『知りたい! やってみたい! アニマルセラピー』(川添敏弘:著、監修ほか/駿河台出版)

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 スマホゲーム「ポケモンGO」の勢いが止まらない。珍しいポケモンが集まる場所には連日連夜人々が殺到。全世界であらゆる人達がその面白さにハマりこんでいる。それどころか、ポケモンの世界に「癒し」の効果を感じている人も多いのではないか。現に、世界各国から「『ポケモンGO』をプレイするなかでうつ病が軽快した」という驚きの報告が伝えられている。「ポケモンGO」は歩きスマホや深夜の迷惑行為など、さまざまな問題を抱えているが、プレイヤーのストレスを解消する「ポケモンセラピー」ともいえる癒し効果をも引き起こしているのだ。

 『知りたい! やってみたい! アニマルセラピー』(駿河台出版)は、近年話題となっている、動物との触れ合いによって心身の改善させる治療「アニマルセラピー」の歴史からその活用まで触れられた書籍だが、この本を今読むと、どうしても「アニマルセラピー」と「ポケモンGO」における癒し効果の類似点を考えざるを得ない。触れることができる、できないの違いはあれど、動物に感じる癒し効果とポケモンに感じる癒し効果には、とても似ている部分があるのだ。

 遥か昔から人は、動物が癒しを与えてくれることを認識していたようだ。人の健康面におよぼす動物の影響は、なんと古代ギリシャからその記録が残っている。5000年以上前のギリシャでは、「シノセラピスト(cyno therapist)」と呼ばれる犬が神殿のなかを徘徊し、傷病者をなめて癒したという。紀元前500年頃には、治療・リハビリ目的のために乗馬が利用されていたらしい。現在では、アニマルセラピーに用いられる動物には、馬の他にイルカなどがあるが、私たちにも最も身近な動物である犬を用いたアニマルセラピーは、20世紀半ばから本格的に始まった。

 動物と生活することは大変なことであるが、それよりも自分にもたらしくれる効果は圧倒的に大きい。動物を見たり触れたりして「かわいい」と思う時、生理的には副交感神経が亢進し、肉体的にリラックスできる。また、動物に頼られることは、自らの存在価値を証明してくれる効果もある。動物に頼られているのだから、動物のために動かねばならない。そう考えるうちに自然と生活習慣が改善されていったり、苦手なことを克服できたりし、精神的に落ち着いた生活を歩めるようになることもある。

 「ポケモンGO」にもこれと似た効果があるのではないか。もちろん「ポケモンGO」というゲームをプレイしていくうちに、いろんな種類のポケモンを捕まえたいというコレクター的欲求、他のプレイヤーとの対戦で打ち勝ちたいという欲求も生まれてくる。だが、それと同時にプレイヤーたちは、あらゆる街で現れる愛くるしいポケモンの姿に心奪われているのである。ひとたびポケモンをゲットし、自分のものとすることができれば、いかに彼らを強く育てるかを考え、ますます街を歩きたくなる。ポケモンのたまごを拾えば、それを孵すために、決められた距離数を歩かねばならない。愛犬にせがまれて散歩に出るのと同様に、気が付けば、プレイヤーたちは、自然と外を歩きたくなっていく。そしてそうしているうちに気持ちも晴れやかになるのを感じ、プレイヤーたちは、ますますゲームがやめられなくなってしまうのではないか。

 アニマルセラピーが話題となる昨今、動物たちはペット(愛玩動物)としての枠組みを超えて、より身近な家族として、コンパニオンアニマル(伴侶動物)と呼ばれるようになっているという。ポケモンも我々にとって今、欠かすことができない存在となりつつある。身近な動物たちと異なり、画面の中にいるポケモンたちには決して触れることはできない。だが、画面のなかのその愛くるしい存在に私たちは確実に癒され、救われている。「ポケモンGO」はゲームの分野のみならず、医療の分野においても、画期的なツールとして歴史に名を刻むのではないだろうか。

文=アサトーミナミ(トレーナーレベル12)