安倍首相は「最優先課題は経済」と力説。経済政策「アベノミクス」をもう一度「ふかす」ために、「大規模財政出動」「働き方改革」など政策総動員で取り組む方針を表明したが、アベノミクスの限界が取りざたされる中、思惑どおりに進むかどうか。写真は財務省。

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安倍晋三首相が「未来チャレンジ内閣」と名付けた第3次再改造内閣が発足。首相は「最優先課題は経済だ。デフレからの脱出速度を最大限に引き上げる」と力説した。経済政策「アベノミクス」をもう一度「ふかす」ために、「大規模財政出動」「働き方改革」など政策総動員で取り組む方針を表明したが、アベノミクスの限界が取りざたされる中、思惑通りに進むかどうか。

内閣改造では政権の骨格を維持するため麻生太郎副総理・財務相や菅義偉官房長官、石原伸晃経済財政・再生相ら主要閣僚は留任。安倍首相は記者会見で「重厚な経済閣僚をそろえて成長戦略を一気に加速する」と強調した。

政府は8月2日に、総額28兆円超の経済対策を閣議決定、安倍首相は「総合的かつ、大胆な経済対策」と胸を張ったが、中身を精査すると、掛け声倒れの感は否めない。

この経済対策は第2次安倍政権が発足して以降、数字上は最大規模となる。ただ、今回の事業規模には、融資や民間企業による支出も含まれ、純粋な政府支出(いわゆる真水部分)は約6兆円(地方を合わせると7.5兆円)。予算規模で比較すると、第2次安倍政権発足直後の2013年1月に発表された経済対策の6割程度にとどまる。またこの6兆円のうち16年度2次補正予算で対応するのは約4兆円で、残りの2兆円は2017年度予算から手当てする。すぐに効果が期待できるのは4兆円分だけだ。

過去を振り返ると、2008年のリーマンショック時に、麻生政権は大規模な経済対策を次々に発動。同年8月には緊急総合対策として11.5兆円、同年10月には生活対策として26.9兆円、同年12月には生活防衛のための緊急対策として37兆円(いずれも事業規模)を発表した。

安倍首相の勇ましい掛け声とは逆に、今回実質的な経済対策の規模が小さくなったのは、財政的な状況が厳しさを増していることが背景。第2次政権発足前後は、円安で企業業績が拡大し税収が大幅に伸びたが、16年に入ってから急激に円高が進み、企業業績の急激な落ち込みは必至の情勢。また17年4月に予定されていた10%への消費税増税を再延期したことから、税収の確保は困難になったこともあり、予算規模の拡大は現実的に難しくなっている。

経済対策の財源は、税収や剰余金だけでは足りず、結局国債発行に依存せざるを得ない状況。建前上イメージの悪い「赤字国債」ではなく「建設国債」と称しているが、国の借金には変わりない。深刻な財政事情から国債発行の拡大には限界があり、今後の経済対策はさらに厳しいものとならざるを得ない。

こうした事情から、これまでアベノミクスは第一の矢である「金融政策」に過重な負担を強いてきたが、異次元緩和やマイナス金利も弊害が出始め、第2の矢「財政政策」も財源不足で既に失速状態。日銀は7月末に、上場投資信託(ETF)の買い取り額の年間6 兆円への倍増させることを決定したが、日銀資金(事実上の税金)による株購入は本来禁じ手に近い。「政府の総合対策に合わせたアリバイ創りの窮余の一策」(大手銀行幹部)の面は否めない。

結局「大胆な経済対策28兆円」は「思い切り大きく見せかけた数字」(同)であり、安部政権の掲げる「政策総動員」の実態は寂しい限りだ。アベノミクスの一枚看板「円安・株高」も逆回転している。第3の矢の成長戦略を地道に積み上げて行くしかない。(八牧浩行)