■連載/あるあるビジネス処方箋

会社に深刻な病気を報告した時に想定されること

 働いていれば、一度は風邪やインフルエンザになって、上司などに報告して休暇をとったことがある人はいるのではないだろうか。だが、それよりも深刻な病気、例えば、入院して手術をするような場合や、心の病となって休業などを申請する場合、上司、役員、人事部などの対応は変わってくる。今回は、社員が「深刻な病にかかった」と会社に報告した時、どういったことが起こるかについて解説したいと思う。

■担当替えや部署異動

「深刻な病」であると報告すると、現在の仕事から他の仕事に担当を変えられたり、他部署に異動させられることもある。この判断は、常識的なのものといえる。本当に「深刻な病」であるのなら、早急に上司などに伝えるべきだ。医師の診断書などがあると、なおよいだろう。状況いかんでは、長期の休暇や休職を取得することも必要かもしれない。いずれにしろ、「病」であると報告すると現在の仕事や部署から離れる可能性が高いということを心得ておきたい。

■何でも「病気」のせいにされる

 企業取材を続けていると、よく耳にするのが、「彼は以前、○○という病になったから会社を休みがちなんです」という言葉だ。例えば、有給休暇で数日間休んだだけで、そう口にする上司がいる。「○○という病になったから…」という根拠が曖昧にも思えるが、管理職が口にすると、誰もが否定しづらくなる。

 あるいは、会議の場で議論となって、言い負かされた側がこんな暴言を吐くことがある。「彼は以前、心の病になったことがあるから、すぐに興奮するんだよね。彼とは冷静な話し合いができないよ」。ここまで言い切れる根拠があるのかどうかはわからないが、すぐに「心の病」に結びつける人が少なくないことは事実だ。本来は、役員や人事部がこういう偏見をなくすように社内に向けて啓蒙すべきだが、ほとんどの企業でそういった状況は見られない。

■リストラの対象になる

 会社が経営危機になって、人員を削減する「リストラ」の実施が決まったとしよう。その際、まず、退職させる人数が決まるケースが多い。その後は、人事部などが各部署の管理職と相談の上、該当者を絞り込んでいく。その際、「深刻な病」にかかっている人や、休業を繰り返す人などが該当者となる場合が多い。上司からの人事評価が高い人でも、病欠の期間が長いと「このタイミングで辞めさせよう」という結論に至ることもある。リストラは、必ずしも人事評価の低い人だけを辞めさせるものではないということを覚えておきたい。

■いじめ、パワハラ、退職強要を受ける

 リストラとは、通常は、会社の役員会などで了承され、全社を挙げて取り組むものだ。一方で、それぞれの部署の管理職などが独自の判断で、主に非管理職の社員に辞めるよう仕向けることがある。そうなると、30代半ばまでの社員がターゲットになることが多い。この場合、いじめやパワハラ、退職強要などが行なわれるケースが目立つ。役員会の了解がない中、一部の管理職だけで進められるからかなり強引に辞めさせようとする場合が多い。これが様々な摩擦を引き起こす原因となる。

 例えば、数人の管理職などが、前述のとおり「あいつは○○という病気だから…」という理由で退職に追い込むことがある。辞めなければ、社内で「あいつは、○○という病気だ」と噂を流されることもある。もちろん、これは好ましくない行為であり、退職強要と批判されても仕方がない。ところが、こういう噂が何事もなく浸透していく職場がたくさんあるということも否定しがたい。

 長く会社勤めしていると、どこかのタイミングで病にかかることはあるはずだ。風邪やインフルエンザなどが多いが、深刻な病気にかかる場合もある。入退院を何度も繰り返すことがあるかもしれない。だが「この際だから、辞めさせよう」などと、すぐに結論を導くようなことはけっしてすべきではない。こういうことがまかりとおるようになると、日々の仕事や会議でも、皆が恐れをなして、意見しにくい空気となる。やがては閉鎖的な社風となり、業績にも悪影響を与えかねない。管理職、役員なら、部下の「病」をどうすべきか、日頃から考えておくべきではないだろうか。

文/吉田典史

ジャーナリスト。主に経営・社会分野で記事や本を書く。近著に「会社で落ちこぼれる人の口ぐせ 抜群に出世する人の口ぐせ」(KADOKAWA/中経出版)。

■連載/あるあるビジネス処方箋