりやすいデザイン、いいですね!日本で生まれた蚊取り線香は外国でも活躍していたんですね。

大きく姿を変えることなく今に至る蚊取り線香ですが、金鳥の殺虫剤は実は着実に進化を遂げています。

「最近では、ラベンダーやローズなどの香り付きのものを愛用してくださる方もいます。また、小さなお子様がいらっしゃるご家庭では、火を使う製品は心配だということで、これまでも電気や電池を使用した殺虫剤を開発してきましたが、最新の製品では火・電気・電池も使わないものがありますよ」(宣伝部)

kincho01

「蚊がいなくなるスプレーPRO」は、一部屋(4.5〜8畳)に1プッシュすれば薬剤が壁や天井に付着し、24時間効果が持続するという画期的な製品。人々の暮らしに寄り添い殺虫剤の改良を続けてきた創業者の探究心が、脈々と受け継がれていることを感じさせる製品です。

しかし一方で、変わらないこともあるのです。

「現在では、除虫菊に含まれる殺虫成分「ピレトリン」は化学的に合成が可能で、製品には「ピレトリン」を元に開発された「ピレスロイド」という殺虫成分を使用しています。ですが、蚊取り線香といえばやはりあの香りを大切に思ってくださるお客さまも多いので、昔ながらの香りを守るために当社の製品には今でも除虫菊の搾りかすを練りこんでいるんです」(宣伝部)

進化は遂げつつも、守るべきものは守り続ける。蚊取り線香には、ひとつの企業の進化の歴史が詰まっていました…!

(取材・文/明知真理子)

あけちまりこ/ライター

編集プロダクション勤務を経てフリーランスに。雑誌・ウェブ等で幅広く活躍し、寝る間もないほど売れっ子(になりたいと思っている)。趣味で株式投資をしており、日経平均が下がると表情がやや曇ります。映画と旅行とプロレスが好き。