1992年のバルセロナ五輪に初めてNBA選手が出場して以降、男子バスケットボール・アメリカ五輪代表メンバー「チームUSA」は、6大会のうち5度も金メダルを獲得している。もちろん、いよいよ始まったリオデジャネイロ五輪でも、その大本命の座は揺るがない。

 チームUSAのリオ五輪出場メンバーには、6月のNBAファイナルを沸かせたレブロン・ジェームズ(クリーブランド・キャバリアーズ/SF)やステファン・カリー(ゴールデンステート・ウォリアーズ/PG)の名前こそないものの、今のNBAを代表する豪華スター12名の顔ぶれが並んだ。それらの中心となるスターターは、以下のメンバーが予想される。

【PG】 カイリー・アービング(クリーブランド・キャバリアーズ)
【SG】 クレイ・トンプソン(ゴールデンステート・ウォリアーズ)
【SF】 ケビン・デュラント(ゴールデンステート・ウォリアーズ)
【PF】 カーメロ・アンソニー(ニューヨーク・ニックス)
【C】 デマーカス・カズンズ(サクラメント・キングス)

※ポジションの略称=PG(ポイントガード)、SG(シューティングガード)、SF(スモールフォワード)、PF(パワーフォワード)、C(センター)。

 本番直前となっても、いまだ対戦チームの首脳陣は頭を抱えていることだろう。トンプソン、デュラント、カーメロらシュート力のある選手に対峙するため、アウトサイドは当然ケアしなければいけない。かといってアービングのドライブ、カズンズの1on1といったインサイドの攻撃にも、もちろん注意を払わなければいけない。

 つまり、チームUSA相手に内外を偏(かたよ)りなく守るのは不可能だ。デュラントやカーメロは複数のポジションをこなせるため、マッチアップする選手の弱点をついてアタックもしてくるだろう。対戦チームにとっては、厄介極まりないスターターたちである。

 また、体力勝負に持ち込もうとしても、控えにはジミー・バトラー(シカゴ・ブルズ/SG)、ポール・ジョージ(インディアナ・ペイサーズ/SF)、デアンドレ・ジョーダン(ロサンゼルス・クリッパーズ/C)といった身体能力の高い選手が揃っており、チームUSAの体力ダウンをうかがうタイミングも皆無だ。

 今大会、チームUSAが金メダルを獲得すれば、オリンピック3連覇となる。さらにカーメロ・アンソニーにとっては、男子バスケットボール史上最多となる「3つ目の金メダル奪取」の快挙だ。「何か特別なことをやれるチャンスがあり、チームの一員でいることに興奮している」と、カーメロ自身もその意気込みを語っている。

 ただし、カーメロ以上に金メダルを欲しているのは、「コーチK」ことマイク・シャシェフスキー・ヘッドコーチ(HC)かもしれない。2005年からアメリカ代表のHCを務めるコーチKは、リオ五輪を最後に退任が決まっている。つまり、今大会が集大成。チームUSAを10年以上率いたノウハウのすべてを、このチームに注ぎ込んで挑む。

 コーチKは、「代表は合同での練習時間を長く取れず、チームケミストリーを成熟させるのは難しい。いかにアグレッシブなディフェンスで、相手にプレッシャーをかけられるかが重要」と語っている。その言葉どおり、今回のチームは個々の選手のディフェンス意識が非常に高い。北京五輪やロンドン五輪で各国のエースストッパーとなったコービー・ブライアントの役割は、ジミー・バトラーが担うだろう。

 では、今回のチームUSAの仕上がり具合はどうか――。その強さを改めて証明したのは、リオ入り前に行なった5試合のエキシビションマッチだ。

 まず、マヌ・ジノビリ(サンアントニオ・スパーズ/SG)がチームを牽引するアルゼンチンとの初戦は、30点差以上の大差をつけて111対74で圧勝。デュラントがゲームハイの23得点をマークし、インサイドを支配したカズンズもわずか16分の出場ながら14得点・15リバウンドのダブルダブルを記録した。一方、アルゼンチンが22回のターンオーバーを記録していることからも、チームUSAのディフェンスがいかに激しかったかがわかる。

 次に行なわれたのは、今年のNBAドラフトでヒューストン・ロケッツから2巡目・全体43位で指名されたジョウ・チー(C)を擁し、アジア王者としてリオ五輪に出場する中国との2ゲーム。結果は106対57、107対57と、両試合ともほぼダブルスコアで一蹴した。

 そして4試合目、昨年のアメリカ選手権の覇者であるベネズエラにも80対45の大勝。このゲームでは、軒並みシューターのタッチが悪く得点が伸びなかったものの、またもディフェンス面で踏ん張った。ベネズエラのフィールドゴール成功率を23.9%に抑え、リバウンド数でも54対29と圧倒したことが、大差を生んだ要因といえる。

 リオ入り前の最後のエキシビションマッチとなったアフリカ大陸王者ナイジェリア戦も、チームUSAは110対66と圧勝。アービングとジョージが負傷のために欠場するも、カイル・ロウリー(PG)とデマー・デローザン(SG)のトロント・ラプターズが誇るバックコートコンビが躍動し、ベンチの層の厚さにも問題がないことを証明した。欠場した2選手は、五輪開幕までには万全でプレーできるとのことだ。

 マイケル・ジョーダン、マジック・ジョンソン、チャールズ・バークレーら歴史的スーパースターで構成された「ドリームチーム」が出場した1992年のバルセロナ五輪。彼らは予選から決勝までの8試合で平均117.3得点という圧倒的な攻撃力を見せ、1試合平均43.9点差をつけながら楽々と金メダルをさらっていった。

 地元開催となったアトランタ五輪。デビッド・ロビンソン、スコッティ・ピッペンらベテランと、グラント・ヒル、シャキール・オニールといった次代を担う若手が融合したチームで、ふたたび頂点に立った。

 3連覇を成し遂げたシドニー五輪。予選のフランス戦で215cmの選手を飛び越えて決めたヴィンス・カーターのダンクは、今も多くのファンの記憶に色濃く残っているだろう。

 しかし、アテネ五輪は銅メダル。アレン・アイバーソンがチームを引っ張るも、ジノビリ率いるアルゼンチンに苦杯を喫し、オリンピック4連覇の夢は絶たれた。

 バスケット大国の威信をかけ、復権に挑んだ北京五輪。コービー・ブライアント、ジェイソン・キッド、レブロン・ジェームズらの活躍で、王座奪還に成功する。

 そして、4年前のロンドン五輪。決勝でパウ・ガソル(サンアントニオ・スパーズ/PF)を擁するスペインと大激戦となるも、レブロンの奮闘で金メダルを手に入れた。

 果たして、リオ五輪ではどんなドラマが生まれるのか――。チームUSAの初戦は、8月6日のグループリーグ・中国戦。そして決勝は、オリンピックのすべての競技が終了する8月21日だ。

 勝って当然、勝ち方すら問われる「チームUSA」。いよいよ情熱の国ブラジルで、オリンピック3連覇をかけた熱き戦いの幕が開く――。

水野光博●文 text by Mizuno Mitsuhiro