『赤髪の白雪姫』(あきづき空太/白泉社)

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 白雪姫と名のつくからには、七人の小人やらいじわるな継母が出てくるのかな〜なんて思っていたら全然違ったマンガ『赤髪の白雪姫』(あきづき空太/白泉社)。このたび発売された最新16巻は、大人気を博したテレビアニメシリーズと同じ、逢坂良太や名塚佳織といった声優を起用したドラマCDつき限定版も同時発売。完全描きおろしストーリーと声優たちのフリートークが収録されており、ファンならば入手必至の作品だが、ファンタジー好きなのに未読という読者がいたら、ぜひともこれを機会に読んでみてほしい一作だ。筆者同様、うっかり読み逃していた自分をぼかすか殴りたい気分になるに違いない。

 美しく、林檎のように赤い髪をもつせいで“バカ王子”の愛人になるよう命じられ、まっぴらごめんだとばかりに切った髪だけ置いて逃げだした少女・白雪。逃亡中に出会った隣国の第二王子・ゼンと一緒にいるため、宮廷薬剤師として成長していく彼女の行動力あふれる姿には、読んでいて強く惹きつけられる。

 対するゼンも、城をしょっちゅう抜け出したり飄々としてはいるものの、身分は第二王子。兄が即位したあとは王位継承権第一位。国を守るために好き勝手はしていられない。なにかとがんじがらめになっているゼンにとって、自分の尊厳を守るため、まっすぐに行動して道を切り開いていく白雪はまぶしい存在なのだ。

 心を通じ合わせたあとも、2人は決して感情だけのおもむくままに突っ走ったりはしない。互いのことを本当の意味で思いやり、どうすれば相手のためになるかを考え、自分の責務を果たす。16巻で白雪は、薬剤師として上司とともに謎の病を解決するため奔走する。壁にぶちあたっても決してあきらめず、突破口を見つけ、国のために大局を見据えることのできるようになってきた白雪は、ますますゼンにとって必要な存在となっていくのだ。

 身分差の恋を描いたラブコメかと思いきや、自立した2人の男女が自分の居場所を勝ち取るための、凛とした戦いの物語でもある本作。巻を増すごとにますますファンタジーとしての深みと広がりを増していくから読む手を止められない。

 とはいえもちろん、恋愛成分は重要で。初々しい白雪とゼンの恋模様のそばで、脇役をふくめた淡い恋心がうずまいているのも楽しみのひとつ。白雪の上司でもある天才薬剤師・リュウもそのひとり。初登場では12歳だった彼も、すこしずつすこしずつ身長をのばして、白雪を追い越すのも時間の問題というところ。もともと他人と隔絶していた孤独な心を彼が溶かすことができたのも、白雪の枠にとらわれないまっすぐな優しさがあってこそ。「子供だから安心」と思っていたゼンが慌てる日も近そうな、その予兆が垣間見えるのも16巻の読みどころ。

 そしてもうひとつが、おそらく全読者がずっと気になっていただろうミツヒデと木々の関係。木々の結婚話が浮上しはじめ、ゼンの側近である2人の関係がそろそろ動き出しそうなところだが、木々の婚約者候補が次々と襲われるという事件も発生し、一筋縄では済みそうもない。双子の騎士という新キャラも登場し、国や貴族同士の思惑がさまざまに動き出し始め、木々の身が危うくなってきて……と波乱続きの本巻。次巻も待ちきれない。

文=立花もも